(Q)保護申請者甲は恩給の受給権を持っていますが、1年前にこの恩給受給権を担保として借金をしました。現在、恩給証書は金融業者乙の手元にあり、乙は甲の恩給を借金の返済に充てています。このような場合、甲には収入が全くないものとして取り扱ってよいのでしょうか?甲の他の収入については、どのように考慮すべきでしょうか?

(A)はい。この質問は、本来は甲さんの収入である恩給が、借金返済のため金融業者に直接取られている場合、それでも生活保護上「甲さんの収入」として扱うのかという問題です。

簡単に言い換えると、

「甲さんは恩給を受け取る権利がありますが、その恩給は借金返済のため金融業者が受け取っています。甲さんの手元には1円も入りません。この場合、『甲さんには収入がない』として生活保護費を計算してよいのでしょうか?」

という質問です。

基本的な考え方

生活保護では、恩給・年金などの公的給付について、原則として実際の受給額を収入として認定します。また、一定期間ごとに支給される恩給・年金等については、原則として各月に分割して収入認定します。

今回重要なのは、恩給を借金の返済に充てているからといって、直ちに「恩給収入は0円」と考えるわけではないという点です。

生活保護は、原則として個人的な借金の返済を最低生活費に上乗せして保障する制度ではありません。そのため、「恩給10万円が入るはずだが、その10万円は全部金融業者への借金返済に回っているので、収入0円として10万円分多く保護費を支給する」という処理を当然に行うと、結果として生活保護費によって借金返済を補填する形になってしまいます。

甲さんの「他の収入」も確認します

また、恩給だけを見るのではありません。

福祉事務所は、甲さんについて、給与、年金その他の公的給付、仕送り・援助、預貯金など、利用可能な収入・資産を全体として調査します。厚生労働省の実施要領でも、収入認定に際して、社会保障給付、扶養義務者等からの援助、金銭収入などについて綿密に調査することとされています。

例えば、

最低生活費 12万円
恩給      8万円
その他の収入 2万円

という場合、単純に「恩給は金融業者が取っているから0円、その他収入2万円だけ」として処理できるとは限りません。

むしろ、恩給受給権を担保とした契約が現在どのような法的状態にあるのか、金融業者が恩給を受領している法的根拠は何か、甲さんが恩給を自分の生活費として利用できる状態に戻せないのかを確認する必要があります。

現在では特に注意が必要です

この事例は、古い生活保護の問答・事例を前提としている可能性があります。現在は、年金・恩給等の受給権について担保提供を禁止・制限する法制度が整備されているため、「金融業者が恩給証書を持って恩給を借金返済に充てている」という事実関係については、契約時期や恩給の種類を確認する必要があります。

したがって、この質問のポイントを一言でまとめると、**「恩給が借金返済のため金融業者に渡っているというだけで、甲さんを直ちに『無収入』として扱うのではない。恩給の受給権・担保契約の法的状況を確認するとともに、恩給を含む利用可能な収入と、甲さんのその他の収入・資産を調査したうえで保護の要否・程度を判断する」**ということです。

必要であれば次に、この事例に対応する生活保護の課長通知の「問○」を特定して、当時の公式回答と現在の取扱いを分けて説明できます。

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記事のお問い合わせ先 生活保護専門 神戸市の義足行政書士事務所