(Q1)所得税が課されない程度の収入を得ている者は、生活扶助義務関係者として扶養能力がないものとして取り扱ってよいですか?(参考:給与所得者については、資産が特に大きい等他に特別な事由がない限り、扶養能力がないものとして取り扱って差し支えないとされています。)(Q2)給与所得者以外の者や、給与所得者であっても特別な事情がある場合、扶養能力の判断はどのように行うべきですか?(参考:各種収入額、資産保有状況、事業規模等を勘案して個別に判断することが求められています。)
(A1)はい。給与所得者で、所得税が課されない程度の収入しかない場合は、資産が特に大きいなどの特別な事情がなければ、原則として「扶養能力がない」と取り扱って差し支えありません。
厚生労働省の「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」第5・問3では、この点が明確に示されています。
つまり、たとえば親族が働いてはいるものの、給与収入が低く、所得税がかからない程度の生活水準である場合には、その人自身の生活維持も必要です。そのため、通常は「生活保護を受けている親族をさらに扶養できるだけの余力はない」と判断してよい、という考え方です。
ただし、例外があります。たとえば、
- 給与収入は低いが、多額の預貯金や不動産などの資産を持っている
- 収入以外に相当な資力がある
- その他、通常の低所得の給与所得者とは異なる特別な事情がある
といった場合には、単に「所得税がかからない」という理由だけで扶養能力なしとは判断せず、個別に検討します。
また、給与所得者以外の場合は注意が必要です。
たとえば、自営業者、農業者、不動産所得がある人などについては、所得税が課税されていないからといって直ちに扶養能力なしとはしません。厚労省通知では、各種収入額、資産の保有状況、事業規模などを総合的に勘案して個別判断することとされています。
例えば、個人事業主で税務上の所得が低く所得税がゼロでも、事業用資産や預貯金が相当額あり、実際の生活状況にも余裕がある場合には、扶養能力があるかどうかを別途検討する必要があります。
したがって、非常に簡単に整理すると、
給与所得者
→ 所得税が課されない程度の収入なら、大きな資産など特別な事情がない限り、扶養能力なしとして扱ってよい。
給与所得者以外
→ 非課税というだけでは決めず、収入・資産・事業規模などから個別に判断する。
という取扱いです。
なお、ここでいう「所得税が課されない」は、住民税非課税世帯と必ずしも同じ意味ではない点にも注意が必要です。
(A2)はい。給与所得者以外の人や、給与所得者でも「所得税非課税だから扶養能力なし」と単純には扱えない特別な事情がある人については、収入・資産・事業の実態などを総合して個別判断します。
厚生労働省の課長通知第5・問3では、給与所得者については、資産が特に大きいなど特別な事情がなければ、所得税が課されない程度の収入なら扶養能力がないものとして取り扱って差し支えないとしています。一方で、給与所得者でもその取扱いが適当でない人や、給与所得者以外の人については、「各種収入額、資産保有状況、事業規模等」を勘案して個別に判断することと明示されています。
具体的には、主に次の点を確認します。
- 実際の収入額:給与だけでなく、事業所得、年金、不動産収入、配当などを含め、継続的にどの程度の収入があるか。
- 必要経費を差し引いた後の実質的な余力:自営業者なら売上だけではなく、仕入れ・店舗費・必要経費なども踏まえて判断します。
- 預貯金や不動産などの資産状況:所得が少なくても、多額の預貯金や収益性のある不動産などを保有している場合には扶養能力がある可能性があります。
- 事業規模・経営実態:自営業者なら、従業員数、店舗・設備、売上規模、事業用資産などから実際の経済力を確認します。
- 本人世帯の生活維持に必要な費用:扶養義務者自身やその家族の生活費、住宅費、医療費、教育費などを差し引いて、なお援助できる余力があるかを見ます。
- 一時的な収入か継続的な収入か:たまたま一時的に高い収入があっただけなのか、今後も安定して扶養できる収入が見込めるのかも重要です。
例えば、自営業者Aさんの税務上の所得が低く所得税がかかっていなくても、店舗や賃貸不動産、多額の預貯金を所有し、実際には相当の経済的余裕がある場合には、「所得税非課税だから扶養能力なし」とはせず、個別に扶養可能性を検討します。
逆に、個人事業主で売上が年間500万円あったとしても、仕入れや店舗家賃などの必要経費が大きく、家族の生活費を差し引くとほとんど余力がない場合には、売上額だけを見て「扶養能力あり」と判断するのは適切ではありません。
また、扶養能力の判断は、「資産があるから必ず扶養させる」というものでもありません。 厚労省の通知では、実際に扶養義務の履行を求める対象についても、親族との交際状況、扶養手当・税法上の扶養控除の状況、高額な収入などの資力を総合的に考慮するよう示しています。
したがって、簡単にいうと、給与所得者以外や特別な事情のある給与所得者については、「課税されているかどうか」だけでは決めず、実際の収入、資産、事業規模、必要経費、本人世帯の生活費などを調べ、現実に親族を援助できる経済的余力があるかを個別・総合的に判断するということです。
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