(Q1)Aさんは腰痛のため働けない状態となり、生活保護を申請しました。Aさんの腰痛は3カ月程度で治癒する見込みで、治癒後はすぐに就職して生活保護を脱却するつもりです。Aさんの自宅は郊外にあり、通勤等に利用するため中古の軽自動車(処分価値ゼロ)を所有しています。この場合、Aさんは自動車を保有したまま生活保護の利用ができるのでしょうか。(Q2)Aさんに対する生活保護が開始され、自動車の処分指導がされることになりました。しかし、腰痛の治療が思いのほか長引き、治癒に5カ月を要しました。その後、Aさんはまじめに就職活動をしていたものの、就労先が見つからないまま保護開始後6カ月が経過しました。この場合、Aさんは引き続き自動車を保有したまま生活保護の利用を継続できるのでしょうか。

(A1)はい。このAさんのケースでは、一定の条件を満たせば、中古の軽自動車をすぐに処分せず、保有したまま生活保護を利用できる可能性が高いと考えられます。

厚生労働省の実施要領では、保護申請時に失業や傷病などで就労を中断していても、おおむね6か月以内に就労によって生活保護から脱却することが確実に見込まれ、かつ、自動車の処分価値が小さい場合には、自動車の処分指導を行わなくても差し支えないとされています。

今回のAさんは、腰痛が3か月程度で治癒する見込みで、治癒後はすぐ就職する予定です。また、所有しているのは処分価値ゼロの中古軽自動車です。そのため、「近い将来、就労のために再び利用することがほぼ確実で、売却してもほとんど資産価値がない」という事情が認められれば、処分を保留できる可能性があります。

ただし、もう一つ重要なのが維持費です。車検、税金、自賠責・任意保険、駐車場代などの維持費を負担できず、生活保護費を圧迫するような場合には、この例外的な保有は認められないことがあります。厚生労働省の通知でも、「維持費の捻出が困難な場合」はこの取扱いの対象外とされています。

また、「保有を認めること」と「自由に使用してよいこと」は別問題です。原則として、この制度は処分を一時的に保留する取扱いであり、求職活動期間中に自由に自動車を使用することまで当然に認めるものではありません。ただし、Aさんのように公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住んでいる場合には、求職活動に必要な範囲で自動車の使用を認めることができるとされています。

たとえば、Aさんが3か月後に腰痛が治り、ハローワーク等で求職活動を開始し、勤務先への通勤に車が必要となることが具体的に見込まれているのであれば、

「今売却しても価値はゼロに近い → 数か月後には就職・通勤のため必要になる → 売って後から買い直すより、そのまま保有した方が自立に役立つ」

という判断が成り立ちます。

なお、6か月経過しても就職できなかった場合でも、直ちに必ず処分となるわけではありません。就労を妨げる事情がなく、自立支援プログラムや自立活動確認書に基づいて具体的な求職活動を行っている場合には、保護開始からおおむね1年の範囲まで処分指導を保留できる場合があります。

要するに今回のケースは、**「3か月程度で治癒見込み」「治癒後すぐ就職して保護脱却を目指す」「将来の通勤に車が必要」「中古軽自動車で処分価値ゼロ」「維持費を無理なく確保できる」**という事情が確認できれば、車をすぐ処分させず、保有したまま生活保護を開始することが認められ得るケースです。

特に根拠となるのが、厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」の**問(第3の9の2)**です。現在の厚生労働省の申請案内でも、通勤用自動車を保有しながら求職している場合、処分しないまま生活保護を受けられることがあると明示されています。

(A2)はい、このケースでは、一定の条件を満たせば、保護開始からおおむね1年の範囲内で、自動車の処分指導を引き続き保留できる可能性があります。

厚生労働省の実施要領では、当初は「おおむね6か月以内に就労して保護脱却できる見込み」がある人について、処分価値の小さい自動車の処分指導を保留できます。さらに、6か月を経過しても保護を脱却できていない場合でも、就労阻害要因がなく、自立支援プログラムまたは自立活動確認書に基づいて、具体的に就職活動をしている人については、実施機関の判断により、保護開始からおおむね1年の範囲内で処分指導を行わなくても差し支えないとされています。

今回のAさんは、腰痛の治療に5か月かかったため、最初の6か月間の大部分は治療期間でした。しかし、その後は腰痛が治り、まじめに就職活動をしているとのことです。そのため、現在は就労を妨げる事情がなく、かつ自立活動確認書等に沿って具体的な求職活動をしているのであれば、「6か月経過したから直ちに車を処分しなければならない」とは限りません。

例えば、保護開始から6か月経過した時点で、

「腰痛は治癒している」
「現在は働ける状態である」
「ハローワークで職業相談を受けている」
「求人への応募や面接を継続している」
「就職すれば自動車を通勤に使用する見込みがある」

といった事情が確認できれば、福祉事務所は、さらに処分指導を保留して就職活動を続けてもらうという判断ができます。

ただし、これは自動的に1年間保有できるという意味ではありません。厚生労働省の監査基準でも、6か月経過後は、就労阻害要因の有無や、自立支援プログラム・自立活動確認書に基づく具体的活動が行われているかを実施機関が確認することとされています。

また重要なのは、「自動車を保有してよいこと」と「自由に自動車を使用してよいこと」は別だという点です。処分指導を保留しているだけの場合、原則として求職活動中の自動車使用まで認める趣旨ではありません。ただし、Aさんのように郊外に住み、公共交通機関の利用が著しく困難な地域で、求職活動に車が必要な場合には、求職活動に必要な範囲で使用を認めても差し支えないとされています。

そして、保護開始からおおむね1年が経過しても就職できず、通常の通勤用自動車の保有要件にも該当しない場合には、原則として速やかに処分指導を行うことになります。

したがって今回のケースは、「5か月間治療→治癒後は真面目に求職活動→6か月時点ではまだ就職できていない」という事情だけで直ちに車を処分する必要はなく、就労阻害要因がなく具体的な求職活動を続けていれば、保護開始からおおむね1年まで処分指導を保留できる可能性がある、と理解すると分かりやすいです。

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