(Q5)該当世帯の自立の可能性をどのように評価しますか?(Q6)地域の受給者の持ち家状況や土地・家屋の平均面積、地域事情はどのように調査・活用しますか?
(A5)「該当世帯の自立の可能性」は、その土地・家屋を保有し続けることが世帯の生活安定や自立につながるのか、逆に売却・活用した方が自立につながるのかという観点から評価します。
ケース診断会議等では、単に「働けるかどうか」だけを見るのではありません。たとえば、現在の住宅に住み続けることで、就労先への通勤がしやすい、通院や介護サービスを継続できる、近隣や親族から支援を受けられる、といった事情があれば、その住宅を維持すること自体が自立を支える要素になります。
一方で、土地・家屋を売却したり貸したりすることで一定の収入や資金が得られ、その結果として生活保護からの自立が見込めるのであれば、資産を活用する方向が自立につながる可能性も検討します。
具体的には、次のような点を総合的に見ます。
- 就労によって今後収入が増える見込みがあるか
- 年金や各種給付など、将来的に安定した収入が見込めるか
- 現在の住宅が就労・通院・介護・子どもの通学など生活基盤として重要か
- その住宅を売却・賃貸・担保活用することで生活の安定につながるか
- 転居した場合に、家賃負担などがかえって増えないか
- 高齢、障害、疾病などからみて、現在の住環境を維持する必要性が高いか
- 親族や近隣住民などからの支援を継続できるか
- 土地・家屋を処分した場合、どの程度の期間、自力で生活できる見込みがあるか
例えば、高齢の一人暮らしで、現在の家に住むことで近隣の見守りや訪問介護を受けられており、家自体の処分価値もそれほど高くない場合には、その家を維持する方が生活の安定につながると評価される可能性があります。
逆に、処分価値が非常に高い不動産を所有しており、売却後に適切な住宅へ転居しても生活上の支障が少なく、売却代金によって相当期間自立した生活ができる場合には、不動産を活用・処分することが自立につながると判断される可能性があります。
重要なのは、「自立=生活保護をすぐに廃止すること」ではないという点です。生活保護における自立には、経済的自立だけでなく、日常生活や社会生活を安定させるという視点もあります。
したがって、分かりやすく言えば、
「その家を残すことと、売る・貸すなどして活用することのどちらが、本人・世帯の今後の安定した生活や生活保護からの自立により役立つかを、収入見込み、健康状態、就労、通院、地域とのつながり、転居後の生活などを含めて総合的に判断する」
ということになります。
(A6)地域の受給者の持ち家状況や土地・家屋の平均面積、地域事情は、その土地・家屋を保有したまま生活保護を受けることが、地域の一般的な生活実態と比べて著しく不均衡ではないかを判断するための比較材料として使います。
具体的には、福祉事務所では、地域内の被保護世帯・低所得世帯について、持ち家を所有している世帯がどの程度あるか、住宅や宅地の規模はどの程度か、同じ地域で一般的にどの程度の住宅に居住しているかなどを把握し、対象世帯の住宅と比較します。
たとえば、地方の農村地域では、低所得の高齢者でも比較的広い土地と一戸建てを所有していることがあります。この場合、「土地が広い」という事実だけで、直ちに生活保護上不相応な資産とは判断しません。逆に、周辺の低所得世帯と比べて著しく広大・高額な土地や住宅であれば、なぜその不動産を保有し続ける必要があるのかをより慎重に検討することになります。
その際には、単純な平均面積だけではなく、地域の地価、住宅価格、持ち家率、住宅の築年数、宅地の利用状況、売却のしやすさ、賃貸住宅の供給状況、交通事情なども考慮します。特に過疎地域では、土地の面積が大きくても市場価値が低く、買い手がほとんどいないこともあるため、都市部と同じ感覚で判断することは適切ではありません。
また、「地域住民との均衡」を判断するときは、生活保護受給者だけを比較対象にするのではなく、その地域の一般低所得世帯の生活実態も参考にすることが重要です。つまり、「生活保護世帯だから小さな家でなければならない」という考え方ではなく、地域社会の通常の住宅事情とのバランスを見るということです。
ケース診断会議等では、こうした地域資料とともに、対象となる土地・家屋について、見込処分価値、売却可能性、世帯員の健康状態、生活歴、転居可能性、近隣との関係、自立の可能性などを合わせて検討します。
例えば、
地域では高齢の低所得世帯の持ち家が一般的で、住宅・宅地も比較的広い。対象者の自宅も同程度で、築年数が古く、実際の売却価格も低い。
という場合には、面積がある程度大きくても、地域の生活実態から著しくかけ離れているとはいえないという判断材料になります。
一方、
周辺の一般的な住宅と比べて著しく大規模で、市場価値も非常に高く、容易に売却できる。
という場合には、生活保護法4条の補足性の原則との関係から、その資産を活用しないまま保護を継続することが妥当か、より慎重に検討することになります。
要するに、「平均面積を超えたら売却」という機械的な基準ではありません。地域の持ち家事情・住宅規模・地価・市場性などを客観的な比較資料として使い、対象世帯固有の事情と合わせて、その住宅を保有することが地域の生活水準との均衡や生活保護の補足性の観点から著しく不合理でないかを総合的に判断する、という考え方です。
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