(Q7)その他、必要な事項としてどのような点を検討すべきですか?(Q8)土地・家屋の保有や活用について援助方針を樹立する際、世帯に将来の生活不安を与えないためにはどのような配慮が必要ですか?
(A7)「その他、必要な事項」とは、厚生労働省の通知で①~⑦として明示されている項目だけでは十分に判断できない場合に、その世帯固有の事情を追加して検討するための項目です。
厚生労働省の課長通知・第3問16では、ケース診断会議等で、見込処分価値、処分可能性、転居可能性、健康状態・生活歴、近隣関係、自立可能性、地域の持ち家状況等に加えて、**「⑧ その他必要な事項」**も検討し、土地・家屋の保有容認や活用方法について総合的な援助方針をまとめることとしています。
ここに含まれ得る事項としては、例えば次のようなものが考えられます。
- 不動産の権利関係
単独所有か共有か、相続登記が済んでいるか、抵当権・借地権などがあるか。 - 土地・建物の特殊な事情
再建築できない土地、接道に問題がある土地、著しく老朽化した住宅、災害危険区域にある住宅など、実際の利用・処分に影響する事情。 - 売却に伴う費用や実際の手取り額
仲介手数料、登記費用、解体費用、残債などを考慮すると、売却価格ほど資産が残らない場合があります。 - 転居後の経済的負担
現在の持ち家では家賃が不要なのに、売却後は毎月家賃が発生する場合など、長期的にみてどちらが合理的か。 - 医療・介護・障害福祉との関係
かかりつけ医、訪問介護、障害福祉サービスなどが現在の住居を基盤としており、転居によって支援体制が大きく崩れないか。 - 子どもの生活・教育環境
通学、転校、特別支援教育、児童福祉上の支援などへの影響。 - 家族・親族関係
親族からの見守りや介護を現在の地域で受けている場合、その支援を失う可能性がないか。 - 将来の生活費との比較
売却して一時的にまとまった資金を得ることと、そのまま住み続けることのどちらが、長期的に最低生活を安定させるか。 - 本人の意向とその理由
なぜその家に住み続けたいのか、売却・転居についてどのような不安があるのかを確認し、合理的な事情があるかを検討します。
特に重要なのは、「その他必要な事項」が全国一律の固定項目ではないということです。問16そのものが、住民意識や世帯事情を十分に勘案し、長期的な視点で総合的に判断するよう求めています。
例えば、高齢者が自宅に住んでいるケースで、
「売れば800万円程度になる」
という事情だけでなく、
「売却後は月5万円の家賃が必要になる」「現在は近所の親族から介護支援を受けている」「通院先が徒歩圏内にある」
という事情があれば、それらも「その他必要な事項」として検討する意味があります。
そしてケース診断会議では、こうした事情を踏まえて、最終的に**「保有を認める」「売却等による活用を求める」「貸付制度等を利用する」など、世帯の実情に応じた援助方針**を組織的に決めます。厚労省の監査基準でも、援助方針は生活状況等を踏まえて具体的に策定し、状況が変化した場合には見直すことが求められています。
つまり、わかりやすく言えば、**「①~⑦だけでは判断できない、その世帯ならではの事情を漏れなく拾い、その家を持ち続けること・活用すること・売却することのどれが長期的に本人の生活と自立に適しているかを判断するための項目」**が「その他必要な事項」です。
(A8)土地・家屋の保有・活用について援助方針を決める際は、「資産をどう処分するか」だけでなく、その結果として本人・世帯の今後の生活が不安定にならないようにすることが重要です。厚生労働省の課長通知第3・問16でも、土地・家屋の活用方針を立てる際には、世帯に将来の生活不安を抱かせないよう十分に配慮する必要があるとされています。
具体的には、単に「売却してください」「資産を活用してください」と指導するのではなく、次のような点まで含めて援助方針を考えます。
- 資産活用に関係する機関との連携
不動産業者、金融機関、自治体の住宅部門、社会福祉協議会など、必要な関係機関と連携して、現実に実行可能な方法を検討します。 - 資産を活用できるまでの生活保障
不動産はすぐに売れるとは限りません。そのため、売却・活用までの間に生活が成り立たなくならないよう、急迫した場合の保護のあり方も検討します。 - 指導・指示の内容を無理のないものにする
「いつまでに必ず売却する」と機械的に求めるのではなく、売却可能性や本人の状況に即した内容にする必要があります。 - 他法他施策の利用
高齢者福祉、障害福祉、住宅施策など、その世帯が利用できる制度がないか確認します。 - 不動産担保型の貸付制度の活用
自宅を直ちに売却するのではなく、不動産を担保とする貸付制度によって生活資金を確保できないか検討します。 - 売却以外の不動産活用
土地・家屋の全部または一部を賃貸するなど、所有を続けながら収入を得る方法が可能か検討します。 - 転居先の確保
売却・転居が必要な場合は、公営住宅などへの入居を含め、転居後に安定した住居を確保できるかまで考えます。 - 親族との関係
親族からの支援の可能性だけでなく、本人が現在受けている見守りや介護などの支援関係が、転居によって失われないかも考慮します。
例えば、高齢の一人暮らしの人が自宅を所有しており、その家に一定の資産価値がある場合でも、
「家を売却すれば資産を活用できる」
という一点だけで援助方針を決めるべきではありません。
売却した後に住む場所が確保できるのか、家賃を継続して負担できるのか、通院・介護サービスを続けられるのか、近隣の見守りを失わないか、といった**「売った後の生活」まで具体的に見通しておく必要があります。**
また、ケース診断会議で土地・家屋の保有を認めることが適当と判断された場合でも、それで検討を終えるのではありません。 会議で明らかになった生活上の課題を踏まえ、今後の生活改善や自立につながる援助方針を立てるよう留意することも求められています。
つまり、簡単にいうと、
「土地・家屋をどうするか」だけではなく、「その判断をした後も本人・世帯が安心して生活を続けられるか」を中心に考え、住居、生活費、医療・介護、貸付制度、賃貸活用、公営住宅、親族関係などを含めて、将来まで見通した援助方針を立てることが必要です。
という考え方です。
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