(Q)Aさんは、7年前に購入した自動車を日常生活に利用していますが、現在の査定価格はゼロです。この場合、Aさんは自動車に処分価値がないことを理由に、その保有を継続することができますか。もしAさんの自動車にローンが残っている場合、生活保護の申請や自動車の保有にどのような影響がありますか。

(A)この場合、「査定価格がゼロだから必ず自動車を保有できる」ということにはなりません。 生活保護では、自動車は原則として処分対象で、例外的に一定の要件を満たす場合に保有が認められます。厚生労働省も、自動車については「原則処分、ただし通勤・通院等に必要で一定要件を満たす場合は保有容認」と整理しています。

Aさんの車が7年前に購入したもので、現在の査定価格が0円であれば、「処分価値が小さい」という点では保有に有利な事情です。しかし、それだけで十分ではありません。たとえば通勤、障害者の通院・通所、公共交通機関の利用が著しく困難な地域での移動など、生活上その車を保有する必要性が認められるか、さらに車検・自動車税・任意保険などの維持費をどう負担するのか、といった点も確認されます。通院等の場合についても、処分価値が小さいことは要件の一つにすぎず、必要性や代替交通手段、維持費など複数の条件が定められています。

したがって、単に「買い物やレジャーなどの日常生活に便利だから使っている」というだけの場合は、査定価格0円であっても当然に保有容認になるとは限りません。 一方で、処分してもほとんど換金できず、かつ通勤や通院など生活維持に必要な事情がある場合には、保有が認められる可能性があります。

また、失業中で現在は通勤に使っていなくても、おおむね6か月以内に就労して生活保護から脱却することが確実に見込まれ、再就職後の通勤に車が必要で、処分価値も小さい場合には、処分指導を行わないことができます。さらに一定の条件を満たせば、保護開始からおおむね1年の範囲で処分を猶予できる取扱いもあります。

一方、自動車ローンが残っている場合は、別の問題が生じます。

生活保護を申請すること自体は、車のローンが残っているからといってできなくなるわけではありません。ただし、生活保護費は最低生活を保障するためのものであり、原則として生活保護費から自動車ローンの返済を続けることは認められません。 そのため、福祉事務所はローン残高、毎月の返済額、車の所有権が誰にあるか、車が本当に必要か、誰がローンを返済するのかなどを確認します。

たとえば、

車の査定額0円・ローン残高30万円・毎月2万円返済

というケースで、Aさんが生活保護費から毎月2万円を返済し続けるのであれば、問題になります。生活保護費を債務返済に充てることになり、最低生活保障の趣旨と整合しにくいためです。

逆に、車が通勤や障害者の通院などで保有容認要件を満たしており、ローン返済についてもAさんの生活保護費からではなく、別途適法かつ確実な方法で処理できるような特殊な事情がある場合には、福祉事務所が個別に判断することになります。

なお、ローン中の車では、所有権留保にも注意が必要です。車検証上、所有者がローン会社や販売会社、使用者がAさんとなっていることがあります。この場合、Aさんが自由に売却・廃車できないこともあるため、単純に「査定価格0円だから資産ではない」とは判断できません。

要するに、

査定価格0円
→ 処分価値が小さいという意味では保有に有利ですが、それだけで保有が認められるわけではありません。

通勤・通院等に必要+処分価値が小さい+維持費などの要件を満たす
→ 保有が認められる可能性があります。

ローンが残っている
→ 生活保護の申請自体は可能ですが、保護費からローンを返済し続けることは原則として認められず、車の必要性やローンの処理方法も含めて個別に審査される、と理解すると分かりやすいです。

記事のお問い合わせ先 生活保護専門 神戸市の義足行政書士事務所