(Q1)入院中に帰るべき住居がなくなってしまった場合、生活保護の申請先となる自治体(管轄市)はどこになりますか?(Q2)AさんはX市の病院に入院中で、退院後に帰る住居や親族がいない場合、生活保護の申請はX市で受理されるべきでしょうか?それとも、入院前に住んでいたY市が管轄となるのでしょうか?

(A1)入院中に、それまで帰る予定だった住居がなくなった場合の生活保護の申請先は、「いつ住居を失ったか」「入院前の住居に戻る予定があるか」などによって変わります。

生活保護法19条では、原則として、居住地がある人はその居住地を所管する福祉事務所が担当し、居住地がない人は現在地を所管する福祉事務所が担当します。入院中で居住地がない場合、通常の「現在地」は病院所在地になります。

ただし、入院患者には特別な取扱いがあります。厚生労働省の局長通知第2では、入院と同時に住居を失った場合、または入院後3か月以内に「入院を原因として」住居を失った場合には、原則として、入院前の居住地を所管する福祉事務所が引き続き保護の実施責任を負うとされています。

例えば、神戸市A区にアパートを借りていた人が大阪市内の病院に入院し、入院後2か月でアパートを解約して帰る家がなくなった場合です。このケースが「入院を原因として住居を失った」と認められるなら、原則として入院前の神戸市側の福祉事務所が担当します。病院が大阪市にあるというだけで、直ちに大阪市へ管轄が移るわけではありません。

一方、入院後3か月を超えてから生活保護を初めて申請し、その申請時点ですでに居住地がない場合は、この特例から除かれています。その場合は原則として、居住地のない要保護者として、現在地である病院所在地を所管する福祉事務所が担当することになります。

また、入院前の住居そのものはなくなっていても、同じ管内に確実な帰来先があり、退院後そこに必ず居住する予定である場合などは、入院前の居住地側が引き続き担当することがあります。単に「親族が住んでいる」というだけでは足りず、確実な帰来・受入先であることが重要です。

整理すると、判断の目安は次のようになります。

① 入院前の住居が現在もある・確実な帰来先がある
→ 原則、入院前の居住地の福祉事務所

② 入院と同時、または入院後3か月以内に入院を原因として住居を失った
→ 原則、入院前の居住地の福祉事務所

③ 入院後3か月を超えてから初めて申請し、申請時点で居住地がない
→ 原則、病院所在地=現在地の福祉事務所

という考え方です。

つまり、「入院中に家がなくなったら必ず病院所在地の自治体へ申請する」というわけではありません。住居を失った時期や原因によっては、入院前の自治体が引き続き担当します。 ここは生活保護の「実施責任」で特に判断を間違えやすい部分です。

(A2)このケースは、**Aさんが「いつ・どのような理由でY市の住居を失ったか」**によって管轄が変わります。単に「現在X市の病院に入院していて、退院後に帰る家も親族もいない」という事実だけでは、必ずX市ともY市とも決まりません。

厚生労働省の局長通知第2では、居住地のない入院患者については、原則として現在地=入院している病院所在地の自治体が実施責任を負います。したがって、特例に当たらなければ、Aさんの場合はX市が生活保護を担当することになります。

ただし、重要な特例があります。Aさんが、

① 入院と同時にY市の住居を失った場合、または
② 入院後3か月以内に、入院したことが原因でY市の住居を失った場合

には、原則として入院前の居住地であるY市が引き続き生活保護の実施責任を負います。

例えば、AさんがY市で一人暮らしをしていてX市の病院に入院し、入院が長引いたため家賃を払い続けられず、入院後2か月でY市のアパートを解約したケースなら、入院を原因として3か月以内に居住地を失ったと考えられるため、原則Y市が担当です。

一方、Aさんが入院してから3か月を超えた後に初めて生活保護を申請し、その時点ですでに帰る住居がない場合は、この特例から除外されています。その場合は、居住地のない入院患者として、現在地であるX市の病院所在地を管轄する福祉事務所が担当するのが原則です。

また、「Y市に親族がいる」というだけではY市の居住地になるわけではありません。入院前の地域に家財が保管されている、または確実な帰来引受先があり、退院後必ずそこに居住する予定である場合にはY市が担当する特例がありますが、ご質問では「帰る住居や親族がいない」とのことなので、この特例には通常当たりません。

したがって、分かりやすく整理すると、

入院と同時、または入院後3か月以内に入院を原因としてY市の住居を失った → 原則Y市

それ以外で、申請時点に帰る住居がなく、居住地がない → 原則X市(病院所在地)

という判断になります。

なお、「3か月」は単純な90日計算ではなく、厚労省問答では入院した日の属する月を含めて4か月目の月の、入院日に対応する日までとされています。

ですので、Aさんの具体的な入院日・Y市の住居を失った日・生活保護申請日の3つが分かれば、X市とY市のどちらが実施責任を負うか、かなり明確に判定できます。

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