(Q1)重度の心身障害者の生活保持義務関係者が2人いる場合、そのうち1人の収入が基準額以上であれば世帯分離は可能ですか?(Q2)常時介護または監視を要する寝たきり老人等の世帯分離について、どのような基準で判断されますか?

(A1)結論からいうと、「生活保持義務関係者が2人いるうちの1人だけ収入が基準額以上だから、必ず世帯分離できる」というわけではありません。

世帯分離が認められるかどうかは、福祉事務所が次のような事情を総合的に判断します。

生活保持義務関係者とは

生活保護では、同じ世帯の家族のうち、他の家族を扶養できる立場にある人を「生活保持義務関係者」といいます。

ご質問の場合

例えば、

  • 重度心身障害者(本人)
  • 同居の父
  • 同居の母

の3人世帯で、

  • 父の収入 → 基準額以上
  • 母の収入 → 基準額未満

であった場合、

父が障害者本人を扶養できると判断されれば、原則として世帯全体で判断されるため、世帯分離が認められないことがあります。

一方で、

  • 父自身にも多額の医療費がある
  • 父母が実質的に別生計である
  • 障害者本人の介護状況等に特別な事情がある

などの場合は、世帯分離が認められる可能性があります。

障害福祉制度での世帯分離

重度心身障害者医療費助成や障害福祉サービスでは、所得判定のために世帯分離が問題になることがあります。

この場合も、

  • 同居しているだけで自動的に同一世帯とは限らない
  • 実際の生計が別であるか
  • 健康保険上の扶養関係
  • 住民票上の世帯状況

などを確認して判断されます。

わかりやすく言うと

生活保持義務関係者が2人いる場合、

❌ 「1人でも基準額以上の収入があれば必ず世帯分離できる」

ではありません。

⭕ 「収入だけでなく、実際に障害者を扶養しているか、生計が一緒か、世帯分離が妥当な事情があるかを総合的に判断する」

ということになります。

もしこの質問が生活保護制度の世帯分離についてなのか、重度心身障害者医療費助成制度(神戸市・兵庫県など)の所得判定についてなのかで回答が変わりますので、制度名を教えていただければ、実務上の取扱いまで詳しく説明できます。

(A2)生活保護における「常時介護または監視を要する寝たきり老人等の世帯分離」とは、同じ家に住んでいても、一定の条件を満たす場合に別世帯として取り扱う制度です。

わかりやすく言うと

通常、親子や夫婦が一緒に暮らしている場合は「同一世帯」として生活保護の収入や資産をまとめて判断します。

しかし、

  • 寝たきり状態である
  • 重度の認知症がある
  • 常時介護や見守りが必要である
  • 病院や施設への入退院・入退所を繰り返している
  • 日常生活を自分で行うことが困難である

などの事情がある場合には、その高齢者だけを別世帯(世帯分離)として扱うことがあります。

判断のポイント

福祉事務所は次のような点を総合的に判断します。

① 常時介護が必要か

  • 食事介助
  • 排泄介助
  • 入浴介助
  • 移動介助

などが日常的に必要な状態か。

② 常時監視が必要か

  • 認知症による徘徊
  • 火の不始末の危険
  • 昼夜を問わない見守りが必要

などがあるか。

③ 生計が実質的に独立しているか

  • 年金で本人の生活費を管理している
  • 施設利用料を本人が負担している

など。

④ 同一世帯として扱うことが不合理か
例えば、

  • 高齢者の年金があるため家族全員の保護が受けられない
  • 介護費用の負担が大きい
  • 実質的に別々に生活している

場合などです。

具体例

例えば、

89歳、要介護5、寝たきり、認知症ありの母親と無職の息子が同居しているケース

母親の年金:月10万円
息子の収入:なし

通常は同一世帯ですが、

  • 母親が寝たきりで常時介護が必要
  • 母親の年金は介護費用や施設費に充てられている

という事情があれば、母親を世帯分離し、息子だけを生活保護の対象として認めることがあります。

実務上の資料

世帯分離を求める際には、

  • 介護保険被保険者証
  • 要介護認定通知書
  • 主治医意見書
  • 診断書
  • ケアプラン
  • 施設利用契約書

などを提出すると判断材料になります。

行政書士としての実務ポイント

利用者や家族から相談を受けた場合は、

「要介護認定の内容」
「認知症の有無」
「介護の頻度」
「年金額」
「施設入所状況」

を確認し、

『常時介護・常時監視を要するため、生活保護実施要領に基づき世帯分離を希望する』

という申立書を福祉事務所へ提出するとよいでしょう。

特に、要介護4・5や重度認知症の方は世帯分離が認められる可能性が高くなります。

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