(Q1)施設見学や体験入所の際、移送費を支給してもよいですか?(Q2)どのような場合に移送費の支給が認められますか?
(A1)結論
福祉事務所の指導により、施設への正式な入所手続の一環として行う施設見学や体験入所であれば、必要な移送費を支給して差し支えありません。
生活保護問答集では、被保護者が実施機関の指導を受けて施設見学・体験入所を行う場合について、「施設入所手続の一環として」移送費を認めてよいとされています。
支給対象になり得る条件
主に、次のような条件を満たす必要があります。
- 福祉事務所が施設入所の必要性を認めている
- 福祉事務所の指導・調整に基づく見学や体験入所である
- 入所先を決めるために必要な手続である
- 本人に交通費を負担できる収入や手持金がない
- 施設の送迎など、ほかの方法を利用できない
- 経済的で合理的な交通手段・経路を利用する
つまり、本人が個人的な希望だけで見学に行く場合ではなく、保護上必要な施設入所を具体的に進めるための移動であることが重要です。
支給される費用
原則として、公共交通機関を利用した場合の必要最小限の実費です。
例えば、
- 電車代
- バス代
- 船賃など
- 必要な場合の本人の往復交通費
が考えられます。
タクシー代については、身体状況や交通事情などから公共交通機関の利用が困難で、タクシーを使う必要性が認められる場合に限られます。移送費は、経済的かつ合理的な方法・経路による最小限度の実費とするのが基本です。
付添人の交通費
本人が一人で移動することが困難で、障害や病状などから付添いが必要と認められる場合は、付添人の交通費も対象となる可能性があります。
ただし、単に家族が一緒に行きたいというだけではなく、付添いの必要性を福祉事務所が確認します。
注意点
事前の相談・申請が必要
見学や体験入所へ行った後に領収書を提出しても、必ず支給されるとは限りません。
事前にケースワーカーへ、
- 施設名と所在地
- 見学・体験入所の日程
- 入所を検討する理由
- 利用する交通手段
- 付添いの必要性
- 施設による送迎の有無
を伝え、承認を受けておくことが大切です。
体験入所の利用料とは別
移送費は施設までの交通費です。体験入所中の室料、食費、利用料などは別の取扱いになります。
例えば、グループホーム等への体験入所で室料に相当する利用料を支払う必要がある場合には、一定の条件の下で住宅扶助として認定できる取扱いがあります。
まとめ
施設見学や体験入所の移送費は、
福祉事務所の指導に基づき、施設への入所手続を進めるために必要な見学・体験入所である場合
に、必要最小限の交通費を支給できます。
ただし、個人的な見学旅行や、入所手続と関係のない訪問まで対象になるわけではありません。必ず出発前に福祉事務所へ相談し、移送の必要性と交通手段の確認を受けることが重要です。
(A2)結論
生活保護の移送費は、保護上必要な移動であり、本人が交通費を負担する方法がほかにない場合に支給されます。
本人が自由に行きたい場所へ行くための交通費が、すべて対象になるわけではありません。福祉事務所が必要性を認めた移動であることが重要です。
移送費が認められる主な場合
1.引き取り先や保護施設へ移送する場合
例えば、
- 住居がなく野外で生活している人を、親族など確実な引き取り先へ移送する
- 保護の必要から、遠方の保護施設などへ移送する
場合です。
ただし、親族宅へ行きたいという本人の希望だけではなく、そこが確実な引き取り先であり、移送が保護上必要であることが必要です。
2.公的手続や施設入所手続などへ行く場合
福祉事務所の指示・指導を受けて、次の場所へ行く場合です。
- 年金や障害福祉サービスなど、他制度の給付手続
- 施設見学、体験入所、入所面接などの施設入所手続
- 就職の面接や採用手続
- 福祉事務所が必要と認めた検診
つまり、本人が勝手に出向くのではなく、福祉事務所の支援方針に基づく移動であることが基本です。
3.施設への入退所・通所の場合
障害者支援施設や職業能力開発施設などに、
- 入所する
- 退所する
- 通所する
場合も対象になります。
通所については、身体状況、距離、交通事情などから、徒歩や自転車など交通費のかからない方法では通所できない、または著しく困難であることが必要です。
4.求職活動や施設利用のための移動
福祉事務所の指示・指導に従い、本人が熱心かつ誠実に、
- 求人への応募
- 就職面接
- ハローワークでの手続
- 自立に必要な施設の利用
などを行った場合です。
ただし、どのような求職活動でも対象になるのではなく、福祉事務所が必要と認めた範囲に限られます。
5.転居や家財の運搬が必要な場合
福祉事務所が転居の必要性を認め、真にやむを得ない場合には、
- 本人や世帯員の交通費
- 家財の荷造り費
- 引っ越しの運搬費
- 住居を失った際の家財保管・引き取り費用
が対象になることがあります。
荷造り費や運搬費は、事前に福祉事務所が承認した必要最小限度の額に限られます。
6.出産や妊婦健診のための移動
出産や公費負担対象回数内の妊婦健診のために、
- 病院や助産所へ入院・入所する
- 退院・退所する
- 通院・通所する
場合も移送費の対象になります。
7.近親者の危篤・葬儀など
福祉事務所がやむを得ないと認めた場合には、
- 配偶者や一定範囲の親族が危篤となり、そのもとへ行く
- 親族の葬儀に参加する
- 引取人のいない親族の遺体・遺骨を引き取る
- 遺骨を納めに行く
ための交通費が対象になる場合があります。
すべての親族や法事が対象になるのではなく、親族関係や事情を個別に確認します。
8.依存症等からの回復に必要な活動
アルコールや薬物などの依存症がある人やその世帯員が、回復や社会復帰のために、
- 自助グループ
- 回復支援団体
- 精神保健福祉センター等の相談事業
- 一定の宿泊研修
を継続的に利用する場合です。
その活動が、世帯の自立に必要かつ有効であることが条件です。
9.通院・転院など医療上必要な移動
通院・入退院・転院などについては、医療扶助の移送費として別に判断されます。
例えば、
- 病状から徒歩や通常の公共交通機関を利用できない
- 医師の指示により緊急に転院する
- 必要な医療を受けられる最寄りの医療機関へ行く
- 医学的に付添人が必要である
といった場合です。
主治医の意見などを確認し、福祉事務所が医療上の必要性、通院先、回数、経路、交通手段を決定します。
支給される金額
支給額は、原則として次の範囲です。
- 必要最小限度の交通費
- 必要な場合の宿泊料・飲食物費
- 必要性が認められた付添人の交通費など
- 転居時の必要最小限度の荷造り・運搬費
公共交通機関を利用できる場合は、原則として電車やバスなどの最も経済的で合理的な方法が選ばれます。障害者割引などを利用できる場合は、割引後の運賃が基準になります。
注意点
原則として事前相談が必要です
移動する前に、ケースワーカーへ次の内容を伝える必要があります。
- 移動の目的
- 行き先と日程
- 使用する交通機関
- 必要な金額
- 付添いの有無
- 他の制度や送迎を利用できない理由
福祉事務所の決定前に利用した交通費や、承認された経路・交通手段と異なる費用は、原則として支給対象になりません。
ただし、救急搬送など事前申請ができない緊急の事情があり、事情がなくなった後に速やかに申請した場合は、事後申請が認められることがあります。
まとめ
移送費が認められるのは、簡単にいえば、
最低生活の維持、自立、医療、施設入所などのために移動が必要で、ほかに交通費を負担する方法がなく、福祉事務所がその必要性を認めた場合
です。
単なる私用、旅行、個人的な希望による訪問などは原則として対象になりません。事前に福祉事務所へ相談し、目的・経路・交通手段の承認を受けることが大切です。
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