(Q1)目標工賃達成加算の算定要件のひとつとして、どのような条件が求められていますか?
例:目標工賃達成指導員配置加算の対象となる就労継続支援B型サービス費(I)および(II)を算定する指定事業所であること、各都道府県で作成される工賃向上計画に基づき自らも工賃向上計画を作成し、当該計画に掲げた工賃目標を達成すること、など。(Q2)工賃向上計画はどのように作成し、どのような内容を盛り込む必要がありますか?
(A1)結論
目標工賃達成加算を算定するためには、主に次の条件をすべて満たすことが必要です。
- 目標工賃達成指導員配置加算を算定していること
- 事業所独自の工賃向上計画を作成していること
- その計画に定めた工賃目標を実際に達成していること
- 工賃目標額が、国の定める最低水準以上であること
- 都道府県知事に必要な届出を行うこと
算定単位は、利用者1人につき1日10単位です。
1.目標工賃達成指導員配置加算を算定していること
最も重要な条件は、事業所が単に目標工賃達成指導員を配置しているだけでなく、実際に
目標工賃達成指導員配置加算を算定していること
です。
厚生労働省Q&Aでも、目標工賃達成加算を算定するには、目標工賃達成指導員配置加算を算定していることが要件であると明示されています。
したがって、指導員を置いていても、配置加算の届出や人員配置要件を満たしておらず、配置加算を算定していない場合は、目標工賃達成加算も算定できません。
2.対象となる基本報酬を算定していること
対象となるのは、目標工賃達成指導員配置加算の対象となる、
- 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)
- 就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)
を算定する事業所です。
ご質問の例では「サービス費(Ⅰ)および(Ⅱ)」とありますが、令和6年度の通知上は、
(Ⅰ)および(Ⅳ)
とされています。
3.事業所独自の工賃向上計画を作成すること
各都道府県が作成する工賃向上計画に基づいて、事業所も自らの工賃向上計画を作成する必要があります。
計画には、例えば次のような内容を盛り込みます。
- 現在の平均工賃月額
- 目標とする平均工賃月額
- 売上や生産活動収入を増やす取組
- 新商品の開発
- 販路拡大
- 作業工程の改善
- 利用者の技能向上
- 目標達成までの具体的なスケジュール
単に「工賃を上げる」という方針だけではなく、具体的な目標額と達成方法を定めることが必要です。
4.計画に掲げた工賃目標を達成すること
工賃向上計画を作成するだけでは算定できません。
計画に掲げた工賃目標を、実際の平均工賃月額が達成している必要があります。
例えば、工賃向上計画で、
令和7年度の平均工賃月額目標:月額25,000円
と定め、令和7年度の実績が、
平均工賃月額:月額25,500円
であれば、目標を達成したことになります。
一方、実績が24,500円の場合は、計画上の目標を達成していないため、その要件を満たしません。
5.目標額は自由に低く設定できない
目標工賃額は、事業所が自由に低く設定してよいわけではありません。
目標年度の工賃目標は、原則として次の額以上にする必要があります。
前年度の事業所の平均工賃月額
+
全国平均工賃月額の伸び額
ここでいう全国平均の伸び額は、
前々年度の全国平均工賃月額
-
前々々年度の全国平均工賃月額
によって求めます。
ただし、計算した額が前年度の事業所の平均工賃月額を下回る場合は、少なくとも前年度の事業所の平均工賃月額以上を目標にしなければなりません。
具体例
仮に、
- 前年度の事業所平均工賃月額:20,000円
- 前々年度の全国平均:18,000円
- 前々々年度の全国平均:17,500円
の場合、全国平均の伸び額は、
18,000円-17,500円=500円
です。
したがって、最低限必要な目標額は、
20,000円+500円=20,500円
となります。
この場合、事業所が目標を20,100円と設定して達成しても、国が求める最低水準に達していないため、加算の対象にはなりません。
6.都道府県知事への届出が必要
工賃目標を達成した場合は、必要な様式によって都道府県知事へ届出を行う必要があります。
つまり、実績として目標を達成しただけで、自動的に加算されるわけではありません。
一般的には、
- 工賃向上計画
- 目標工賃額
- 平均工賃月額の実績
- 目標達成を確認できる資料
- 体制等に関する届出書
などを準備し、指定権者の案内に従って提出します。
目標工賃達成指導員配置加算との違い
2つの加算は、次のように分けて考えると分かりやすいです。
| 加算 | 評価する内容 |
|---|---|
| 目標工賃達成指導員配置加算 | 工賃向上に取り組む指導員を配置していること |
| 目標工賃達成加算 | 指導員を配置したうえで、工賃目標を実際に達成したこと |
つまり、
配置加算は「取組体制」の評価
達成加算は「取組成果」の評価
です。
まとめ
目標工賃達成加算を算定するには、
- 対象となるB型サービス費(Ⅰ)または(Ⅳ)を算定している
- 目標工賃達成指導員配置加算を算定している
- 都道府県の計画に基づき、事業所の工賃向上計画を作成している
- 国の基準以上の工賃目標を設定している
- その工賃目標を実際に達成している
- 都道府県知事に届出をしている
ことが必要です。
簡単にいうと、**「指導員を配置し、適切な工賃目標を立て、その目標を実際に達成した事業所を評価する加算」**です。
(A2)結論
工賃向上計画は、就労継続支援B型事業所などが、都道府県の工賃向上計画を踏まえて、工賃をどこまで、どのような方法で引き上げるかを具体的に定める計画です。
全国共通の一律様式が必ず決められているわけではなく、実際には各都道府県や指定権者が示す様式・提出方法に従います。ただし、少なくとも次の内容を具体的に整理する必要があります。
- 現在の工賃実績
- 目標とする工賃額
- 現状の問題点
- 工賃を上げるための具体的な取組
- 実施時期と担当者
- 収支や売上の見込み
- 計画の進捗確認と見直し方法
厚生労働省は、工賃向上計画を単なる目標額の設定ではなく、経営改善、品質向上、生産効率向上、商品開発、販売戦略などを含む具体的な取組として位置付けています。
1.最初に現在の状況を把握する
まず、前年度までの実績を確認します。
主に確認するのは、次の内容です。
- 前年度の平均工賃月額
- 年間の工賃支払総額
- 生産活動の売上
- 材料費や外注費などの経費
- 作業ごとの利益
- 利用者数や利用日数
- 主な受注先・販売先
- 職員の配置や役割
例えば、売上が高くても材料費や外注費が多ければ、利用者に支払える工賃は増えません。
そのため、単に「売上を増やす」だけでなく、
どの作業が利益を生み、どの作業の採算が悪いのか
まで分析することが大切です。
2.工賃目標を具体的な金額で設定する
計画には、目標年度ごとの平均工賃月額を明記します。
記載例
| 年度 | 平均工賃月額の目標 |
|---|---|
| 令和7年度 | 20,000円 |
| 令和8年度 | 22,000円 |
| 令和9年度 | 24,000円 |
目標工賃達成加算を算定する場合は、自由に低い目標を設定できるわけではありません。
目標年度の工賃目標は、原則として、
前年度の事業所の平均工賃月額
+全国平均工賃月額の増加額
以上に設定し、その目標を実際の平均工賃月額が上回る必要があります。
具体例
仮に、
- 前年度の事業所平均工賃月額:18,000円
- 全国平均工賃月額の増加額:600円
であれば、目標工賃達成加算を意識した最低目標は、
18,000円+600円=18,600円
となります。
計画上の目標を18,300円にした場合は、その目標を達成しても、加算の目標額の要件を満たさない可能性があります。
3.現状の課題を具体的に書く
次に、工賃が上がらない原因を整理します。
例えば、次のような課題があります。
- 特定の取引先に依存している
- 受注単価が低い
- 材料費が高い
- 作業量が安定しない
- 自主製品が売れていない
- 販売場所が少ない
- 作業工程に無駄が多い
- 職員が営業活動をする時間がない
- 利用者の能力に合った作業が少ない
- 原価計算ができていない
「売上が少ない」という書き方だけではなく、
受注先が1社だけで、月によって仕事量が変動する
商品の原価を正確に計算しておらず、利益が少ない
販売先が事業所内だけに限られている
など、原因を具体的に書くと、その後の取組につなげやすくなります。
4.工賃を上げるための具体的な取組を決める
課題に対応した具体策を記載します。
売上を増やす取組
- 新しい取引先を開拓する
- 共同受注窓口を活用する
- 自治体や企業からの受注を増やす
- インターネット販売を始める
- 地域のイベントや販売会に参加する
- 新商品や新サービスを開発する
- 農福連携に取り組む
利益を増やす取組
- 商品ごとの原価を計算する
- 採算の悪い作業を見直す
- 材料の仕入先を変更する
- 販売価格や受注単価を見直す
- 廃棄や作業ミスを減らす
- 利益率の高い仕事を増やす
生産性を高める取組
- 作業工程を見直す
- 作業手順書を作成する
- 道具や機械を導入する
- 利用者の得意分野に応じて作業を分担する
- 職員の支援方法を統一する
- 利用者への技術研修を行う
厚生労働省の事業でも、経営改善、品質管理、生産効率向上、商品開発、販売戦略、共同受注、販路拡大などが工賃向上の具体的な取組として挙げられています。
5.担当者と実施時期を明確にする
「新規受注を増やす」だけでは、誰がいつ実施するのか分かりません。
次のように具体化します。
| 取組内容 | 担当者 | 実施時期 | 確認指標 |
|---|---|---|---|
| 新規企業への営業 | 目標工賃達成指導員 | 毎月5社 | 新規契約2社 |
| 商品の原価計算 | 管理者・職業指導員 | 6月まで | 全商品を計算 |
| 販売会への参加 | 職業指導員 | 年4回 | 売上20万円 |
| 作業工程の改善 | 生活支援員 | 9月まで | 作業時間10%短縮 |
このように、
誰が・いつまでに・何を・どれだけ行うか
を明記することが重要です。
6.収支の見込みを作成する
工賃は、原則として生産活動による収入から、生産活動に必要な経費を差し引いた金額を原資として支払います。
そのため、計画には可能な範囲で、次の見込みも盛り込みます。
- 年間売上見込み
- 材料費
- 外注費
- 販売経費
- 生産活動収支
- 工賃支払総額
- 1人当たりの平均工賃月額
具体例
| 項目 | 前年度実績 | 目標年度 |
|---|---|---|
| 売上 | 500万円 | 650万円 |
| 生産活動経費 | 250万円 | 280万円 |
| 工賃原資 | 250万円 | 370万円 |
| 平均工賃月額 | 18,000円 | 22,000円 |
目標工賃と売上・利益の見込みがつながっていることが大切です。
例えば、売上や利益の増加見込みがないのに、工賃だけを大幅に引き上げる計画は、実現可能性が低いと判断される可能性があります。
7.利用者への支援内容も盛り込む
工賃向上は、売上だけを増やせばよいというものではありません。
利用者の障害特性、希望、体調、能力などに配慮しながら進める必要があります。
例えば、次の内容を記載します。
- 利用者の得意・不得意に合わせた作業分担
- 作業技術を高める訓練
- 分かりやすい作業手順書の作成
- 補助具や治具の導入
- 安全管理
- 作業時間や休憩への配慮
- 一般就労を希望する利用者への支援
工賃向上によって利用者に過度な負担をかけたり、本人の希望を無視して作業を強制したりしないよう注意が必要です。
8.定期的に進捗を確認して見直す
計画は、作成して終わりではありません。
月ごと、四半期ごと、半年ごとなどに、次の内容を確認します。
- 売上は計画どおりか
- 経費は増えていないか
- 工賃目標に近づいているか
- 新規取引先を確保できたか
- 商品や作業の利益率は改善したか
- 利用者への負担が増えていないか
- 計画の変更が必要か
確認結果は、会議録や進捗管理表などに残しておくと、加算の届出や実地指導の際にも説明しやすくなります。
工賃向上計画の簡単な作成例
現状
- 前年度平均工賃月額:18,000円
- 主な作業:菓子製造、清掃
- 課題:販売先が少なく、菓子の廃棄が多い
目標
- 目標年度平均工賃月額:20,000円
- 年間売上:500万円から600万円へ増加
- 廃棄率:10%から5%へ削減
具体的な取組
- 地域の店舗3社に新規営業する
- 月1回の地域販売会に参加する
- 予約販売を導入して廃棄を減らす
- 商品ごとの原価を毎月確認する
- 利用者向けの製造手順書を作成する
進捗確認
- 毎月、売上・経費・廃棄率を確認する
- 3か月ごとに工賃向上会議を行う
- 目標との差が大きい場合は、取組内容を見直す
まとめ
工賃向上計画には、主に次の内容を盛り込みます。
- 前年度までの工賃・売上・収支の実績
- 目標年度の平均工賃月額
- 現在の課題とその原因
- 工賃を上げるための具体的な取組
- 担当者と実施時期
- 売上・経費・工賃原資の見込み
- 利用者への支援や作業環境の改善
- 進捗確認と計画の見直し方法
簡単にいうと、工賃向上計画は、
現在の工賃を確認し、目標額を定め、その目標を達成するための具体的な行動と収支見込みを示す計画
です。
なお、具体的な様式、計画期間、提出期限、添付資料は都道府県・指定権者によって異なる場合があるため、所在地の自治体が示す最新の様式を使用する必要があります。
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