(Q)地域の低所得世帯の経済活動の実態と比較検討する際、どのような情報や指標を用いるべきですか?
(A)地域の低所得世帯の経済活動と比較するときは、単に「同じ物を持っている世帯が多いか」という普及率ではなく、
同じ地域で、同じような小規模事業を営む低所得世帯が、通常どの程度の設備・車両・在庫を使って収入を得ているか
を基準に検討します。
厚生労働省の実施要領では、事業用品について、営業種目や地理的条件などから判断し、その保有が地域の低所得世帯との均衡を失わない程度であることを求めています。全国一律の金額・台数基準は示されていません。
用いるべき主な情報・指標
1.同じ業種・同程度の事業規模
比較対象は、地域の低所得世帯全体ではなく、できる限り次の条件が近い事業者とします。
- 同じ業種
- 個人事業や家族経営など、似た経営形態
- 売上高や従業員数が近い
- 同じ商圏や地域で営業している
- 仕事量や取引先の規模が近い
例えば、一人で営む電気工事業者を、大規模な電気工事会社と比較するのは適切ではありません。
2.売上ではなく、実際の利益
売上が多くても、材料費や維持費が高ければ、世帯の生活には十分貢献していないことがあります。
そのため、次の数字を確認します。
- 売上高
- 仕入れ・材料費
- 燃料費
- 車両費
- 修理費
- 保険料や税金
- 店舗・倉庫の賃料
- 最終的に残る事業所得
重要なのは、資産を使うことで世帯の最低生活の維持にどれだけ実質的に役立っているかです。
3.設備・車両・在庫の種類、数量、価格
次の点を比較します。
- 同業者が通常使う設備か
- 台数や数量が必要以上に多くないか
- 高性能・高級すぎないか
- 使用していない設備がないか
- 在庫量が売上規模に見合っているか
- 中古品など、より安価な設備で代替できないか
例えば、一人で行う配送業に必要な中古軽貨物車1台と、ほとんど使わない高額車両を複数台持つ場合とでは、判断が異なります。
4.設備の使用頻度と収入への貢献度
資産ごとに、
- どの仕事に使っているか
- 月に何回使用するか
- その設備による売上はいくらか
- 設備がなければ仕事を受けられないか
- 売却した場合、収入がどれほど減るか
を確認します。
単に事業用として登録しているだけで、ほとんど使っていない物は、利用価値が低いと判断されやすくなります。
5.地域特有の地理的・交通事情
同じ業種でも、地域によって必要な設備は異なります。
例えば、
- 公共交通機関が少ない地域では事業用車両が必要
- 積雪地域では除雪・冬用設備が必要
- 山間部では四輪駆動車や運搬設備が必要
- 都市部では駐車場代が高く、複数車両の保有が負担になる
などです。
実施要領も、「営業種目」だけでなく「地理的条件等」を考慮するよう求めています。
6.処分価値と利用価値
事業用品の保有要件を満たしていても、売却価格が事業に使う価値より著しく高い場合は、保有が認められないことがあります。
例えば、高級車を売れば300万円になる一方、50万円程度の中古車でも同じ仕事ができる場合は、売却や買替えが検討されます。
反対に、売却しても数万円にしかならない古い機械が、毎月の仕事に不可欠である場合は、保有する方が合理的です。
参考にする資料
実務上は、次のような資料を用いて確認します。
- 確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書
- 月別の売上帳・経費帳
- 設備、車両、商品在庫の一覧
- 購入価格、取得年月、現在の査定額
- 車検証、保険証券、リース契約書
- 受注書、請求書、業務日報
- 商工会・商工会議所、業界団体の資料
- 市町村や都道府県の地域産業統計
- 同業の零細事業者の一般的な設備状況
- 設備を処分した場合の事業継続可能性
ただし、統計資料だけで機械的に決めるのではなく、申請世帯の実際の営業状況を確認する必要があります。
注意点
「地域の低所得世帯との均衡」は、平均額を少し超えたら直ちに処分させるという意味ではありません。
また、担当職員の印象だけで「ぜいたく」「高価」と判断するのも適切ではありません。事業への必要性、収益への貢献、処分価値、代替可能性など、客観的な資料に基づく個別判断が必要です。
まとめ
比較検討では、主に次の点を確認します。
同業・同規模の事業者との比較、実際の事業利益、設備の種類・数量・価格、使用頻度、地域事情、維持費、売却価値、安価な代替手段の有無です。
最終的には、
その資産が地域の小規模な低所得事業者として通常必要な範囲にあり、売却するより使い続ける方が世帯の生活維持と自立に役立つか
という観点から総合的に判断します。
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