(Q1)世帯分離後の世帯員に対して、分離された世帯員から扶養義務の履行を受けるよう指導することは可能ですか?その根拠は何ですか?例:法第27条や法第62条の規定に基づく指導・指示の内容はどのようなものですか?(Q2)保護の停廃止処分を行う場合、どのような手続きや条件が必要ですか?例:指示に従わない場合の最終的な措置として、どのような流れになりますか?

(A1)結論から言うと、世帯分離後であっても、扶養義務者に扶養能力がある場合は、生活保護受給者に対して扶養を受けるよう助言・指導することは可能です。

ただし、「必ず扶養を受けなければならない」という強制まではできません。

根拠

① 生活保護法第4条(補足性の原理)

生活保護は、

「利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件とする」

と規定されています。

また、

「民法に定める扶養義務者の扶養は、生活保護に優先して行われる」

とされています。

そのため、福祉事務所は扶養義務者がいる場合、扶養の可能性を確認します。


② 生活保護法第27条(指導及び指示)

保護の実施機関は、

被保護者に対し、生活の維持、向上その他保護の目的達成のために必要な指導又は指示をすることができる

とされています。

例えば、

  • 年金の請求をする
  • 障害年金の申請をする
  • 就労可能な人に求職活動を行う
  • 扶養義務者へ援助を求める

などが指導内容になり得ます。


③ 生活保護法第62条(指示等に従う義務)

被保護者は、

保護の実施機関が行った指導又は指示に従わなければならない

と規定されています。

ただし、

裁判例や厚生労働省通知では、

社会通念上妥当で合理的な内容であることが必要

とされています。


世帯分離の場合はどうなるのか

例えば、

  • 親が生活保護受給
  • 同居の子が世帯分離

した場合、

世帯分離によって別世帯扱いになっても、

親子関係がなくなるわけではありません。

民法上の扶養義務も残ります。

そのため福祉事務所は、

「お子さんから毎月いくらか援助を受けられませんか」

という扶養照会や助言を行うことがあります。


しかし強制はできない

厚生労働省は近年、

扶養照会について、

  • DV
  • 虐待
  • 長年交流がない
  • 関係悪化のおそれがある

場合には慎重に取り扱うよう通知しています。

また、

扶養義務者自身にも生活がありますので、

  • 扶養するかどうか
  • いくら援助するか

は基本的に任意です。

そのため、

世帯分離した子どもに援助能力があっても、

福祉事務所が強制的に仕送りを命じることはできません。


行政書士実務での回答例

福祉事務所から

「世帯分離した家族から援助を受けるよう指導します」

と言われた場合は、

世帯分離後であっても民法上の扶養義務は残るため、生活保護法第4条及び第27条に基づく助言・指導は可能です。しかし、扶養は本来私法上の義務であり、扶養義務者に援助能力や扶養意思がない場合まで強制することはできません。生活保護法第62条による指示も合理的な範囲に限られます。

と整理できます。

実務上は、**「扶養を受けるよう指導はできるが、扶養そのものを強制することはできない」**という理解で問題ありません。

(A2)生活保護の停止・廃止(停廃止)処分は、ケースワーカーが「言うことを聞かないからすぐに打ち切る」というものではありません。

一般的には次のような流れになります。

① まず指導・指示が行われる

福祉事務所は受給者に対して、

  • 就労できるのに求職活動をしない
  • 収入申告をしない
  • 資産申告をしない
  • 医療機関への受診指示に従わない
  • 稼働能力活用の指導に従わない

などの場合、まず口頭や文書で指導を行います。


② 文書による「指示書」が交付される

指導しても改善されない場合、

生活保護法第27条第1項

に基づく正式な「指示」が行われます。

例えば、

  • ○月○日までに求職活動報告書を提出してください
  • ○月○日までに収入申告をしてください

などの具体的な内容です。


③ 弁明の機会が与えられる

指示に従わなかった場合でも、直ちに保護は打ち切られません。

福祉事務所は、

  • なぜ従えなかったのか
  • 病気や障害などの事情はないか

について説明する機会を与えます。


④ 保護停止処分

正当な理由なく指示に従わない場合、

生活保護法第62条第3項

により保護停止が検討されます。

停止とは、

  • 保護費の支給を一時的に止める

処分です。

改善すれば再開できる可能性があります。


⑤ 保護廃止処分

停止後も改善が見られない場合や、悪質な場合は、

生活保護法第62条第3項

に基づき保護廃止が行われることがあります。

廃止になると、

  • 生活保護受給資格が終了
  • 再度受けるには改めて申請が必要

となります。


停廃止になりやすい事例

① 収入隠し

  • 就労収入を申告しない
  • 年金受給を隠す

② 資産隠し

  • 預金口座を隠す
  • 不動産を隠す

③ 稼働能力活用違反

  • 働けるのに全く求職活動をしない

④ 調査拒否

  • 訪問調査を繰り返し拒否する
  • 資料提出命令に応じない

停廃止ができないケース

次のような場合は停廃止が認められないことがあります。

  • 精神疾患で判断能力が低下している
  • 障害特性により指示を理解できない
  • 高齢で対応が困難
  • 病気療養中

この場合は支援方法の見直しが優先されます。


実務上のポイント

福祉事務所は裁判所ではありませんので、

「指示に従わない=即廃止」ではなく、

  1. 指導
  2. 文書指示
  3. 弁明機会
  4. 停止
  5. 廃止

という段階を踏むのが原則です。

行政書士として相談を受ける場合は、

「ケースワーカーから指示書が出ているか」

「生活保護法第27条に基づく正式な指示か」

をまず確認するとよいでしょう。また、停止・廃止処分が行われた場合でも、都道府県知事等に対する審査請求を行うことができます。

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