(Q)相談段階で、扶養義務者の状況や援助の可能性を確認することは、保護申請権の侵害に当たりますか。また、「扶養義務者と相談しなければ申請を受け付けない」としたり、扶養が保護の要件であるかのように説明して申請を諦めさせたりすることは、申請権の侵害に当たりますか。

(A)はい。この質問は、生活保護の相談に来た人に対して、福祉事務所が親族から援助を受けられるか確認することは問題ないのか。また、親族への相談を生活保護申請の条件にしてもよいのかという質問です。

生活保護の申請を受け付ける際に、非常に重要な問題です。

① 結論

扶養義務者の状況や援助の可能性を確認すること自体は、申請権の侵害には当たりません。

しかし、次のような対応は、生活保護の申請権を侵害するおそれがあります。

  • 「親や兄弟に相談してからでないと申請を受け付けません」と言うこと。
  • 「親族から援助を受けられないことが確認できなければ申請できません」と説明すること。
  • 「親族に扶養義務があるので、生活保護は申請できません」と説明すること。
  • 親族から援助を受けられないことを証明させ、その結果が出るまで申請を受け付けないこと。
  • 扶養が生活保護の要件であるかのように説明し、本人に申請を諦めさせること。

これらについては、厚生労働省の課長通知第9・問2で明確に注意が示されています。

② 扶養義務者について確認することは問題ありません

例えば、生活に困っているAさんが福祉事務所に相談に来たとします。

担当者が次のように質問しました。

「ご両親やご兄弟はいらっしゃいますか?」

「現在、親族から生活費などの援助を受けていますか?」

「今後、親族から援助を受けられる可能性はありますか?」

このような質問は、生活保護の申請権の侵害には当たりません。

なぜなら、生活保護制度では、親族から実際に受けられる扶養について、保護に優先して活用することが定められているからです。

ただし、確認することと、申請を受け付けないことは別の問題です。

③ 「親族と相談してから申請してください」は問題になります

例えば、Aさんが生活保護を申請したいと申し出たところ、担当者から次のように言われたとします。

「お父さんやお母さんに援助してもらえるか確認してください。それが終わるまでは申請を受け付けられません。」

このような対応は、申請権の侵害に当たるおそれがあります。

生活保護法では、親族による扶養は生活保護に優先するとされています。

しかし、親族に援助をお願いすることや、援助を断られることは、生活保護を申請するための条件ではありません。

そのため、親族への相談が済んでいなくても、本人が申請を希望している場合には、申請手続きを進める必要があります。

④ 扶養が生活保護の要件であるかのように説明することも問題です

例えば、担当者が次のように説明した場合です。

「あなたには働いている息子さんがいますね。息子さんには扶養義務があるので、生活保護は受けられません。」

これを聞いたAさんが、生活保護の申請を諦めてしまったとします。

この場合も、申請権の侵害に当たるおそれがあります。

なぜなら、親族に扶養義務があることと、実際に扶養を受けられることは異なるからです。

例えば、息子に収入があっても、住宅ローンや子育てなどで経済的な余裕がなく、親を援助できない場合があります。

また、親族との関係が悪化していたり、長期間交流がなかったりする場合もあります。

したがって、扶養義務者が存在するという理由だけで、生活保護の申請を拒否することはできません。

⑤ 生活保護法ではどのように定められていますか?

生活保護法第4条第2項

この条文では、民法上の扶養義務者による扶養などは、生活保護に優先して行われるものと定めています。

ここで重要なのは、「扶養は保護に優先する」という規定であり、「扶養を受けなければ生活保護を申請できない」という規定ではないことです。

つまり、親族から実際に援助を受けられる場合には、その援助を考慮しますが、援助を受けられない場合には、生活保護の必要性を判断することになります。

厚生労働省・課長通知第9の問2

この通知では、相談段階で扶養義務者の状況や援助の可能性を聞くこと自体は問題ない一方、親族への相談を申請受付の条件にすることや、扶養を保護の要件であるかのように説明して申請を諦めさせることは、申請権の侵害に当たるおそれがあるとされています。

⑥ 福祉事務所の正しい対応とは?

実務上は、次のように区別する必要があります。

福祉事務所の対応申請権との関係
親族がいるか確認する問題ありません
親族から援助を受けているか確認する問題ありません
親族から援助を受けられる可能性を尋ねる問題ありません
親族に相談するまで申請を受け付けない申請権侵害のおそれがあります
親族の援助がないことを申請の条件にする不適切です
扶養が生活保護の要件であると誤って説明する不適切です
誤った説明によって申請を諦めさせる申請権侵害のおそれがあります

大切なのは、相談者に申請の意思がある場合には、その意思を尊重して申請手続きを進めることです。

扶養義務者の状況については、申請を受け付けた後に必要な調査を行うこともできます。


⑦ まとめ

今回の質問を簡単にまとめると、次のとおりです。

生活保護の相談段階で、扶養義務者の状況や援助の可能性を確認すること自体は、申請権の侵害には当たりません。

しかし、「親族と相談しなければ申請を受け付けない」としたり、扶養を受けることが生活保護の要件であるかのように説明し、本人に申請を諦めさせたりすることは、申請権の侵害に当たるおそれがあります。

特に重要なポイント

「扶養義務者の確認はできる。しかし、扶養義務者への相談を生活保護申請の条件にしてはいけない」ということです。

これは、生活保護の相談・申請受付において、福祉事務所が必ず守るべき重要な取扱いです。

参考資料

厚生労働省「生活保護を申請したい方へ」

厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」第9・問2

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