(Q1)ケース診断会議等で検討対象となるケースの選定基準はどのように定められていますか?(Q2)ケース診断会議等の選定目安額は、どのような方法で算出されますか?

(A1)ケース診断会議等で検討するケースについて、全国一律に「この条件なら必ず対象」という固定的な選定基準が細かく定められているわけではありません。 基本的には、各福祉事務所が、個々のケースの問題点や判断の難しさなどを踏まえて、組織的な検討が必要なケースを選定します。厚生労働省の実施要領の取扱いでも、検討対象ケースの選定は、一定の考え方を基礎として保護の実施機関が決定するとされています。

具体的には、次のようなケースがケース診断会議の対象になりやすいです。

  • 援助が難しいケース
    本人との関係調整が難しい、多くの課題が重なっているなど、ケースワーカーだけでは援助方針を決めにくい場合。
  • 保護の開始・廃止など重要な決定を行うケース
    特に保護廃止については、ケース診断会議等に諮るなど、組織的に判断することが監査事項として示されています。
  • 生活保護法63条の返還額について判断が必要なケース
    返還額の全部・一部をどう扱うかなどについて、担当者個人ではなくケース診断会議等による組織的な判断が求められます。
  • 生活保護法78条を適用するか検討するケース
    不実の申請その他不正な手段による保護に該当するかなど、慎重な判断が必要な場合です。厚労省も、63条、78条、新規開始・廃止などについてケース診断会議が活用されていると説明しています。
  • 資産の保有・処分について判断が難しいケース
    例えば、居住用不動産について「処分価値が利用価値に比べて著しく大きいか」の判断が難しい場合は、原則としてケース診断会議等で総合的に検討することとされています。
  • 稼働能力・就労能力の判断が難しいケース
    稼働能力を活用しているかどうかの判断についても、必要に応じてケース診断会議や稼働能力判定会議等を開催し、組織的に検討することとされています。

なぜケース診断会議にかけるのか

重要なのは、ケースワーカー一人の判断だけで、重大な処分や援助方針を決めないためです。

厚生労働省のケースワーカー研修教材でも、保護の決定・実施について問題や疑義がある場合には、ケースワーカーの独断で処理せず、ケース診断会議や査察指導員との協議によって組織的に判断することが重要とされています。

例えば、

「この預貯金を保有させてよいのか」
「生活保護法63条の返還をどこまで求めるのか」
「78条を適用するほどの不正受給に当たるのか」
「指導指示違反を理由に保護を停止・廃止してよいのか」

といった本人への影響が大きく、判断が難しいケースについて、所長、査察指導員、ケースワーカーなどが資料を確認しながら検討する、というイメージです。

したがって、質問への回答を簡潔にすると、

「ケース診断会議等の検討対象は、全国一律の機械的な基準だけで決めるものではなく、援助困難ケース、63条・78条、保護開始・停止・廃止、資産保有、稼働能力など、重要または判断が困難で組織的検討が必要なケースを中心に、各福祉事務所が選定します。」

という整理になります。

(A2)ケース診断会議等の**「選定目安額」**は、主に「持ち家などの不動産について、処分価値が高すぎないかをケース診断会議で検討する必要があるか」を判断するための目安です。

厚生労働省の課長通知「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」第3・問15では、次の方法で算出することが示されています。

基本的な考え方は、

(標準的な3人世帯の生活扶助基準額 + 住宅扶助特別基準額)× おおよそ10年

です。

ここでいう「標準的な3人世帯」は、その福祉事務所の管内における**最上位級地の「30歳代の者+20歳代の者の夫婦+4歳の子」**を例とした3人世帯です。

例えば、仮にその地域で、

生活扶助基準額が月15万円、住宅扶助特別基準額が月5万円だったとすると、

15万円+5万円=月20万円

となります。

これをおおよそ10年分として考えるので、

20万円 × 12か月 × 10年 = 2,400万円

となります。

ただし、実際には単純にこの金額だけで決まるわけではありません。厚生労働省は、さらに、

土地・家屋を保有している一般低所得世帯の状況、周辺地域住民の意識、地域の持ち家状況などを考慮して、必要な補正を行う

こととしています。また、この計算方法以外でも、地域の実情に応じた適切な方法で算出することが認められています。

厚生労働省は2021年の事務連絡でも、この目安額について、

①「生活扶助+住宅扶助特別基準」のおおよそ10年分を基礎として地域事情による補正を行う方法、または、②地域の実情に応じた適切な方法

によって算出すると改めて説明しています。

特に重要なのは、この金額を超えたからといって、直ちに「家を売却しなければ生活保護を受けられない」という意味ではないことです。

選定目安額は、あくまで、

「この不動産についてケース診断会議等で詳しく検討する必要があるか」

を判断するための金額です。

厚生労働省も明確に、**「保護の要否の決定基準ではない」**としています。

したがって、簡単に整理すると、

「その地域の標準的な3人世帯の『生活扶助+住宅扶助特別基準』のおおよそ10年分を基本にして、地域の持ち家事情などを加味して補正した金額が、ケース診断会議等の選定目安額となる。ただし、その金額を超えたからといって、自動的に不動産を処分しなければならないわけではない。」

という理解で大丈夫です。

なお、この「選定目安額」は主に局長通知第3の5にある居住用の土地・家屋の保有可否を検討する場面で使われるものです。

記事のお問い合わせ先 生活保護専門 神戸市の義足行政書士事務所