(Q1)適正事業規模の範囲内での減価償却に要する経費(買替費用)は、必要経費として控除することができますか?(Q2)必要経費に関する基本的な考え方について教えてください。
(A1)はい。この質問は、生活保護における**農業収入・自営収入の「必要経費」**について、農機具などの買替え費用を収入から差し引くことができるか、という問題です。
簡単に言い換えると、
「農業や自営業を続けるため、古くなった機械・設備を買い替える必要がある場合、その購入費を必要経費として収入から差し引いてよいのでしょうか?」
という質問です。
結論
一定の場合には、適正な事業規模の範囲内で、事業を継続するために必要な買替え費用を必要経費として認めることができます。
ただし、税法上の「減価償却費」と生活保護上の必要経費は、必ずしも同じ考え方ではありません。生活保護では、実際に最低生活を維持しながら事業を継続するために現実に必要な支出かどうかが重要になります。
例えば、農業を営んでいるAさんが、長年使用していた農機具が故障し、修理不能になったとします。その農機具がなければ現在の農業を継続できず、買替えも現在の事業規模に見合ったものである場合には、買替えに必要な費用を必要経費として認定できるか検討することになります。
一方で、
「現在の事業規模には不相応な高額機械へ買い替える」「事業を拡大するため新しい大型設備を導入する」「まだ十分使用できる機械を単に新型へ交換する」
といった支出まで当然に必要経費として認められるわけではありません。
したがって、実施機関は、①現在の事業規模が適正か、②その機械・設備が事業に必要か、③本当に買替えが必要な状態か、④購入価格が事業規模に照らして妥当かなどを確認して判断します。
また、「減価償却」という言葉には注意が必要です。税務上は高額な設備の取得価額を耐用年数にわたって経費化しますが、生活保護の収入認定では、税務上の減価償却額をそのまま機械的に必要経費として控除する、という意味ではありません。
したがって一言でまとめると、**「農業・自営業を継続するために機械等の買替えが必要で、その買替えが適正な事業規模の範囲内で合理的なものであれば、生活保護上の必要経費として認定できる場合がある。ただし、税法上の減価償却費がそのまま認められるわけではなく、実際の必要性や金額の妥当性を確認して判断する」**と理解すると分かりやすいです。
(A2)生活保護における「必要経費」とは、簡単にいうと、働いたり農業・自営業を続けたりして収入を得るために、どうしても必要となる費用のことです。
例えば、農業で10万円の売上があったとしても、その10万円すべてを生活費に使えるわけではありません。種苗代、肥料代など、農業をするために必要な支出が3万円かかっていれば、基本的には、
収入10万円 − 必要経費3万円 = 収入認定の基礎となる額7万円
という考え方になります。
必要経費の基本的な考え方
生活保護では、単に「本人が仕事のために使った」と主張すれば、すべて必要経費として認められるわけではありません。
重要なのは、その収入を得るために必要な支出であること、金額が合理的であること、実際に支出していることなどです。
例えば農業であれば、種苗代、肥料代、薬剤費、水利費、農機具の修理費など、農業生産のために必要な費用が問題になります。
自営業であれば、原材料費、仕入代、店舗の営業に必要な経費などについて、その事業との関係を確認して必要経費を判断します。
一方、個人的な生活費や事業と直接関係のない支出まで必要経費として収入から差し引くことはできません。
「税務上の経費」と完全に同じではない
ここは特に重要です。
確定申告で税務上の必要経費として認められているからといって、生活保護でも必ず同じ金額が必要経費として認められるわけではありません。
生活保護では、最低生活保障という制度目的から、その事業を維持して収入を得るために現実に必要な費用なのかという観点から判断します。
そのため、前のご質問にあった農機具等の買替えについても、事業規模に比べて過大な設備投資などは当然に必要経費になるわけではありません。
他の収入との関係にも注意
もう一つ重要なのが、事業の赤字を他の収入から自由に差し引けるわけではないという点です。
例えば、
農業収入 0円
農業必要経費 3万円
遺族年金 8万円
だからといって、
8万円 − 3万円=収入認定5万円
とするのが原則ではありません。
農業の必要経費は、基本的に農業収入を算定するための経費として考えます。農業収入がないからといって、その赤字を年金など別の性質の収入から当然に差し引けるものではありません。
まとめ
必要経費については、
「収入を得るために実際に必要な費用だけを合理的な範囲で控除し、その残額を生活保護上の収入として認定する」
というのが基本的な考え方です。
実務では、**①収入との関連性、②事業を続けるための必要性、③金額の妥当性、④実際に支出したことを確認できる資料(領収書・請求書等)**を確認して判断すると分かりやすいです。
なお、農業収入については「生産必要経費」、自営収入については「事業必要経費」として通知上の具体的な費目が定められています。必要であれば次に、「認められる経費/認められない経費」を具体例で一覧にして整理できます。
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