(Q1)どのような場合に簡易宿泊所を居住地として取り扱うべきですか?(Q2)簡易宿泊所を居住地として取り扱わない場合でも、住所として保護を行うことは可能ですか?(Q3)ホームレスの方が保護申請をした場合、他に適当な施設がないときは簡易宿泊所をどのように取り扱いますか?
(A1)生活保護において、簡易宿泊所(簡易宿所、ドヤ、ビジネスホテル等を含む)を居住地として取り扱うかどうかは、単に「宿泊施設だからダメ」ということではなく、その場所で継続的・安定的に生活している実態があるかどうかで判断されます。
わかりやすく言うと
次のような場合は、簡易宿泊所であっても「居住地」として取り扱われることがあります。
✅ 長期間継続して宿泊している
✅ 生活の本拠として利用している
✅ 荷物や生活用品を置いている
✅ 住民票を置いている、または置く予定である
✅ 当面他に住む場所がない
✅ 毎日そこから通院や就職活動などをしている
つまり、
「旅行者として一時的に泊まっている」のではなく、「実際にそこで生活している」
と認められる場合です。
具体例
居住地として認められやすい例
- アパートを失い、簡易宿泊所に3か月住んでいる
- 生活保護申請まで無料低額宿泊所や簡易宿泊所で生活している
- 部屋を月単位で契約している
- 荷物や衣類を置いて生活している
→ このような場合は、その簡易宿泊所を居住地として生活保護申請が可能です。
居住地として認められにくい例
- 観光旅行で数日だけ宿泊
- 出張のため一時利用
- 住所不定で毎日宿泊場所が変わる
- 荷物もなく単なる仮眠場所
→ この場合は居住地とは認められにくいです。
生活保護実務で重要なポイント
生活保護法では、
現に居住している場所を管轄する福祉事務所が申請を受け付ける
という考え方が基本です。
そのため、
- アパートがない
- ネットカフェ生活
- 簡易宿泊所生活
- 無料低額宿泊所生活
であっても、現にその地域で生活しているなら申請は可能です。
福祉事務所が
「住所がないから申請できません」
という対応をすることは原則として認められていません。
行政書士として相談を受けた場合の説明例
「簡易宿泊所であっても、実際にそこを生活の拠点として継続して利用しているのであれば、生活保護上は居住地として取り扱われる可能性があります。住民票がなくても申請はできますので、まずは現在滞在している場所を管轄する福祉事務所へ申請を行いましょう。」
と説明すると分かりやすいでしょう。
(A2)はい、可能な場合があります。
この質問は少し分かりにくいので、生活保護実務に即して説明します。
結論
簡易宿泊所(ドヤ・ビジネスホテル・無料低額宿泊所等)が「居住地」として認められない場合でも、その場所を現在の所在地(住所地)として生活保護申請や保護決定が行われることがあります。
わかりやすい例
① 神戸市の簡易宿泊所に滞在中
住民票は大阪市のまま
この場合でも、
- 現在神戸市の簡易宿泊所で生活している
- 神戸市内に実際に居住している
- 他に住む場所がない
のであれば、神戸市の福祉事務所が保護を開始することがあります。
なぜか?
生活保護は原則として
「現に生活している場所」
を基準に実施責任を判断します。
そのため、
- 住民票がない
- 簡易宿泊所である
- 一時的な宿泊施設である
という理由だけで申請を拒否することはできません。
ただし注意点
簡易宿泊所が
- 数日だけの宿泊
- 住所として継続利用できない
- すぐ退去予定
の場合は、
福祉事務所から
「住居確保を進めましょう」
と言われることがあります。
その場合でも、
住居が決まるまでの間の生活保護(生活扶助・医療扶助等)を受けられる可能性があります。
実務上の考え方
福祉事務所は
- まず保護申請を受理する
- 当面は簡易宿泊所で保護開始
- アパート等への転居支援を行う
という流れを取ることが多いです。
行政書士として相談者へ説明するなら
「簡易宿泊所だから生活保護を受けられないということはありません。住民票がなくても、現在そこで生活している事実があれば申請できます。保護開始後にアパート探しや転居支援を受けることも可能です。」
と説明すると分かりやすいでしょう。
なお、厚生労働省の生活保護実施要領では、住居が定まらない方や簡易宿泊所等に滞在している方についても、現に居住している場所を基準として保護の実施責任を判断する取扱いが示されています。申請段階で「住所がない」「簡易宿泊所だから」という理由で門前払いすることは認められていません。
(Q3)この質問は、生活保護の実施要領でいう「居宅生活が可能かどうか」の判断に関するものです。
わかりやすく言うと、
ホームレスの方が生活保護を申請した場合でも、すぐに無料低額宿泊所や救護施設へ入所しなければならないわけではありません。
福祉事務所はまず、
- 親族宅への居住が可能か
- アパート等の一般住宅を確保できるか
- 利用できる施設があるか
を検討します。
その結果、
他に適当な施設や住居がなく、当面の居所として簡易宿泊所(ドヤ・ビジネスホテル等)しかない場合は、簡易宿泊所を一時的な居所として取り扱うことができます。
つまり、
✅ 保護申請は受理する
✅ 簡易宿泊所を居所として生活保護を開始することができる
✅ その後、アパート等の一般住宅への転居を支援する
という流れになります。
実務上は、
- ネットカフェ
- ビジネスホテル
- 簡易宿泊所
- ウィークリーマンション
などに一時的に宿泊しながら保護開始となるケースも少なくありません。
行政書士として相談者に説明する場合
「住む家がなくても生活保護は申請できます。福祉事務所は申請を断ることはできません。アパートが見つかるまでの間、簡易宿泊所やホテル等を居所として保護を開始し、その後に住宅扶助を利用して一般の賃貸住宅へ転居するのが一般的です。」
と説明すると分かりやすいでしょう。
なお、福祉事務所から
「まず施設に入らないと申請できません」
「住所がないから申請できません」
と言われた場合は、原則として不適切な対応です。
生活保護は住所がなくても申請でき、福祉事務所は保護の要否を調査・決定しなければなりません。これは、厚生労働省の通知や判例でも確認されている考え方です。
⇓