(Q1)出身世帯に対して扶養照会を実施する際、どのような点に注意すべきですか?(Q2)命令入所や措置入院等で入院している者との均衡を保つため、著しく不均衡と認められる場合には世帯分離をやめて同一世帯として保護を行うことも考慮すべきでしょうか?
(A1)生活保護の扶養照会について、わかりやすく説明すると次のようになります。
扶養照会とは
生活保護を申請した人に対し、福祉事務所が親や子ども、兄弟姉妹などの親族へ
「経済的な援助ができますか?」
と確認する手続きです。
出身世帯(実家など)への扶養照会で注意する点
① 必ず援助しなければならないわけではない
親族には扶養義務がありますが、生活保護法上、親族が援助できない場合は無理に援助する必要はありません。
例えば、
- 年金生活で余裕がない
- 自身も病気や障害がある
- 借金がある
- 生活に余裕がない
場合は「援助できない」と回答できます。
② DV・虐待・絶縁の場合は照会しないことがある
次のような事情がある場合は、福祉事務所に事前に説明することが重要です。
- DV被害
- 虐待被害
- 長年交流がない
- 照会により危険が生じる
このようなケースでは扶養照会を行わない、又は慎重に判断されます。
厚生労働省も、DVや虐待などの場合は照会を控えるよう示しています。
③ 扶養照会だけで生活保護は却下できない
親族が
「援助できません」
と回答しても生活保護の申請は可能です。
また、親族から返事がないことだけを理由に生活保護を却下することもできません。
④ 実際に援助できるかが重要
親族がいることと、援助できることは別問題です。
例えば、
- 高齢の両親
- 年金のみの生活
- 低所得世帯
- 障害や介護を抱えている世帯
であれば、扶養が困難と判断されることが多いです。
⑤ 申請時に事情を詳しく伝える
申請者が
- 家族と絶縁状態
- 過去に虐待を受けた
- 親族も生活が苦しい
- 連絡先が不明
などの事情を把握している場合は、申請時にケースワーカーへ説明しておくことが大切です。
行政書士として相談者に伝えるポイント
「扶養照会は親族に援助可能か確認する手続きですが、親族が援助できない場合は『援助できない』と回答できます。また、DVや虐待、長期間の絶縁など特別な事情がある場合は、福祉事務所へ事前に申し出ることで照会を行わない場合もあります。扶養照会の結果だけで生活保護申請が却下されることはありません。」
このように説明すると相談者にも理解してもらいやすいでしょう。
(A2)結論
精神科病院への措置入院や医療保護入院などで長期間入院している人については、原則として世帯分離が行われることがありますが、世帯分離によって生活保護費に大きな差が生じて不公平になる場合には、世帯分離を解除し、同じ世帯として保護することも検討すべきという考え方です。
具体例
例① 世帯分離した場合
- 母(在宅)
- 子(措置入院中)
世帯分離すると、
- 母 → 単身世帯の保護費
- 子 → 入院患者として別計算
となります。
例② 同一世帯にした場合
- 母と子を同一世帯として認定
すると、
- 世帯全体で最低生活費を計算
- 世帯分離した場合より適正な保護になる場合がある
ということです。
「著しく不均衡」とは?
例えば、
- 世帯分離した結果、在宅家族の生活が著しく苦しくなる
- 同じように入院している他の保護受給者と比較して不公平になる
- 退院後の生活設計に支障が生じる
などの場合です。
行政実務上の考え方
生活保護では、
世帯分離はあくまで保護の技術的な取扱いであり、機械的に行うものではない。
とされています。
そのため、
世帯分離によって著しい不公平や不均衡が生じる場合には、世帯分離を行わず同一世帯として取り扱うことも検討する。
という趣旨になります。
行政書士として相談を受けた場合
ケースワーカーから「入院したので世帯分離します」と言われても、
- 入院期間
- 退院見込み
- 家族関係
- 世帯分離による保護費への影響
を確認し、
「世帯分離による保護費の減額が著しく不均衡であるため、同一世帯としての取扱いを再検討していただきたい」
と福祉事務所へ説明する余地があります。
ただし、最終的には福祉事務所が個別事情を考慮して判断します。
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