(Q1)保護を要する者が直系血族の世帯に転入した場合、その者のみを世帯分離して保護を受けることは可能ですか?(例:母親が子の世帯に身を寄せた場合など)(Q2)世帯分離の取扱いは、どのような場合を想定して設けられているのですか?(例:身寄りのない孤児を引き取る場合など)

(A1)はい、可能な場合があります。

ただし、単に住民票上や同じ家に住んでいるという理由だけで自動的に世帯分離が認められるわけではありません。

基本的な考え方

生活保護では、原則として同じ家に住んでいる親子などの直系血族は「同一世帯」として扱われます。

そのため、

  • 母親が子どもの家に転入した
  • 父親が娘の家で同居を始めた

という場合は、まず親子を一つの世帯として生活保護の要否が判断されます。

世帯分離が認められるケース

例えば、

  • 母親に年金しか収入がなく生活に困窮している
  • 子ども世帯も生活に余裕がなく母親を扶養できない
  • 家計が完全に別になっている
  • 食費や生活費をそれぞれ管理している

などの事情がある場合は、

母親のみを世帯分離して生活保護を受給することが認められることがあります。

具体例

例① 世帯分離が認められる可能性が高い

  • 母(75歳)
    • 年金月4万円
    • 預貯金なし
  • 子夫婦
    • 夫婦とも低所得
    • 子ども2人

この場合、子世帯に十分な扶養能力がなければ、

母親のみ世帯分離して保護開始

となることがあります。

例② 世帯分離が認められにくい

  • 母(75歳)
    • 年金4万円
    • 年収800万円
    • 持家

この場合、

福祉事務所から

「まず子が扶養してください」

と判断される可能性が高くなります。

実務上のポイント

福祉事務所は次の点を確認します。

  • 家計が別か
  • 食事が別か
  • 光熱費負担はどうか
  • 扶養能力があるか
  • 同居の経緯
  • 将来的な生活設計

その結果、

「同居はしているが実質的に独立した生活をしている」

と認められれば世帯分離が可能です。

行政書士として相談を受けた場合

相談者には、

  1. 同居の理由
  2. 子ども世帯の収入状況
  3. 母親の収入・資産
  4. 家計管理の方法
  5. 扶養が困難な事情

を整理したうえで、

「同居しているが扶養は困難であり、家計も独立している」旨の申立書を福祉事務所へ提出する

よう助言するとよいでしょう。

なお、生活保護制度上は「住民票の世帯分離」と「生活保護上の世帯分離」は別の概念であり、住民票を分けていても保護上は同一世帯と判断されることがあります。逆に、同じ住居でも保護上の世帯分離が認められる場合があります。

(A2)生活保護における「世帯分離」は、同じ家に住んでいても、特別な事情がある場合に別世帯として取り扱う制度です。

本来、生活保護は「世帯単位の原則」により、同居している家族は一つの世帯として収入や資産をまとめて判断します。しかし、それでは実情に合わないケースがあるため、例外として世帯分離が認められています。

主な想定例

① 長期入院・施設入所している場合

例えば、

  • 親が特別養護老人ホームに入所している
  • 子どもが長期間病院に入院している

このような場合は、生活費が別々に必要となるため世帯分離が認められることがあります。

② 高齢者や障害者を親族が引き取った場合

例えば、

  • 身寄りのない高齢者を親族が引き取った
  • 障害のある兄弟を同居させた

しかし、引き取った親族に十分な扶養能力がない場合は、保護を受ける人だけを世帯分離して生活保護を適用することがあります。

③ 児童を引き取った場合

ご質問の例のように、

  • 両親が死亡した孤児を祖父母が引き取った
  • 親が行方不明になった子どもを親族が養育している

場合でも、祖父母等に養育する経済力がないときは、児童のみを保護対象として世帯分離が検討されることがあります。

④ 就労している家族がいる場合

例えば、

  • 高齢の母が生活保護を受給している
  • 同居の息子は働いているが収入が少なく母を扶養できない

このような場合に、母だけを保護対象とするため世帯分離が認められることがあります。

⑤ 社会福祉施設等に入所している場合

  • 障害者支援施設
  • 児童養護施設
  • 救護施設

などに入所している人について、実態に応じて世帯分離が行われることがあります。


わかりやすく言うと

世帯分離は、

「一緒に住んでいるからといって、必ずしも生活を共にしているとは言えない場合」

「同居親族に扶養能力がないため、その人の収入だけで保護の可否を判断すると不合理な場合」

に認められる例外的な取扱いです。

したがって、単に

  • 保護費を増やしたい
  • 家族の収入を計算に入れたくない

という理由だけでは認められません。

行政書士として生活保護相談を受ける際は、

  1. 同居の経緯
  2. 生計が本当に別か
  3. 扶養能力の有無
  4. 入院・施設入所などの特別事情

を整理して福祉事務所に説明することが重要です。特に、高齢者・障害者・児童の保護案件では世帯分離の可否が保護開始に大きく影響することがあります。

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