(Q3)Cさんは、Aさんが相続債務50万円全額、相続登記に要する費用全額、および今後の固定資産税全額を負担することを条件に、Aさんが本件居宅を自宅として使用することを認める意向を示しています。この条件で合意する場合、どのような手続きや注意点がありますか?(Q4)Aさんの希望に沿う形で本件を解決するためには、どのような対応策が考えられるでしょうか?また、その際に留意すべき法的ポイントは何ですか?

(A3)この条件で合意すること自体は可能ですが、「Aさんが住んでよい」という合意だけでは不十分で、①不動産の所有関係、②50万円の相続債務、③相続登記費用、④今後の固定資産税、⑤Aさんの居住権をそれぞれ明確に書面化することが重要です。

まず、不動産を最終的に誰の名義にするのかを決めます。Aさんが単独所有することで合意できるなら、遺産分割協議書に「本件不動産はAさんが取得する」と明記し、その内容に基づいて相続登記をします。相続登記は現在義務化されており、遺産分割が成立した場合には、その内容を登記に反映させる必要があります。通常、戸籍関係書類、遺産分割協議書、印鑑証明書などを準備します。

一方、Cさんが「Aさんの単独所有には同意しないが、Aさんが住むことだけは認める」という意味であれば、共有のままAさんに使用させる形になります。その場合は、単に口頭で「住んでいい」とするのではなく、使用貸借などの形で、少なくとも「Aさんが無償で居住できる期間」「固定資産税・修繕費・保険料を誰が負担するか」「建物を売却する場合どうするか」「Aさんが死亡・転居した場合どうするか」まで書面にしておく方が安全です。

次に、相続債務50万円について注意が必要です。AさんとCさんの内部では「50万円はすべてAさんが負担する」と合意できますが、これは原則として相続人同士の内部的な負担調整です。債権者との関係まで当然に「Aさんだけが債務者になる」とは限りません。債務の内容によっては、債権者の承諾などが必要になることがあります。そのため、遺産分割協議書とは別に、誰に対する何の債務なのかを確認しておくことが重要です。

相続登記費用については、Aさんが全額負担するという合意も可能です。登録免許税、戸籍等の取得費、司法書士に依頼する場合の報酬などについて、**「相続登記に要する費用はAさんの負担とする」**と書面に明記しておくと後のトラブルを防ぎやすくなります。

固定資産税についても、Aさんが全額負担するという内部合意は可能です。ただし、税務上の納税義務者が誰になるかと、Aさん・Cさんの間で誰が最終的に負担するかは別問題です。共有名義のままなら、自治体から代表者に納税通知書が届くこともあるため、「通知書はCさんに届いたがAさんが支払う」といった状況もあり得ます。したがって、固定資産税だけでなく、都市計画税や今後の修繕費も含めて決めておくとよいでしょう。

特に今回のケースでは、次のような内容を遺産分割協議書+必要に応じて別途の合意書にしておくのが分かりやすいです。

「Aさんが相続債務50万円を負担する。相続登記に必要な費用はAさんが負担する。今後発生する固定資産税等はAさんが負担する。その代わり、Aさんが本件不動産を自宅として継続して使用することをCさんは認める。」

ただし、ここで一番確認すべきなのは、その条件と引き換えにAさんが不動産の所有権全部を取得するのか、それともCさんも共有持分を残すのかです。この2つでは将来の安定性がかなり違います。共有のままなら、後日Cさんが持分を売却したり、共有物分割を求めたりする可能性も残ります。

また、Aさんが生活保護を利用中または申請予定なら、この合意を成立させる前に福祉事務所へ相談することが重要です。不動産持分の取得、50万円の債務負担、固定資産税負担などは、資産活用や最低生活費との関係で生活保護上の判断に影響する可能性があるからです。

要するに、「Aさんが全部の費用を負担する代わりに住み続ける」という合意は可能ですが、『誰が所有者になるか』『Aさんはいつまで住めるか』『50万円の債務を誰が対外的に負うか』『税金・修繕費を誰が負担するか』まで明確に書面化することが重要です。特にAさんの居住を長期間安定させたいのであれば、単なる口約束ではなく、登記や契約を含めて整理する必要があります。

(A4)Aさんの希望が**「本件居宅に今後も住み続けたい」**ということであれば、まずは売却ではなく、Aさんの居住を安定させる形で相続関係を整理する方法を優先して検討するのがよいです。

考えられる対応策は大きく3つあります。

1つ目は、Aさんが本件不動産を単独取得する方法です。Cさんが最終的に同意できるのであれば、Aさんが不動産を取得し、その代わりに相続債務50万円、相続登記費用、固定資産税などを負担する内容を遺産分割協議書に明記します。必要に応じて、Cさんの持分相当額について代償金を支払う「代償分割」も考えられます。共有状態を残さないため、Aさんの居住は最も安定しやすい方法です。

2つ目は、AさんとCさんの共有のまま、Aさんの居住権を契約で確保する方法です。Cさんが単独所有には同意しないものの、Aさんの居住は認めるのであれば、使用貸借契約などを締結し、

  • Aさんが無償で居住できること
  • 居住期間
  • 固定資産税、修繕費、保険料などの負担
  • Cさんが持分を第三者へ譲渡する場合の取扱い
  • Aさんが死亡・転居した場合の終了条件

などを明確にします。

ただし、共有のままでは将来、Cさんが共有物分割を請求する可能性が残ります。共有者間で分割の協議がまとまらなければ、裁判所に共有物分割を請求する制度があり、場合によっては一方の共有者が取得して他方に価格を支払う方法や、競売による換価が命じられることがあります。 そのため、単なる「住んでいい」という口約束より、できるだけ具体的な契約書を作成することが重要です。

3つ目は、協議がまとまらない場合に家庭裁判所の遺産分割調停を利用する方法です。相続財産である不動産については、Aさんが現に居住している事情、不動産の処分価値、Cさんの相続分、Aさんが負担する債務などを踏まえて分割方法を話し合います。それでも合意できなければ審判に進むことがあります。

生活保護を利用している、または今後利用する予定のAさんについては、さらに注意が必要です。生活保護では、利用可能な資産は原則として最低生活の維持に活用しますが、現に居住している家屋については、処分価値が利用価値に比べて著しく大きくない限り、保有を認めることができるとされています。 厚生労働省も、持ち家があっても生活保護を申請でき、居住用持ち家は保有が認められる場合があると案内しています。

そのため、Aさんが本件居宅を単独取得する場合には、「不動産を取得した=生活保護が必ず停止される」わけではありません。 一方で、取得した持分・不動産の評価額や処分可能性は福祉事務所へ申告する必要があります。不動産の保有状況については定期的な申告も求められています。

また、Aさんが相続債務50万円を全部負担するという点も注意が必要です。相続人同士で「Aさんが全部払う」と決めても、その合意だけで債権者に対してCさんの責任まで当然になくなるとは限りません。 債務の種類によっては、債権者との別途調整が必要です。

さらに、生活保護受給中であれば、生活扶助費からその50万円を分割返済することを前提に合意するのは慎重に考える必要があります。生活保護費は最低生活を保障するためのお金なので、債務負担については福祉事務所や法律専門家と事前に整理した方が安全です。

したがって、Aさんの希望を優先するなら、**第一候補は「Aさん単独取得+債務・費用負担を明確化」です。それが難しければ、「共有のままAさんの居住を契約で強く保護する」**方法を検討し、それでも協議できなければ遺産分割調停へ進む、という順番が分かりやすいです。

特に重要なのは、「所有権」「居住できる権利」「相続債務」「税金・修繕費」「生活保護上の資産申告」を全部別々に整理することです。ここを曖昧にすると、後からCさんとの紛争や生活保護上の問題につながりやすくなります。

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