(Q9)関係諸機関との連携や急迫保護のあり方、指導内容についてはどのように検討すべきですか?(Q10)個別世帯の事情に即した土地・家屋の活用、不動産担保貸付、賃貸、公営住宅入居、親族との関係など、自立助長の観点からどのような援助方針が考えられますか?
(A9)はい。ここでいう**「関係諸機関との連携」「活用までの間の急迫保護」「指導指示の内容」**は、土地・家屋を活用・処分する方針を立てる場合に、本人の生活を途切れさせず、現実に実行できる援助方針にするために検討する事項です。厚生労働省の課長通知第3・問16では、これらだけでなく、他法他施策や不動産担保貸付、賃貸、公営住宅、親族関係なども含めて、世帯の自立助長の観点から十分配慮するよう求めています。
1.関係諸機関との連携
土地・家屋の問題は福祉事務所だけでは解決できないことがあります。そのため、必要に応じて、不動産業者、金融機関、社会福祉協議会、住宅担当部局、公営住宅担当、司法書士・弁護士などの専門職、親族その他の支援機関と連携して、実際に可能な活用方法を検討することが重要です。
例えば、「家を売却する」という方針でも、不動産業者に確認したところ買い手がほとんど期待できないのであれば、その前提自体を見直す必要があります。
2.活用できるまでの「急迫保護」
不動産を持っていても、その不動産をすぐ現金化できるとは限りません。
例えば、
「自宅は1,000万円程度で売却できる可能性があるが、現在の所持金は数千円しかなく、食費にも困っている」
という場合です。
このようなケースで、
「家を持っているのだから、売れるまで生活保護はできない」
と機械的に扱うと、その間の最低生活が維持できなくなる可能性があります。
生活保護法は、特に急迫した事情があり放置できない状況について、必要な保護を行う仕組みを設けています。したがって、資産活用を進めながら、その間の生活をどう保障するかも同時に検討する必要があります。
3.指導指示は「具体的で実行可能な内容」にする
土地・家屋の活用を求める場合でも、
「家を処分してください」
という抽象的な指示だけでは十分ではありません。
例えば、
「不動産業者に査定を依頼する」
「○○制度の利用可能性を確認する」
「公営住宅への申込みを行う」
「共有者と売却について協議する」
など、本人が実際に何をすべきなのか分かる内容にすることが大切です。
生活保護法27条では、実施機関は保護の目的達成に必要な指導・指示を行うことができるとされていますが、当然、その世帯の具体的な状況を踏まえる必要があります。
4.「売却」だけに限定しない
特に重要なのがこの点です。
厚労省通知は、土地・家屋の活用について、単純な売却だけではなく、
他法他施策の活用、不動産を担保とした貸付、不動産の賃貸、公営住宅等への入居、親族との関係
なども検討するよう明示しています。
つまり、
保有する → 売却する
という二択ではなく、
保有したまま貸す、担保として活用する、別の住宅へ移転して賃貸する、公営住宅を確保してから処分する
など、その世帯に最も適した方法を検討します。
具体例
例えば、高齢者が一戸建てを所有しているものの、現金がほとんどないケースなら、
① 不動産の査定・売却可能性を確認する
→ ② 不動産担保型貸付等が使えないか確認する
→ ③ 必要なら公営住宅等の転居先を探す
→ ④ その間、最低生活が維持できないなら保護の必要性を判断する
→ ⑤ 本人に実行可能な形で資産活用について説明・指導する
というように、資産活用と生活保障を並行して進めることが重要です。
したがって、簡単にまとめると、
「土地・家屋を活用してください」と指示するだけでは足りず、関係機関と連携して現実的な活用方法を探し、活用できるまでの間も最低生活が途切れないよう配慮し、本人の能力・健康・権利関係などに応じた具体的で実行可能な指導内容を設定する必要がある
ということです。
(A10)はい。土地・家屋について援助方針を立てる場合は、「売るか、残すか」の二択で考えるのではなく、その世帯が今後できるだけ安定して生活し、自立につながる方法を個別に組み合わせて検討することが重要です。
厚生労働省の課長通知・第3問16では、土地・家屋の活用について、関係機関との連携や指導内容だけでなく、他法他施策、不動産担保貸付、不動産の賃貸、公営住宅等への入居、親族との関係などを含め、自立助長の観点から全般的に配慮した援助方針を立てる必要があるとしています。
具体的には、次のような援助方針が考えられます。
- ① 現在の土地・家屋をそのまま保有する
現に居住しており、処分価値が利用価値に比べて著しく大きくなく、住み続ける方が生活維持・自立に有効な場合です。特に高齢者、障害者、長期間居住している人などでは、通院・介護・近隣の見守りなども考慮します。厚労省通知も、処分するより保有した方が生活維持・自立に実効が上がる資産については保有を認める考え方を示しています。 - ② 不動産担保型生活資金を活用する
一定の要件を満たす高齢者世帯などでは、自宅をすぐ売却せず、居住を続けながら不動産を担保に生活資金の貸付を受ける方法があります。利用可能な場合には、生活保護上もこの制度による資産活用を検討することとされています。 - ③ 土地・家屋を賃貸して収入を得る
売却が難しい場合でも、全部または一部を貸すことによって賃料収入を得られる場合があります。厚労省の実施要領でも、資産活用は売却が原則ですが、売却が難しい場合には貸与して収益を得る方法等を検討するとされています。 - ④ 公営住宅等に転居したうえで不動産を活用する
現在の住宅が広すぎる、維持費が高い、処分価値が大きいなどの場合には、公営住宅などの安定した低家賃住宅を確保してから、自宅を売却・賃貸する方法も考えられます。重要なのは、先に転居後の住まいを確保して、住居を失う不安を生じさせないことです。 - ⑤ 親族との関係を活用する
親族から金銭援助を受けることだけを意味するわけではありません。近隣に住む親族による見守り、通院同行、介護、買い物支援などが現在の生活を支えている場合には、転居によってその支援関係が失われないかも検討します。 - ⑥ 他の制度・施策を組み合わせる
高齢者福祉、障害福祉、介護保険、住宅施策、公営住宅、生活福祉資金など、その世帯が利用できる制度を組み合わせて、生活保護だけに頼らない安定した生活基盤をつくることも援助方針になります。
たとえば、高齢の一人暮らしの人が自宅を所有している場合でも、「自宅を売却する」ことだけが援助方針ではありません。 不動産担保型生活資金を利用して住み続ける、空いている部分を賃貸する、公営住宅への転居先を確保してから売却する、近隣の親族による支援を維持できる地域内で転居する、といった複数の選択肢を比較します。
また、土地・家屋の保有を認めることになった場合でも、「保有可だから何もしない」で終わるわけではありません。 ケース診断会議で分かった生活上の問題を踏まえ、今後の生活改善や自立につながる援助方針を立てることが求められています。
要するに、
「本人の家をどう処分するか」ではなく、「その土地・家屋を含めた世帯全体の資源をどう使えば、住居を失わず、生活を安定させ、将来的な自立につながるか」を考えるのが援助方針の基本
です。
そのため、保有・担保貸付・賃貸・売却・公営住宅への転居・他制度の利用・親族や地域支援の維持を、その世帯の年齢、健康状態、資産価値、収入見込み、地域とのつながりなどに応じて組み合わせて判断することになります。
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