(Q1)Aさん(30歳女性)は2歳の息子B君と2人世帯です。B君を保育所に預けてパート勤務をしていますが、収入が最低生活費に満たないため生活保護の申請を検討しています。Aさんのようなケースで、生活保護申請時に自動車の所有は認められるのでしょうか?(Q2)Aさんの自宅および勤務先は交通の便が良く、公共交通機関を利用して通勤することも可能ですが、B君を預けている保育所が郊外にあるため、Aさんは自動車を使って送迎と通勤をしています。このような事情がある場合、自動車の所有要件はどのように判断されますか?
(A1)Aさんのようなケースでも、一定の条件を満たせば、自動車を所有したまま生活保護を受けられる可能性があります。 ただし、「2歳の子どもがいて保育所への送迎に車を使う」という事情だけで、自動的に保有が認められるわけではありません。
生活保護では、自動車は原則として処分すべき資産とされています。一方で厚生労働省は、通勤用自動車について、たとえば「公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住んでいる」「勤務先への公共交通機関の利用が著しく困難」「深夜勤務などで公共交通機関を利用できない」といった場合には、例外的に保有を認めています。
今回の質問を簡単に言い換えると、
「母子家庭で、子どもを保育所に預けながら車で仕事に通っている場合、生活保護になったら車を手放さなければならないのか?」
ということです。
判断するときに特に重要なのは、Aさんの就労と子育ての状況を含めて、車が本当に必要なのかという点です。通勤用自動車については、①世帯状況から自動車通勤がやむを得ないこと、②その仕事が世帯の自立に役立っていること、③車の処分価値が小さく通勤に必要な範囲の車であること、④給与収入が車の維持費を大きく上回ること、などが判断材料になります。
また、ひとり親であることは重要な事情の一つです。 厚生労働省は、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する人について、求職活動のために車を使用できるケースの説明の中で、「ひとり親であること等の理由から、求職活動をするため保育所等に子どもを預ける必要があり、その送迎を行う場合」も含めてよいと明示しています。
したがって、Aさんの場合、たとえば**「保育所にB君を送る→そのまま勤務先へ行く→仕事後に保育所へ迎えに行く」という生活をしており、公共交通機関では勤務時間や保育所の送迎時間に間に合わない**などの事情があれば、自動車保有の必要性を判断する際の有力な事情になります。
反対に、駅やバス停が近く、公共交通機関を使って保育所への送迎と通勤が無理なくできる場合は、「子どもの送迎に便利だから」という理由だけでは、原則どおり車の処分を求められる可能性があります。
つまり、「ひとり親+保育所利用=必ず車を保有できる」ではありません。 Aさんの勤務時間、保育所の場所・送迎時間、勤務先までの距離、公共交通機関の状況、車の価値や維持費などを福祉事務所が総合的に判断します。
結論としては、Aさんが2歳のB君を保育所に預けて働き続けるため、自動車による送迎・通勤が現実的にやむを得ず、そのパート勤務が世帯の自立に役立っているなどの要件を満たせば、生活保護開始後も自動車の保有が認められる可能性があります。 単に「生活保護を申請したら必ず車を処分しなければならない」という取扱いではありません。
(A2)このケースでは、自宅と勤務先の間で公共交通機関が利用できるという理由だけで、直ちに自動車保有が否定されるわけではありません。 保育所への送迎事情も含めて、「世帯状況からみて自動車通勤がやむを得ないか」が判断されます。
厚生労働省の取扱いでは、通勤用自動車を認める要件の一つとして、世帯状況から自動車による通勤がやむを得ず、その勤務が世帯の自立の助長に役立っていることを挙げています。さらに、車の処分価値が小さいことや、給与収入が維持費を大きく上回ることなども必要です。
今回のように、
自宅 → 保育所 → 勤務先
勤務先 → 保育所 → 自宅
という移動が必要で、保育所が公共交通機関では利用しにくい場所にある場合が問題になります。
この点について厚生労働省はかなり具体的な考え方を示しています。自宅から勤務先まで公共交通機関が確保されている場合には、まず、公共交通機関を利用できる保育所への転入所を検討するのが基本です。
ただし、それで終わりではありません。たとえば、その自治体の保育所事情から、
- 公共交通機関で利用できる別の保育所がない
- 別の保育所は存在しても、空きがなく転園が極めて困難
- 子どもの状況などから、現在の保育所から転園させることが適当ではない
- 保育所の送迎時間と勤務時間の関係から、公共交通機関では就労継続が現実的に困難
といった事情があれば、現在の保育所への送迎を含めて自動車が必要であると判断し、保有を認める余地があります。 厚生労働省も、公共交通機関を利用可能な保育所への転入所が「極めて困難」である場合や、福祉事務所が転入所を適当でないと判断する場合には、一定の要件のもと自動車保有を認めて差し支えないとしています。
したがって、Aさんの場合は、「勤務先まで電車やバスで行けるから車は認めない」と単純に判断するのではなく、2歳のB君の保育所送迎を含めた生活全体で判断することになります。
たとえば、現在の保育所しか空きがなく、朝7時30分に車でB君を預ければ8時30分の勤務開始に間に合うものの、バスを乗り継ぐと間に合わない、さらに別の保育所も満員で転園できない、という事情なら、自動車保有を認める方向の重要な事情になります。
反対に、自宅近くに空きのある保育所があり、そこへ転園すれば電車・バスで問題なく通勤できるのであれば、まずその方法を検討することになり、自動車保有が認められにくくなります。
要するに、この質問は、
「会社まで公共交通機関で行けても、子どもの保育所送迎のために車が必要なら、生活保護でも車を持てるのか?」
というものです。
答えは、**「可能性はある。ただし、まず公共交通機関を利用できる保育所への転園などを検討し、それができない・極めて困難・適当でない場合に、保育所送迎を含めた世帯事情から車がやむを得ないかを判断する」**となります。
つまり、このケースでは**「自宅と勤務先の交通事情」だけでなく、「保育所の場所・転園可能性・勤務時間・送迎時間」まで含めた総合判断**がポイントです。
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