(Q3)AさんがY市に生活保護申請を行った際、Y市から『現在地がX市の病院なので管轄はX市だ』と断られた場合、どちらの市が生活保護の実施機関となるべきでしょうか?(Q4)AさんはY市に帰る意思がなく、入院前の居宅も現在は誰も住んでいない場合、このような状況で生活保護の申請先はどのように決定されますか?

(A3)この場合、Y市が「現在X市の病院にいる」という理由だけで一律に申請を断るのは適切ではありません。 どちらが生活保護の実施機関になるかは、Aさんの入院前の居住地がいつ・どのように失われたかで判断します。

生活保護法19条では、原則として、居住地がある人はその居住地の福祉事務所、居住地がない人は現在地の福祉事務所が実施責任を負います。入院中で居住地がない場合、現在地は通常、病院所在地であるX市です。

ただし、入院患者には重要な特例があります。厚生労働省の局長通知第2では、Aさんが入院と同時にY市の住居を失った場合、または入院後3か月以内に、入院を原因としてY市の住居を失った場合には、原則として入院前の居住地であるY市が実施責任を負うとされています。

例えば、AさんがY市のアパートからX市の病院に入院し、入院が長引いたため2か月後にアパートを解約したのであれば、入院を原因として3か月以内に居住地を失ったケースとして、原則Y市が担当です。この場合、Y市が単に「今はX市の病院にいるからX市」とするのは、通知上の特例を考慮していない可能性があります。

一方、入院後3か月を経過した後に初めて生活保護を申請し、その申請時点ですでに居住地がない場合は、この特例から除かれます。その場合は、原則として現在地である病院所在地のX市が実施責任を負います。厚労省問答では、この「3か月」は、入院日の属する月を含めて4か月目の入院日に対応する日までとされています。

また、入院前のY市の住居がなくなっていても、そこに本人の家財が保管されている、またはY市と同一管内に確実な帰来引受先があり、退院後必ずそこに居住する予定であれば、Y市が実施責任を負う場合があります。逆に、単に「昔Y市に住んでいた」「Y市に知人がいる」というだけでは、通常は居住地とは認定されません。

したがって、整理すると、

入院と同時、または入院後3か月以内に入院を原因としてY市の住居を失った
→ 原則としてY市が実施機関

入院後3か月を超えてから初めて申請し、申請時に帰る住居も確実な帰来先もない
→ 原則としてX市(病院所在地)が実施機関

となります。

そしてもう一つ重要なのは、「管轄が違う」と考えたことと、申請そのものを門前で受け付けないことは別問題だという点です。特にAさんが急迫した状況にある場合には、生活保護法19条2項により、居住地が別にあっても、現在地を管轄するX市が急迫状態が解消するまで保護を行う仕組みがあります。

つまり、今回のケースでは、Y市が正しいかX市が正しいかは「入院日・住居を失った日・申請日」の3つを確認して決めるのが正確です。「現在X市の病院にいる」という一点だけでY市が当然に実施責任を免れるわけではありません。

(A4)この場合、ポイントは**「Y市に帰る意思がないこと」だけではなく、Y市に生活保護法上の『居住地』が残っているか、そして入院患者についての特例に該当するか**です。

まず、生活保護上の「居住地」は、実際に生活の本拠として居住している場所をいいます。現に住んでいなくても、入院などが一時的で、一定期間後にその場所へ戻って生活を続ける予定がある場合は居住地として扱えることがあります。逆に、Y市の住居が事実上なくなっており、本人にもそこへ戻る意思・予定がないのであれば、通常はY市を「帰来先のある居住地」として扱うことは難しくなります。

ただし、入院患者には特例があります。Aさんが、入院と同時にY市の居住地を失った、または入院後3か月以内に入院を原因としてY市の居住地を失った場合は、現在Y市に戻る予定がなくても、局長通知第2の1(3)により、原則として入院前のY市が実施責任を負う場合があります。

一方で、その特例にも当たらず、申請時点でY市に実際の居住地も確実な帰来先もなく、AさんがX市の病院に入院しているのであれば、「居住地のない入院患者」として、原則は現在地である病院所在地のX市が実施機関になります。厚労省通知も、居住地のない入院患者については原則として医療機関所在地の実施機関が責任を負うとしています。

特に厚労省の問答では、入院前の居住地がなくなった場合、親族等の縁故先があるだけでは原則として居住地とは認定しないとされています。例外は、入院前の地域に家財が保管されている、または同一管内に確実な帰来引受先があり、本人が退院後必ずそこに住む予定である場合です。

したがって、Aさんのケースは次のように整理すると分かりやすいです。

Y市に戻る意思・予定がなく、Y市の住居も生活の本拠として消滅している
→ Y市を通常の「居住地」とする根拠は弱い。

そのうえで、

入院と同時、または入院後3か月以内に入院を原因としてY市の居住地を失った
→ 特例によりY市が実施機関となる可能性が高い

その特例にも該当せず、申請時点で居住地がない
→ 原則として現在地であるX市の病院所在地が実施機関

つまり、「Y市に帰る意思がないから必ずX市」というわけではなく、まず入院患者の3か月特例を確認し、それに当たらなければX市が原則、という順番で判断します。

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