(Q1)住宅ローン付き住宅の取り扱いについて、どのような手続きが必要ですか?(Q2)住宅ローンの認可を受けるためには、どのような書類や条件が求められますか?
(A1)住宅ローンが残っている住宅を所有していても、生活保護の申請自体はできます。住宅ローンがあることだけを理由に、申請を受け付けないことはできません。
ただし、生活保護費から住宅ローンを返済すると、税金を原資とする保護費で個人の資産形成を助ける結果になるため、原則として認められません。厚生労働省の実施要領も、ローン完済前の住宅を保有したまま保護することは、原則として行うべきではないとしています。
必要な手続き
1.福祉事務所に住宅とローンを申告する
申請時に、住宅の所有状況と住宅ローンの残額を正確に申告します。
一般的には、次の資料を提出します。
- 不動産の登記事項証明書
- 固定資産税の納税通知書・課税明細書
- 住宅ローン契約書
- ローンの返済予定表
- 現在のローン残高証明書
- 毎月の返済額が分かる通帳
- 不動産業者などの査定書
- 抵当権の内容が分かる資料
福祉事務所は、住宅の処分価値、ローン残高、売却可能性、世帯の事情などを調査します。不動産については、固定資産税資料の提出や訪問調査などによって保有状況を確認するとされています。
2.住宅を保有できるか審査を受ける
福祉事務所は、主に次の点を確認します。
- 現在、その住宅に実際に住んでいるか
- 世帯人数に比べて広すぎたり高額すぎたりしないか
- 住宅を売却した場合に手元に資金が残るか
- ローン残高と住宅の査定額
- 毎月の返済額と残りの返済期間
- 高齢、障害、病気などにより転居が困難か
- 親族などがローンを支払えるか
- 売却後に別の住宅を確保できるか
住宅の価値が高い場合は、売却して、その代金を生活費に充てるよう求められることがあります。
一方、売却してもローンの返済でほとんど残らない、住宅の処分価値が低い、転居が著しく困難などの事情があれば、個別に検討されます。
住宅ローンの支払いはどうするのか
保護費からの返済は原則できない
生活扶助費や住宅扶助費を住宅ローン返済に充てることは、原則として認められません。
住宅ローンには、借入元金の返済、つまり住宅という資産を自分のものにしていく部分が含まれるからです。厚生労働省も、保護費からの住宅ローン返済は、生活保護制度の趣旨上、原則として認められないと説明しています。
なお、持ち家の場合、賃貸住宅の家賃に当たる通常の住宅扶助が、そのまま住宅ローン返済用として支給されるわけではありません。
親族などが返済する場合
親族などが住宅ローンを直接返済してくれる場合は、保護費から返済する場合とは事情が異なります。
ただし、
- 援助が継続的か
- 援助がローン返済だけに限定されているか
- その住宅を保有することが社会通念上適当か
- 親族の援助を本人の収入として扱う必要がないか
などについて、福祉事務所の判断を受ける必要があります。親族援助があるから必ず保有できるわけではありません。
売却を求められた場合
住宅の保有が認められない場合は、金融機関や不動産業者と相談し、売却手続きを進めます。
売却代金は、一般的に次の順序で処理されます。
- 仲介手数料や登記費用などの売却経費を支払う
- 抵当権者である金融機関へ住宅ローンを返済する
- 残額があれば、生活費として活用する
- 残額によって生活できる間は、保護の停止・廃止などを検討する
売却価格よりローン残高の方が高い「オーバーローン」の場合は、金融機関の同意を得て任意売却する方法などを検討します。
売却まで生活できない場合
住宅をすぐに売却できず、手持金もなく、食事や医療に困る場合でも、申請を取り下げる必要はありません。
生活保護法は、資産活用を原則としつつも、急迫した事情がある場合に必要な保護を行うことを妨げていません。
そのため、事情によっては、
- 売却活動を進めること
- 金融機関と返済停止や任意売却を協議すること
- 売却後に保護の要否を再判定すること
などを条件として、当面必要な保護が検討されます。
ローン返済が難しくなったときの対応
福祉事務所への相談と並行して、借入先の金融機関にも早めに相談します。
検討される方法としては、
- 返済期間の延長
- 一時的な返済額の減額
- 返済猶予
- 任意売却
- 売却後も残る債務の整理
- 法テラスを利用した債務整理・自己破産
などがあります。
福祉事務所の判断を受けずに、保護費から返済を続けたり、新たに借金をして返済したりすることは避けるべきです。
まとめ
住宅ローン付き住宅については、次の順序で進めます。
①住宅とローンを福祉事務所へ申告する
②住宅の査定額とローン残高を確認する
③住宅を保有できるか審査を受ける
④保有できなければ売却や任意売却を検討する
⑤ローン返済について金融機関と協議する
住宅ローンがあるだけで申請できないわけではありませんが、生活保護費からローンを返済しながら住宅を保有し続けることは、原則として認められません。世帯の健康状態、住宅価値、ローン残高、返済期間、売却可能性などを踏まえて、福祉事務所が個別に判断します。
(A2)生活保護との関係でいう「住宅ローンの認可」は、銀行からローンを借りる認可ではなく、通常は住宅ローンが残っている持ち家を保有したまま生活保護を受けられるかという審査を意味します。
住宅ローン返済中の住宅は、生活保護費が結果的にローン返済へ回り、個人の資産形成につながるため、原則として保有したままの生活保護適用は認められません。
ただし、ローン残額や返済期間がごくわずかであるなど、例外的な事情がある場合には、福祉事務所が個別に検討することがあります。
主に提出を求められる書類
福祉事務所によって多少異なりますが、一般的には次の資料が必要です。
| 書類 | 確認する内容 |
|---|---|
| 不動産の登記事項証明書 | 所有者、抵当権、土地・建物の内容 |
| 固定資産税納税通知書・課税明細書 | 固定資産評価額、土地・建物の状況 |
| 住宅ローン契約書 | 借入条件、返済期間、金利 |
| ローン残高証明書 | 現在の残債額 |
| 返済予定表 | 毎月の返済額、完済予定日 |
| 通帳の写し | 実際の返済状況、預貯金、収入 |
| 不動産査定書 | 現在の売却可能価格 |
| 金融機関との協議記録 | 返済猶予、減額、任意売却などの可否 |
| 世帯の収入・資産申告書 | 世帯全体の保護の必要性 |
| 親族援助に関する資料 | 親族が返済する場合の金額・期間・方法 |
不動産の保有状況については、固定資産税納税通知書の写しや、必要に応じた訪問調査などで確認するとされています。
審査で重視される条件
1.住宅が現に居住用であること
本人や家族が実際に住んでいる住宅であることが前提です。
空き家、別荘、賃貸用物件などは、原則として売却や収益化による資産活用が求められます。
2.住宅の価値が高すぎないこと
居住用住宅は保有を認められる場合がありますが、売却価値が居住用としての利用価値に比べて著しく高い場合は、売却が求められます。
福祉事務所は、査定額、世帯人数、住宅の広さ、地域の住宅事情などを総合的に判断します。
3.ローン残額・残存期間が小さいこと
例外的に保有を検討する場合には、特に次の点が重要です。
- ローン残額がごく少ない
- 完済までの期間が短い
- 毎月の返済額が少額である
- 保護費を使わずに返済できる確実な方法がある
残額や返済期間について、全国一律の明確な数値基準が公表されているわけではありません。
4.生活保護費から返済しないこと
住宅扶助や生活扶助を住宅ローン返済に充てることは、原則として認められません。
親族が金融機関へ直接返済するなど、保護費を使わない方法がある場合は個別検討の余地がありますが、援助の継続性や収入認定の問題も確認されます。
5.売却するより保有する方が合理的であること
例えば、次のような事情が検討材料になります。
- 売却価格がローン残高を下回る
- 売却しても手元に資金がほとんど残らない
- 高齢、重度障害、病気などで転居が著しく困難
- 転居によって通院、介護、通学に重大な支障が出る
- 親族が残債を短期間で完済できる
- 売却や転居に多額の費用がかかる
ただし、オーバーローンだから自動的に保有が認められるわけではありません。任意売却などの可能性も調査されます。
手続きの流れ
- 福祉事務所へ生活保護を申請する
- 住宅とローンの状況をすべて申告する
- 残高証明書や査定書などを提出する
- 福祉事務所が保有継続・売却・任意売却の可能性を調査する
- 金融機関とも返済猶予や売却について協議する
- 福祉事務所が保護の可否や住宅の取扱いを判断する
生活保護法上、利用できる資産は最低生活のために活用することが原則です。ただし、急迫した事情がある場合には、資産の処分が終わる前でも必要な保護を行うことが妨げられるわけではありません。
まとめ
住宅ローン付き住宅を保有したまま生活保護を受けるには、特別な「認可申請書」が全国一律にあるわけではありません。
福祉事務所へ、
- 住宅の価値
- ローン残高と返済期間
- 毎月の返済額
- 売却可能性
- 保護費を使わない返済方法
- 転居が困難な事情
を示す資料を提出し、個別審査を受けます。
基本原則は厳しく、ローン完済前の住宅を保有したまま生活保護を受けることは原則として認められません。例外が検討されるのは、残債や期間がわずかで、保護費を返済に充てず、保有継続が社会通念上やむを得ないと判断されるような場合です。
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