(Q3)土地・家屋の見積価値の精査や処分の可否について、どのような基準で検討しますか?(Q4)世帯の構成員の転居状態や生活歴、近隣との関係はどのように考慮すべきですか?
(A3)はい。土地・家屋については、「評価額がいくらか」だけで判断するのではなく、実際に売却した場合の価値と、本当に処分できるのかを具体的に確認したうえで判断します。 厚生労働省の課長通知・問16では、ケース診断会議等で「見込処分価値の精査」と「処分の可能性」を検討事項として明示しています。
1.「見込処分価値」は、実際に売れる価格を重視します
ここでいう見込処分価値は、単なる固定資産税評価額や相続税評価額だけを意味するものではありません。
重要なのは、
「この土地・家屋を現在売却すると、実際にはどのくらいの金額になると見込まれるか」
という点です。
そのため、必要に応じて不動産業者の査定、周辺の取引事例、土地・建物の所在地・面積・築年数・接道状況・権利関係などを確認して、現実的な処分価値を精査することになります。
局長通知第3では、居住用の宅地・家屋について、原則として一定の範囲で保有を認めつつ、「処分価値が利用価値に比して著しく大きい」場合は例外として扱うという考え方が示されています。
2.価格が高くても「実際に処分できるか」を別に検討します
重要なのは、
「価値がある」=「すぐ売却できる」
ではないことです。
例えば、次のような事情があると処分が難しくなることがあります。
- 土地・建物が共有名義になっている
- 相続登記が終わっていない
- 抵当権などが設定されている
- 接道条件などに問題があり再建築が難しい
- 建物が著しく老朽化している
- 過疎地域などで買い手がほとんどいない
- 土地の形状や立地条件から市場性が低い
- 売却費用、解体費用などが多額になる
したがって、帳簿上や評価上は1,000万円の価値があっても、実際にはその価格では売れない、あるいは長期間買い手が付かないのであれば、その事情を考慮する必要があります。
3.「売った場合に手元にいくら残るか」も重要です
仮に1,000万円で売れるとしても、
売却価格=そのまま活用できる資産額
とは限りません。
例えば、売却に伴う諸費用や抵当権などの状況によって、実際に手元に残る金額が大きく異なることがあります。
そのためケース診断会議では、形式的な評価額だけでなく、現実に処分して活用できる経済的価値を見ることが重要になります。
4.「処分できる」だけでなく「処分させることが妥当か」も検討します
さらに、売却可能だからといって、それだけで「売却してください」と決定するわけではありません。
厚労省通知では、見込処分価値・処分可能性だけでなく、
世帯の転居可能性、健康状態・生活歴、近隣との関係、自立可能性、地域の低所得者の持ち家状況など
も合わせて検討するよう求めています。
例えば、高齢者が数十年間住み続けている家で、近隣から見守りや生活支援を受けており、転居によって生活が著しく不安定になる場合には、単純な市場価格だけでは判断できません。
具体例
たとえば、独居高齢者が所有する自宅について、
- 固定資産税評価額:1,200万円
- 不動産業者の査定:700万円程度
- 築50年
- 建物の市場価値はほぼない
- 売却には解体費等が必要
- 本人は30年以上居住
- 近隣住民による見守りがある
という場合、
「固定資産税評価額が1,200万円だから高額資産なので売却」
と機械的に判断するのではありません。
「実際の処分価値はいくらなのか」「本当に売却できるのか」「売却後の住居を確保できるか」「本人の生活にどのような影響があるか」まで検討したうえで、保有を認めるのか、活用を求めるのか、処分を求めるのかを総合判断することになります。
したがって、簡単にまとめると、土地・家屋の見込処分価値については実際の市場価値をできるだけ正確に把握し、さらに現実に売却可能かを確認する。そのうえで、転居可能性や健康状態、生活歴、地域との関係なども含めて、保有・活用・処分のどれが適切かをケース診断会議等で総合的に判断する、という考え方です。
(A4)世帯員の転居の可能性、生活歴、近隣との関係は、土地・家屋を「売却できるか」という経済面だけでなく、その家から移ることで本人・世帯の生活がどの程度影響を受けるかを判断するために考慮します。厚生労働省の課長通知第3・問16では、ケース診断会議等で「世帯の移転の可能性」「世帯員の健康状態・生活歴」「世帯と近隣の関係」を具体的な検討事項として挙げています。
例えば転居の可能性については、単に「別の家に引っ越せるか」だけではありません。高齢や障害、病気などにより転居が身体的・精神的に大きな負担にならないか、転居先となる賃貸住宅を実際に確保できるか、通院・介護・福祉サービスを継続できるかなどを含めて考えます。つまり、不動産に売却価値があっても、現実に転居が非常に困難であれば、その事情は保有の可否を判断するうえで重要になります。
生活歴については、その住宅や地域でどのくらい長く生活してきたか、その住宅が本人の生活基盤としてどの程度重要なのかを見ます。例えば、何十年も同じ住宅で暮らしてきた高齢者の場合、病院、買物先、介護サービス、知人など生活全体がその地域を中心に形成されていることがあります。このような場合には、単純に「売却して別の住宅に移ればよい」と判断するのではなく、転居によって生活が不安定になる可能性も含めて検討します。これは、通知が世帯事情を十分勘案し、長期的な視点で判断するよう求めているためです。
また、近隣との関係も重要です。例えば、近所の人が日常的に安否確認をしている、買い物を手伝っている、地域の民生委員や親族が近くにいる、といった事情があれば、それは本人の生活維持を支える社会的な基盤と考えられます。反対に、特に地域とのつながりがなく、転居しても生活への影響が小さい場合には、その点も判断材料になります。
具体例で考えると、80歳の一人暮らしの人が40年間同じ自宅に住み、近所の人から日常的な見守りを受け、かかりつけ病院も徒歩圏内にある場合には、自宅に一定の処分価値があるという理由だけで直ちに売却を求めるのではなく、転居後の生活への影響まで含めて慎重に判断する必要があります。
逆に、比較的若く健康で、転居可能な賃貸住宅も十分あり、現在の住宅への生活上・地域上の特別な依存もなく、しかも住宅の処分価値が著しく高い場合には、土地・家屋の活用・処分を求める方向の判断材料になり得ます。ただし、これも自動的に決まるものではなく、他の事情と合わせた総合判断です。
要するに、「転居できるか」「その家でどのような生活を積み重ねてきたか」「地域とのつながりが生活維持にどれほど重要か」を具体的に確認し、売却・転居によって本人の生活が著しく不安定にならないかを含めて、土地・家屋の保有・活用方針を総合的に判断するという考え方です。
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