(Q1)法定施設に入居する場合であって「やむを得ない場合」とは、どのような場合を指しますか?(Q2)転所先の法定施設が他の管轄区域にある場合、どのような対応が必要ですか?

(A1)はい。生活保護の敷金認定について、厚生労働省の実施要領では、次の場合が対象として明記されています。

「被保護者の状態等を考慮の上、適切な法定施設(グループホームや有料老人ホーム等、社会福祉各法に規定されている施設及びサービス付き高齢者向け住宅)に入居する場合であって、やむを得ない場合」

「やむを得ない場合」とは?

ここでいう「やむを得ない」は、単に本人が施設への入居を希望しているというだけでは足りず、本人の状態や生活状況からみて、その施設等への入居が必要・適切であると福祉事務所が判断できる場合と考えるのがポイントです。

たとえば、次のようなケースが考えられます。

  • 高齢化や障害などによって、現在の住居での単独生活を継続することが困難になっている
  • 日常生活上の支援や見守りが必要で、グループホーム等で生活する必要性が認められる
  • 現在の住居では必要な介護・援助を受けることが難しい
  • 退院・退所後の生活場所として、その施設等への入居が適切である
  • 本人の状態や支援状況を考えると、一般の賃貸住宅よりも施設等で生活することが適切である
  • 入居のために敷金等の初期費用が必要で、本人の手持金などでは賄うことができない

したがって、「法定施設に入る=自動的に敷金が出る」という制度ではありません。

福祉事務所が、①本人の状態、②現在の生活環境、③施設入居の必要性、④その施設が本人に適しているか、⑤本当に敷金等が必要なのか、などを個別に確認して判断します。

どのような施設が対象になる?

現在の厚労省通知では、「法定施設」について、グループホームや有料老人ホーム等の社会福祉各法に規定される施設に加えて、サービス付き高齢者向け住宅も含むことが明記されています。

たとえば、障害のある被保護者について、

「一人暮らしでは日常生活の維持が難しいため、相談支援専門員等の支援関係者とも検討した結果、障害者グループホームへの入居が適切と判断された」

というケースであれば、福祉事務所が必要性・相当性を認めれば、入居に必要な敷金等を住宅扶助として認定できる可能性があります。

さらに、敷金だけでなく、礼金、不動産手数料、火災保険料、保証料についても、「必要やむを得ない場合」は転居に必要な費用として認定して差し支えないとされています。

重要なポイント

つまり「やむを得ない場合」とは、

「本人の状態や生活状況からみて、その法定施設等への入居に合理的な必要性があり、他の方法では適切な生活・支援を確保することが難しく、福祉事務所もその入居を必要・適切と認める場合」

と理解すると分かりやすいです。

なお、実施要領そのものは「やむを得ない場合」を病名や障害等級などで一律に限定していません。そのため、「障害者手帳が○級なら必ず認める」「要介護○以上なら必ず認める」という機械的な基準ではなく、個別ケースでの判断になる点には注意が必要です。

実務上は、施設との契約・支払いを先に行わず、入居の必要性と初期費用の見積書等を福祉事務所に提示して、事前に敷金等の認定を受けることが重要です。

(A2)はい。転所先の法定施設が現在の福祉事務所の管轄区域外にある場合は、転所先所在地を管轄する福祉事務所との十分な事前連携が必要です。 厚生労働省の実施要領でも、「やむを得ない場合」として他の法定施設への転所を認める判断をする際、転所先が管外にあり移管を伴う場合は、転所先の実施機関と十分に連携することとされています。

具体的には、現在の実施機関が、本人の状態や転所の必要性、転所先施設の受入れ状況、必要となる扶助・費用などを確認し、そのうえで転所先の福祉事務所に事前に情報提供・協議を行うことになります。

ただし、注意が必要なのは、「管外の施設へ転所する=必ず転所先の福祉事務所へ実施責任が移る」わけではないことです。生活保護には施設の種類によって「居住地特例」などがあり、施設入所後も従前の福祉事務所が引き続き保護の実施責任を負う場合があります。厚労省の実務資料でも、原則は居住地を管轄する実施機関が担当する一方、救護施設や特別養護老人ホームなど一定の施設については、入所前の居住地・現在地の実施機関が責任を負う例外があると整理されています。

そのため実務では、主に次の点を確認します。

  • 転所先がどの法律に基づく「法定施設」なのか
  • 本人の状態から、その施設への転所が本当に必要か
  • 転所先施設が正式に受入れ可能か
  • 転所によって生活保護の実施責任が移管されるのか、従前の実施機関が継続するのか
  • 敷金等が必要な施設であれば、その費用をどの実施機関が認定するのか
  • 介護扶助・医療扶助・障害福祉サービス等について、転所後も切れ目なく利用できるよう調整できているか

たとえば、A市で生活保護を受けている方について、本人の状態悪化により現在の施設では対応できず、B市にある適切な法定施設への転所が必要になったとします。この場合、A市だけで「B市の施設へ転所させる」と決定するのではなく、B市の実施機関と事前に、転所の必要性・受入れ・実施責任・扶助費の取扱い等について調整しておくことが重要になります。

特に今回の「敷金」の問題との関係では、管外転所であっても、本人の状況から他の法定施設への転所が適切であると実施機関が判断し、やむを得ず敷金等が必要となる場合には、認定を検討できるという考え方になります。ただし、誰が認定するのかについては、転所前後の実施責任を整理しておく必要があります。

要するに、

「管外の法定施設への転所自体は可能。ただし、移管を伴う場合は転所先の福祉事務所と十分に事前協議し、実施責任・敷金等の費用負担・扶助の継続を明確にしてから転所を進める」

というのが基本です。

なお、特別養護老人ホーム、障害者支援施設、グループホーム、軽費老人ホーム・有料老人ホームでは実施責任のルールがそれぞれ異なります。 施設の種類が分かれば、「転所したらどちらの福祉事務所が担当になるのか」まで具体的に整理できます。

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