(Q1)保護の実施機関の指導や指示により動産または不動産を売却して得た金銭のうち、自立更生に当てられる額を収入として認定しない場合とは、どのような場合ですか?(Q2)活用すべき動産や不動産を所有しながら、急迫等の理由で保護を開始し、その後に売却を指導または指示された場合でも、売却による収入を認定しない取扱いが認められるのでしょうか?

(A1)はい。この質問は、生活保護を受けている人が、福祉事務所の指導や指示によって自動車や土地・建物などの財産を売却した場合、その売却代金を生活保護の収入として認定しなくてもよいのは、どのような場合かという質問です。

① 結論

福祉事務所の指導・指示により動産や不動産を売却した場合、その売却代金のうち、自立更生のために必要と認められる金額については、収入認定から除外できる場合があります。

ただし、売却代金の全額が自動的に除外されるわけではありません。

重要なのは、売却したお金を何に使うのか、そして、その使い道が自立更生のために必要かどうかです。

② 動産・不動産とは?

まず、言葉の意味を説明します。

区分具体例
動産自動車、バイク、貴金属、家財道具など
不動産土地、住宅、建物など

例えば、生活保護受給者が所有している自動車について、福祉事務所から売却するよう指導を受けた場合などが該当します。

③ どのような場合に収入認定から除外できますか?

例えば、次のような場合が考えられます。

【事例1】就職するための費用に充てる場合

生活保護受給者が、福祉事務所の指導により自動車を売却し、30万円を得たとします。

その人が就職するために資格取得を予定しており、講習費用などに20万円が必要な場合です。

福祉事務所がその必要性を認めれば、20万円について収入認定から除外できる可能性があります。

ただし、残りの10万円は別途判断が必要です。

【事例2】生業を始めるための費用に充てる場合

所有していた土地を売却し、その代金の一部を、仕事を始めるための設備購入費に充てる場合です。

事業計画が具体的で、設備の購入が自立更生に必要と認められれば、その必要額について収入認定から除外することが考えられます。

【事例3】生活の安定に必要な費用に充てる場合

福祉事務所の指導によって不動産を売却し、転居が必要になった場合です。

売却に伴う必要な経費や、生活再建のために必要な費用について、制度上認められる範囲で収入認定から除外できるか検討します。

④ 収入認定から除外するための条件

実務上は、主に次の点が重要です。

  1. 福祉事務所の指導・指示による売却であること
    本人が自由に売却した場合とは、取扱いが異なることがあります。
  2. 自立更生のための具体的な目的があること
    就職、資格取得、生業開始など、何に使うのかが明確であること。
  3. 必要な金額が妥当であること
    見積書などにより、必要額を確認できること。
  4. 実現可能な計画であること
    単に将来使う予定というだけでなく、実行できる見通しがあること。
  5. 福祉事務所が収入認定除外の可否を判断すること
    売却代金のうち、どの範囲を除外できるかを個別に確認すること。

⑤ 注意点

ここで特に重要なのは、財産を売却して得たお金は、原則として生活保護上の収入として取り扱われるという点です。

生活保護では、利用できる資産を最低生活の維持に活用することが基本となります。

そのため、売却代金を本人が自由に使えるわけではありません。

また、自立更生のための費用として認められるかどうかは、財産の種類、売却に至った事情、費用の使途などによって異なります。

⑥ まとめ

今回の質問を簡単にまとめると、次のとおりです。

生活保護の実施機関の指導・指示によって動産や不動産を売却した場合、その売却代金のうち、自立更生のために必要と認められる金額については、収入認定から除外できる場合があります。

ただし、売却代金の全額が除外されるわけではなく、具体的な使途や必要性について福祉事務所が判断します。

つまり、「福祉事務所の指導で財産を売却した場合でも、自立更生に必要な部分は、一定の条件の下で収入認定から除外できる」ということです。

(A2)はい。今回の質問は、生活保護を開始した時点では売却できなかった財産を、保護開始後に福祉事務所の指導で売却した場合、その売却代金を収入認定から除外できるのかという問題です。

① 結論

はい。急迫等の理由で生活保護を開始し、その後、福祉事務所の指導・指示によって動産や不動産を売却した場合でも、売却代金のうち自立更生に必要と認められる額について、収入認定から除外する取扱いが認められる場合があります。

ただし、重要な注意点があります。

収入認定から除外できることと、生活保護法第63条による保護費の返還が不要になることは、同じではありません。

② 具体例

例えば、次のようなケースです。

Aさんは、土地を所有していますが、すぐに売却できず、生活費もありません。

そのため、福祉事務所は急迫した状況を考慮して生活保護を開始しました。

その後、福祉事務所から土地を売却するよう指導を受け、売却代金として100万円を受け取りました。

Aさんは、そのうち20万円を就職に必要な資格取得費用に充てたいと希望しています。

この場合、次のように判断します。

項目取扱い
土地の売却代金100万円原則として資力の活用対象
資格取得費用20万円自立更生に必要な費用として認められるか検討
残り80万円原則として収入認定や返還の対象となるか検討

ただし、この例で20万円が必ず除外されるという意味ではありません。

③ 特に注意したい生活保護法第63条

生活保護法第63条では、資力があるにもかかわらず、急迫等の事情で保護を受けた場合、受けた保護金品に相当する金額の範囲内で、福祉事務所が定める額を返還することとされています。

そのため、保護開始後に土地などが売却できた場合には、売却代金について第63条による返還の検討が必要になることがあります。

また、返還額を決定する際にも、自立更生に必要な費用をどのように取り扱うかが問題になります。

つまり、次の2つは分けて考える必要があります。

  • 収入認定の問題:売却代金を、その月の生活保護費の計算上、収入として扱うか。
  • 第63条の返還の問題:既に支給された生活保護費について、いくら返還する必要があるか。

④ 福祉事務所が確認するポイント

実務上は、主に次の事項を確認します。

  1. 保護開始時に、財産を直ちに活用できなかった事情があるか。
  2. 保護開始後、福祉事務所の指導・指示によって売却したものか。
  3. 売却代金のうち、自立更生に必要な金額はいくらか。
  4. 自立更生の計画が具体的で、実現可能か。
  5. 生活保護法第63条による返還対象となる金額はいくらか。

⑤ まとめ

今回の質問を簡単にまとめると、次のとおりです。

急迫等の理由で生活保護を開始し、その後、福祉事務所の指導・指示によって財産を売却した場合でも、自立更生に必要と認められる金額については、収入認定から除外できる場合があります。

ただし、保護開始時から所有していた財産を売却した場合には、生活保護法第63条による返還の問題が生じるため、別途検討が必要です。

重要なのは、「収入認定から除外できるか」と「既に受けた保護費を返還する必要があるか」を区別して判断することです。

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