(Q3)事業用品等の保有基準は、生活用品と同じように普及率で判断できますか?その理由は何ですか?(Q4)事業用資産の利用価値や判断基準を決める際、どのような点に注意すべきですか?

(A3)事業用品等の保有基準を、生活用品と同じように普及率だけで判断することは適切ではありません。

事業用品は、地域の普及率ではなく、主に次の点によって判断されます。

  • その事業に本当に必要か
  • 事業の種類や地域事情に見合った規模か
  • 実際に収入を得るために使われているか
  • その地域の低所得の事業者と比べて過大でないか
  • 売却価値が利用価値より著しく高くないか

厚生労働省の実施要領でも、事業用設備、機械器具、商品、家畜については、営業種目や地理的条件などから、地域の低所得世帯との均衡を失わない程度であることなどを基準としています。

なぜ普及率では判断できないのか

1.事業によって必要な物が大きく異なるため

生活用品は、冷蔵庫や洗濯機のように、多くの世帯で共通して使われます。そのため、地域でどの程度普及しているかが、必要性を判断する一つの参考になります。

一方、事業用品は業種によって全く異なります。

例えば、

  • 電気工事業者の工具や軽バン
  • 農家の耕運機
  • 美容師の椅子や施術設備
  • 大工の電動工具
  • 飲食店の調理設備

などは、その事業をしていない一般世帯にはほとんど普及していません。

したがって、一般世帯への普及率が低いからといって、不要な資産とはいえません。

2.同じ品物でも事業によって必要性が変わるため

例えば、自動車でも、一般家庭の生活用自動車と、訪問営業や運搬に必要な事業用車両とでは、判断する目的が違います。

事業用品では、その物がなければ仕事ができないか、収入を得られないかが重要です。

3.事業用品は収入や自立に直接関係するため

生活保護では、本人の収入増加や自立につながる資産については、単に売却させるのではなく、保有して利用する方が適切な場合があります。

厚生労働省の基準では、現に最低生活を維持するために利用しているものや、おおむね1年以内、事業用設備についてはおおむね3年以内に利用して、世帯収入の増加に著しく貢献する見込みがあるものは、保有を認める対象とされています。

事業用品の具体的な判断方法

例えば、個人の電気工事業者が中古の軽バンと一般的な電動工具を所有している場合、地域の一般世帯への普及率では判断しません。

次のように判断します。

確認事項判断内容
仕事への必要性車や工具がなければ仕事ができないか
事業規模小規模事業に見合った台数・性能か
使用状況現在、実際に仕事で使っているか
収入への貢献その設備で継続的に収入を得ているか
現在の価値中古品として高額で売却できるか
代替可能性より安価な物に替えても仕事を続けられるか
維持費保険料、税金、修理費が過大でないか

保有が認められやすい例

  • 仕事に不可欠な通常価格の工具
  • 実際に商品の運搬に使う中古の軽自動車
  • 営業に必要な小規模な機械設備
  • 適正な数量の商品在庫
  • 売却価値は低いが、仕事には十分使える設備

これらは、売却するよりも使い続けた方が収入や自立に役立つため、保有が認められやすいと考えられます。

保有が認められにくい例

  • ほとんど使用していない複数台の車両
  • 小規模事業には不相応な高級車や大型設備
  • 必要量を大きく超えた商品在庫
  • 収入をほとんど生まない高額な機械
  • 安価な設備で代替できる高額設備
  • 処分価値が事業上の利用価値より著しく高い物

このような場合には、全部または一部の売却を求められる可能性があります。

まとめ

生活用品については、世帯での必要性や地域での普及状況が参考になります。

しかし、事業用品は業種ごとに必要な物が異なるため、一般世帯への普及率を機械的に当てはめることはできません

事業用品については、

その事業に必要で、規模が適正であり、実際に収入や自立に役立ち、地域の低所得の事業者と比べても過大でないか

という観点から、個別に判断します。

(A4)事業用資産の利用価値を判断するときは、単に「仕事で使っている」「購入時に高額だった」というだけではなく、

その資産を保有して使い続けることが、売却するよりも世帯の生活維持や自立に役立つか

を中心に判断します。

生活保護では資産の売却活用が原則ですが、現に最低生活の維持に使われ、処分するより保有する方が自立に効果的な資産は、保有が認められる場合があります。

判断の際に注意する点

1.事業に本当に必要な資産か

まず、その設備や機械、車両、商品などが、事業を続けるために欠かせないかを確認します。

例えば、電気工事業者の工具や軽バン、農家の農機具、美容業の施術設備などです。事業との関係が薄いものや、ほとんど使っていないものは、保有の必要性が低いと判断されます。

2.事業規模に見合っているか

事業に必要であっても、台数、性能、価格が過大でないことが必要です。

小規模な個人事業であるのに、高額な大型機械や車両を複数所有している場合は、必要最小限度を超える部分の処分を求められる可能性があります。

判断に当たっては、営業の種類、地域の事情、同じ地域の低所得の事業者が通常保有している設備などと比較します。

3.実際に収入を生んでいるか

その資産を使って、現にどの程度の売上や利益を得ているかが重要です。

売上だけではなく、

  • 材料費
  • 燃料費
  • 修理費
  • 保険料
  • 税金
  • 保管費

などを差し引いた後、実際に世帯の生活にどれだけ貢献しているかを確認します。

高額な設備を使っていても、維持費が収入を上回っている場合は、利用価値が高いとは評価されにくくなります。

4.将来の収入増加が具体的に見込めるか

現在は十分な収入がなくても、近い将来に使用し、収入増加に大きく役立つことが具体的に見込まれる場合は、保有が認められることがあります。

ただし、「そのうち仕事が増えると思う」という抽象的な説明だけでは不十分です。契約予定、受注見込み、事業計画、資格取得予定など、客観的な根拠が必要です。

5.処分価値と利用価値を比較する

特に重要なのが、売却した場合の価格と、事業に使い続ける価値との比較です。

例えば、中古工具として売っても数万円にしかならない一方、その工具を使えば継続して仕事ができる場合は、保有する方が合理的です。

反対に、高額で売却でき、より安価な設備に買い替えても事業を続けられる場合は、処分価値が利用価値を著しく上回るとして、売却や買替えを求められる可能性があります。

6.より安価な代替手段がないか

次のような代替方法も検討されます。

  • 高額な機械を売却して中古品へ買い替える
  • 使用頻度の低い設備をレンタルする
  • 複数台の車両を1台に減らす
  • 外注によって設備を持たずに事業を続ける
  • 不要な在庫だけを処分する

事業そのものをやめるか、すべて保有するかという二択ではなく、必要最小限度まで縮小する方法も検討します。

判断に必要な資料

福祉事務所には、次のような資料を提出すると判断しやすくなります。

  • 確定申告書、収支内訳書、帳簿
  • 売上、経費、利益の明細
  • 設備・機械・車両・在庫の一覧
  • 購入価格、取得時期、現在の査定額
  • 実際の使用頻度
  • 維持費や修理費
  • 受注書、契約書、今後の事業計画
  • 安価な代替設備では対応できない理由

まとめ

事業用資産の利用価値は、次の点を総合的に判断します。

事業に不可欠か、規模が適正か、実際に利益を生んでいるか、将来の自立に役立つか、売却価格が高すぎないか、安価な代替手段がないかという点です。

最も大切なのは、資産の購入価格ではなく、現在その資産を使い続けることが、世帯の生活維持と生活保護からの自立にどれだけ具体的に役立っているかです。

記事のお問い合わせ