(Q1)事業用資産の保有について、どのような基準で「当該地域の低所得世帯との均衡を失することにならない」と判断しますか?(Q2)生活用品の保有基準はどのように判断されますか?
(A1)「当該地域の低所得世帯との均衡を失することにならない」とは、簡単にいうと、
生活保護を受けていない地域の低所得世帯が通常保有している事業用資産と比べて、著しく高価・大規模・ぜいたくなものではないか
という基準です。
全国一律の金額や台数の上限があるわけではなく、事業の種類、地域事情、資産の規模・価格、事業収入への必要性などを総合的に判断します。
厚生労働省の実施要領では、事業用設備、機械器具、商品、家畜について、営業種目や地理的条件などからみて、地域の低所得世帯との均衡を失わない程度であり、現に最低生活の維持に使われているなどの場合は、保有を認めるとしています。ただし、処分価値が利用価値より著しく大きいものは除かれます。
判断される主なポイント
1.その事業に本当に必要な資産か
事業を続けるために欠かせない設備や道具であるかを確認します。
例えば、大工の工具、農家の農機具、飲食店の調理器具、美容師の設備、配達業の車両などです。
単に「仕事で使うことがある」という程度ではなく、その資産がなければ事業収入を得ることが難しいかが重要です。
2.規模や性能が過大ではないか
事業内容に対して、設備が大きすぎたり高級すぎたりしないかを確認します。
例えば、小規模な個人事業に対して、
- 必要以上に高価な機械
- 使用していない複数台の車両
- 過剰な在庫
- 事業規模に見合わない大型設備
などを保有している場合は、低所得世帯との均衡を失すると判断される可能性があります。
3.地域の同種事業者と比べて一般的か
同じ地域で、同じような規模の事業を営む低所得者や零細事業者が通常使用している設備と比較します。
都市部と農村部、積雪地域と温暖地域などでは、必要な設備が異なるため、地域事情も考慮されます。
例えば、公共交通機関がほとんどない地域では事業用車両の必要性が高く、都市部とは異なる判断になることがあります。
4.資産の現在価値と売却可能性
新品価格だけでなく、現在売却した場合の価格、いわゆる処分価値を確認します。
古い機械で売却価値は低いものの、事業には十分使える場合は、売るよりも使い続ける方が自立に役立つため、保有が認められやすくなります。
反対に、高額で売却でき、より安価な設備で事業を続けられる場合は、売却や買替えを求められる可能性があります。
5.事業収入にどの程度貢献しているか
その資産を使うことで、世帯の収入が得られ、生活保護からの自立や保護費の減少につながっているかを確認します。
現在使っていない場合でも、原則として、
- 事業用の設備以外は、おおむね1年以内
- 事業用設備は、おおむね3年以内
に使用して、世帯収入の増加に著しく貢献する見込みがあれば、保有が認められる場合があります。
6.維持費が事業収入に見合っているか
保険料、税金、修理費、保管費、燃料費などが高額で、事業収入を上回っていないかも確認されます。
設備を維持するために生活扶助費を過度に使わなければならない場合は、保有の合理性が低いと判断されることがあります。
保有が認められやすい例
個人の電気工事業者が、仕事に必要な一般的な工具や中古の軽ワゴン車を使用し、それによって継続的に収入を得ている場合です。
同じ地域の小規模事業者も通常保有しており、売却価値もそれほど高くなければ、低所得世帯との均衡を失わないとして保有が認められる可能性があります。
保有が認められにくい例
小規模な事業しか行っていないのに、
- 高額な高級車を事業用として保有している
- 使用していない機械を何台も所有している
- 売却可能な高額商品を大量に在庫として抱えている
- ほとんど収入を生まない大型設備を維持している
といった場合です。
必要な範囲を超える部分については、売却して生活費に充てるよう求められる可能性があります。
必要となる資料
福祉事務所は、一般に次のような資料から判断します。
- 事業の収支帳簿や確定申告書
- 設備・機械・車両・商品の一覧
- 購入価格、取得年月、現在の査定額
- 使用状況が分かる資料
- 事業計画書や今後の収入見込み
- 維持費、修理費、保険料など
- 地域の同種事業者の一般的な設備状況
まとめ
「低所得世帯との均衡を失わない」とは、単に資産が高価かどうかだけではなく、
その事業に必要か、規模が適正か、地域の零細事業者も通常保有するものか、収入や自立に役立っているか、売却価値が高すぎないか
を総合的に判断するという意味です。
したがって、事業に必要であっても、過大・高額な設備まで当然に保有できるわけではありません。一方、一般的な規模の設備で、実際に収入を得るために使われ、売却するより保有した方が自立に役立つ場合は、保有が認められやすいと考えられます。
(A2)生活用品の保有は、主に次の基準で判断されます。
その世帯の日常生活に必要な品物・数量であり、地域の一般的な生活水準と比べて著しく不相当でないか
テレビ、冷蔵庫、洗濯機、寝具、衣類などの通常の生活用品は、生活保護を受けるからといって、原則として処分する必要はありません。
1.家具・家電、衣類、寝具
家具什器や衣類・寝具については、世帯人数や世帯構成からみて、利用する必要がある品目と数量であれば保有が認められます。厚生労働省の実施要領にも、この基準が示されています。
例えば、次のようなものです。
- 冷蔵庫、洗濯機、炊飯器
- テレビ、エアコン
- テーブル、食器棚、たんす
- 布団、ベッド
- 衣類、靴
- スマートフォン、パソコン
ただし、品物の必要性は世帯ごとに判断されます。例えば、一人暮らしなのに大型冷蔵庫を複数台所有している場合などは、必要な数量を超えていないか確認されます。
2.地域で一般的に普及しているか
生活用品については、その地域の一般世帯への普及状況も判断材料になります。
従来の行政上の考え方では、地域での普及率が70%を超える生活用品は、地域住民との均衡などを考慮し、原則として保有を認めるとされています。
ただし、70%は絶対的な線引きではありません。普及率が低くても、障害、病気、就労、子どもの学習などの事情により必要であれば、保有が認められる可能性があります。
3.高価な品物は処分価値を確認する
一般的な生活用品であっても、著しく高級で高額な品物については、売却価値が調査されることがあります。
例えば、
- 高額な宝飾品やブランド品
- 高級腕時計
- 高価な美術品
- 事業や生活に必要のない高性能機器
- 同じ家電の過剰な複数所有
などです。
売却して相当額の生活費を得られる場合は、処分を求められる可能性があります。一方、購入時は高額でも、中古品としての売却価値がほとんどなければ、処分を求める実益がないため、保有が認められる場合があります。
4.趣味・装飾品
趣味用品や装飾品は、処分価値が小さいものについては保有が認められます。
例えば、一般的な価格の本、楽器、ゲーム機、写真、記念品などは、所有しているだけで直ちに処分対象になるわけではありません。
ただし、高額な骨董品、美術品、希少な楽器、収集品など、売却すれば相当額になるものは、資産として活用を求められることがあります。
5.必要性は世帯ごとに異なる
福祉事務所は、次のような事情を総合的に確認します。
- 世帯人数と年齢
- 子ども、高齢者、障害者の有無
- 病気や介護の状況
- 就労や通学に必要か
- 住宅の広さや設備状況
- 品物の数と使用状況
- 中古品としての処分価値
- 地域の一般的な生活状況
例えば、パソコンは全世帯に絶対必要とは限りませんが、仕事、求職活動、子どもの学習、オンライン手続などに実際に利用している場合は、必要性が認められやすくなります。
6.単に「ぜいたくに見える」だけでは処分できない
生活用品を処分させるには、単なる職員の印象だけではなく、
- 日常生活に必要がない
- 数量が明らかに過剰である
- 処分価値が相当高い
- 売却して生活費に充てることが現実的である
といった客観的な事情が必要です。
生活保護は、利用できる資産の活用を前提としますが、最低生活の維持に必要な物や、社会通念上処分させることが適当でない物まで一律に売却させる制度ではありません。
まとめ
生活用品の保有は、次のように判断されます。
- 世帯の日常生活に必要な品目・数量
→ 原則として保有可能 - 趣味品でも処分価値が小さいもの
→ 原則として保有可能 - 同じ品物を必要以上に多数所有している場合
→ 超過部分の処分を検討 - 高額な宝飾品・美術品など、売却価値が大きいもの
→ 資産として処分を求められる可能性がある
つまり、品物の名称だけで機械的に判断するのではなく、必要性、数量、地域での普及状況、売却価値、世帯の個別事情を総合的に判断するということです。
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