(Q3)法改正前後で、障害者本人や事業所、福祉サービス提供者にどのような影響がありましたか?(Q4)休職期間中に就労支援サービスを利用する際の具体的な手続きや注意点は何ですか?
(A3)結論
令和6年4月1日の法改正による最大の影響は、休職中の就労系障害福祉サービス利用が、従来の通知・Q&Aに基づく個別運用から、法令上明確な制度として位置付けられたことです。
ただし、利用要件そのものに大きな変更はありません。厚生労働省も「従来からの運用と大きな変更はない」と説明しています。主な実質的変更は、利用期間が雇用先企業の休職期間の終了まで、かつ上限2年と明確にされたことです。
1.障害者本人への影響
改正前
休職中でも一定の条件を満たせば利用できましたが、通知やQ&Aに基づく取扱いだったため、本人から見ると、
- 本当に利用できるのか分かりにくい
- 市町村によって判断が異なる可能性がある
- 一般就労中であることを理由に、利用が難しいと思われることがある
といった不明確さがありました。
改正後
一般企業に在籍している休職者でも、復職支援のために就労移行支援、就労継続支援A型・B型を一時的に利用できることが、法令上明確になりました。
本人にとっては、次のような効果があります。
- 復職に向けて生活リズムや体力を整えられる
- 通所訓練や作業訓練を受けられる
- 対人関係や通勤への不安を段階的に確認できる
- 企業への復職前に、働ける時間や必要な配慮を整理できる
- 制度上の根拠を示して市町村に相談しやすくなる
一方で、休職中であれば誰でも利用できるわけではありません。本人の復職希望、企業・主治医の判断、市町村による必要性の認定などが引き続き必要です。
また、利用できる期間が「企業の休職期間終了まで、上限2年」と明確になったため、利用終了の時期を見据えて復職計画を立てる必要があります。
2.雇用先企業への影響
改正前
企業は、休職者の復職支援について、産業医、主治医、医療機関のリワーク支援、地域障害者職業センターなどとの連携を検討していました。
障害福祉サービスを利用する場合も、制度上の位置付けが分かりにくく、企業側がどのような書類や意見を出せばよいのか、必ずしも明確ではありませんでした。
改正後
企業にとっては、障害福祉サービス事業所を、復職支援における地域の支援機関の一つとして位置付けやすくなりました。
具体的には、企業には次のような対応が求められます。
- 本人が復職を希望しているか確認する
- 企業だけでは十分な復職支援を実施できない事情を整理する
- 障害福祉サービスの利用が適当か判断する
- 主治医やサービス事業所、市町村等と情報共有する
- 復職時期、勤務時間、業務内容、合理的配慮などを検討する
したがって、企業にとっては、復職支援の選択肢が増えた一方、意見書等の作成や関係機関との連携が必要になるという実務上の負担もあります。
ただし、障害福祉サービスは企業が行うべき雇用管理や復職支援を全面的に代替するものではありません。企業は、休職制度や復職判定、職場環境の調整などを引き続き行う必要があります。
3.就労系障害福祉サービス事業所への影響
改正前
事業所は、通常の就職を目指す利用者だけでなく、一定の条件を満たす休職者についても復職支援を行うことができました。
ただし、休職者の利用が例外的な取扱いとして認識されやすく、支援内容や市町村への説明方法が分かりにくい面がありました。
改正後
休職者を復職支援の対象として受け入れることについて、法令上の根拠が明確になりました。
事業所には、一般的な就職支援とは異なる、次のような支援が求められます。
- 元の勤務先への復職を目標とした個別支援計画の作成
- 生活リズムや通所状況の確認
- 作業能力、集中力、疲労度などの評価
- 段階的な勤務時間の検討
- 本人、企業、主治医、相談支援事業所との連絡調整
- 復職後に必要となる職場上の配慮の整理
- 利用期間内での復職可能性の定期的な確認
つまり、単に事業所内で作業を提供するのではなく、元の職場に戻るための訓練・評価・連携を行う役割がより明確になりました。
一方で、企業や医療機関との情報共有には本人の同意や個人情報への配慮が必要です。また、事業所だけで復職の可否を決定するのではなく、企業、主治医、市町村等との役割分担を明確にする必要があります。
4.相談支援事業所・市町村への影響
相談支援事業所には、本人の状況を確認し、企業、医療機関、地域の就労支援機関による支援だけでは対応が難しいかを整理する役割があります。
市町村には、次の点を個別に確認したうえで支給決定を行うことが求められます。
- 企業や医療機関等による復職支援が見込めない、または困難であること
- 本人が復職を希望していること
- 企業と主治医がサービス利用を適当と判断していること
- サービス利用によって、より効果的・確実に復職できると認められること
これらの基本要件は改正前から大きく変わっていません。
法令上の位置付けが明確になったことで、市町村にとっては判断根拠が示しやすくなりましたが、申請書類の確認や利用期間、復職可能性の判断など、個別審査は引き続き必要です。
法改正前後の違い
| 関係者 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 障害者本人 | 条件を満たせば利用可能だが、制度上分かりにくかった | 一般就労中の一時的利用が法令上明確になった |
| 雇用先企業 | 福祉サービスを復職支援に使う根拠が分かりにくかった | 復職支援の選択肢として活用しやすくなった |
| 福祉サービス事業所 | 通知等に基づいて休職者を受け入れていた | 休職者への復職支援の位置付けが明確になった |
| 相談支援事業所 | 個別に必要性や他機関の支援状況を整理していた | 書類や確認すべき要件が整理された |
| 市町村 | 通知・Q&Aに基づいて個別判断していた | 法令上の根拠に基づいて支給決定できるようになった |
| 利用期間 | 明確な休職期間との関係が示されていなかった | 企業の休職期間終了まで、上限2年と明確化された |
わかりやすくまとめると
法改正によって、障害者本人が突然新しくサービスを利用できるようになったわけではありません。
従来から一定条件で認められていた取扱いが、
「一般企業に在籍している休職者でも、復職のために必要であれば、就労系障害福祉サービスを一時的に利用できる」
という制度として明確になりました。
その結果、本人には利用の相談がしやすくなる効果があり、企業や福祉事業所には連携して復職を支える役割が明確になる効果がありました。一方で、企業・主治医・相談支援事業所の書類や、市町村による個別判断は引き続き必要です。
(A4)手続きの全体像
休職中に就労系障害福祉サービスを利用する場合は、通常、次の順序で進めます。
1.まず市町村の障害福祉担当窓口に相談する
住民票のある市町村の障害福祉担当窓口に、
- 現在休職中であること
- 元の会社への復職を希望していること
- 復職のために就労支援サービスを利用したいこと
を伝えます。
利用候補となるのは、主に次のサービスです。
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
同様の要件を満たす場合には、障害の状態に応じて生活介護や自立訓練が認められることもあります。
2.相談支援事業所などに相談する
相談支援専門員に、本人の状態や復職の希望、会社の休職期間などを説明します。
相談支援事業所は、一般的に次のことを整理します。
- 本人が復職を希望しているか
- どのような訓練が必要か
- 企業や医療機関だけで復職支援ができない理由
- 地域障害者職業センターなどを利用できない理由
- 適切なサービスの種類、利用日数・期間
- 復職までの支援目標
そのうえで、サービス等利用計画案を作成します。セルフプランで申請することもできますが、その場合は本人が必要書類を準備し、市町村が地域の支援機関の状況を調査して判断します。
3.雇用先企業の書類を準備する
企業には、主に次の内容を記載した書類を作成してもらいます。
- 本人が現在休職中であること
- 休職期間
- 本人が復職を希望していること
- 企業だけでは十分な復職支援を行うことが難しいこと
- 就労系障害福祉サービスを利用した復職支援が適当であること
厚生労働省のQ&Aでは、企業による復職支援の実施が困難であり、福祉サービスによる支援を受けて復職することが適当と判断していることを示す書類が必要とされています。
4.主治医の書類を準備する
休職について診断した主治医から、主に次の内容を示す書類を取得します。
- 現在の障害や病状
- 福祉サービスに通所できる状態であること
- 医療機関だけでは復職支援を行うことが難しいこと
- 就労系障害福祉サービスによる復職支援が適当であること
- 通所に当たって必要な配慮
単に「就労不能」という診断内容だけでは、通所訓練との整合性が問題になる場合があります。そのため、通常勤務はまだ難しいが、復職訓練としての通所は可能であることが分かる内容にしてもらうことが重要です。主治医についても、医療機関による復職支援が困難で、福祉サービスの利用が適当であることを示す書類が求められます。
5.地域の他の復職支援が利用できないことを整理する
相談支援事業所または申請者は、次のような支援機関の利用が困難であることを整理します。
- 地域障害者職業センター
- 医療機関のリワークプログラム
- 障害者就業・生活支援センター
- 企業内の復職支援制度
- その他の地域の就労支援機関
就労系障害福祉サービスは、企業や医療機関などによる復職支援が利用できる場合に、それを当然に置き換えるものではありません。地域の就労支援機関や医療機関による復職支援が困難または見込めないことを示す必要があります。
6.市町村に支給申請をする
必要書類をそろえて、市町村に障害福祉サービスの支給申請を行います。
一般的には、次の書類が必要です。
- 支給申請書
- 障害者手帳、診断書、自立支援医療受給者証など
- 雇用先企業の意見書・証明書
- 主治医の意見書・診断書
- 相談支援事業所等が作成した説明書
- サービス等利用計画案
- 休職期間が確認できる書類
- 本人の復職希望が分かる書類
具体的な様式や必要書類は、市町村によって異なる場合があります。
7.市町村による審査・支給決定
市町村は、次の3要件を満たしているかを個別に審査します。
- 企業、地域の就労支援機関、医療機関等による復職支援が見込めない、または実施困難であること
- 本人が復職を希望し、企業と主治医が福祉サービスの利用を適当と判断していること
- 福祉サービスの利用によって、より効果的かつ確実な復職が可能になると市町村が判断すること
要件を満たすと支給決定され、障害福祉サービス受給者証が交付されます。
8.事業所と契約し、個別支援計画を作成する
受給者証の交付後、利用する事業所と契約します。
個別支援計画には、例えば次の内容を盛り込みます。
- 元の職場への復職を目標とすること
- 生活リズムの安定
- 体力、集中力、作業能力の回復
- 通勤を想定した訓練
- 利用日数・時間を段階的に増やす計画
- 企業、主治医との連携方法
- 復職予定時期
- 復職後に必要な配慮
単なる居場所や長期的な作業の提供ではなく、復職に直接つながる支援内容にする必要があります。
特に注意すべき点
1.休職中なら自動的に利用できるわけではない
本人、会社、主治医が希望しているだけでは足りず、市町村がサービスの必要性と復職への有効性を認める必要があります。
2.利用期間には上限がある
利用できるのは、
雇用先企業が定める休職期間の終了まで、かつ上限2年間
です。会社の休職期間が6か月であれば、原則として福祉サービスもその期間を超えて利用することはできません。
3.会社の就業規則を確認する
事前に次の点を確認しておく必要があります。
- 休職期間の満了日
- 休職中の外出・通所や訓練の取扱い
- 復職判定の方法
- 産業医面談の要否
- 試し出勤制度の有無
- 復職できない場合の取扱い
会社に無断で通所を始めると、休職命令や傷病手当金との関係で説明を求められる可能性があります。
4.傷病手当金との関係を確認する
障害福祉サービスに通所しただけで直ちに傷病手当金が停止されるとは限りませんが、通所状況によっては、健康保険者から「労務不能の状態なのか」と確認されることがあります。
主治医の診断内容について、
通常の労働は困難だが、復職準備として限定的な通所訓練は可能
という整理が必要になる場合があります。傷病手当金については、加入している健康保険組合や全国健康保険協会にも事前に確認するのが安全です。
5.企業・主治医・事業所の説明を一致させる
例えば、
- 企業は「すぐ復職できる」としている
- 主治医は「通所も困難」としている
- 事業所は「長期的な福祉的就労が必要」としている
というように説明が食い違うと、支給決定が難しくなります。
「現在は通常勤務が難しいが、段階的な訓練を行えば元の職場への復職が見込める」という共通認識を持つことが重要です。
6.A型利用では雇用関係に注意する
就労継続支援A型は、原則としてA型事業所との雇用契約を伴います。元の会社に在籍したまま、別のA型事業所とも雇用契約を結ぶことになるため、
- 元の会社の就業規則
- 副業・兼業の禁止規定
- 社会保険
- 雇用保険
- 傷病手当金
- 労働時間管理
との関係を事前に確認する必要があります。実務上は、就労移行支援やB型利用より慎重な調整が必要です。
7.利用中も定期的な見直しが必要
利用開始後は、本人、事業所、企業、主治医、相談支援事業所で、
- 通所状況
- 症状や疲労度
- 作業能力
- 復職可能性
- 復職時期
- 勤務時間や業務内容
- 必要な合理的配慮
を定期的に確認します。
復職の見込みがなくなった場合や、退職して雇用関係が終了した場合には、休職者としての一時利用の前提が変わるため、市町村へ速やかに報告し、支給決定や支援計画の見直しが必要です。
まとめ
手続きの要点は、次の流れです。
市町村・相談支援事業所に相談
→ 会社と主治医の同意・書類を取得
→ 他の復職支援が利用困難であることを整理
→ 市町村へ支給申請
→ 支給決定後に事業所と契約
→ 復職を目標とした個別支援計画に基づいて利用
最も重要なのは、単に休職中の居場所として利用するのではなく、元の職場への復職に必要な訓練であることを、本人・企業・主治医・市町村で共有することです。
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