(Q1)生活保護申請において、親子関係がある場合、福祉事務所は必ず父親に扶養照会(生活保護法28条2項)を行うのでしょうか?例:Aさんが生活保護を申請した場合、D君の父親であるEさんに対して、福祉事務所は必ず扶養義務に関する照会を行う必要がありますか?(Q2)扶養照会を回避するために、弁護士としてどのような対応が可能でしょうか?例:生活保護申請時に、弁護士として扶養照会を回避するためにできることはありますか?具体的な方法や手続きがあれば教えてください。
(A1)いいえ。親子関係があるからといって、福祉事務所が必ず父親へ扶養照会をしなければならないわけではありません。
生活保護法28条2項は、福祉事務所が保護の決定などに必要があると認めるとき、扶養義務者に報告を求めることが**「できる」**と定めています。つまり、すべての親族に一律・必須で照会する規定ではありません。
実際の運用でも、厚生労働省は、「扶養義務の履行が期待できない」と判断される扶養義務者には、基本的に直接の扶養照会を行わないと明確にしています。扶養は生活保護の「要件」ではなく、実際に援助が行われた場合にその援助を収入として扱うなど、保護に優先するものという位置付けです。
したがって、Aさんが生活保護を申請し、D君の父親Eさんが扶養義務者であったとしても、まず福祉事務所は、Aさん等から事情を聴いて、Eさんから現実に扶養を期待できるかを判断します。
例えば、Eさんについて、長期間交流がない、著しく関係が悪い、DV・虐待などの経緯がある、連絡することでAさんやD君の生活・安全・自立に悪影響が生じる、Eさん自身が生活困窮していて援助能力がない、といった事情があれば、扶養照会を行わないことがあります。特にDVや虐待等で扶養を求めることが本人の自立を明らかに阻害する場合には、厚労省は**「直接照会することが真に適当でない場合」として取り扱う**よう示しています。
逆に、Eさんと普段から交流があり、十分な収入・資産があり、実際に扶養できる可能性が高いと判断されれば、福祉事務所からEさんへ扶養照会が行われる可能性があります。
また、Eさんへの扶養照会をしなければ生活保護を開始できない、ということでもありません。 「父親に援助を頼んでから来てください」「父親から援助を断られた証明がないと申請できません」といった扱いは、生活保護制度の考え方とは異なります。厚労省も、同居していない親族に相談してからでなければ申請できないということはない、と案内しています。
要するに、「父親だから必ず扶養照会」ではありません。福祉事務所が父親との関係、扶養能力、交流状況、DV・虐待等の事情などを確認し、現実に扶養を期待できる場合に照会を検討するという取扱いです。
特にAさんが「Eさんには連絡してほしくない」という事情がある場合は、申請時にその理由を具体的に説明することが重要です。
(A2)はい、弁護士としてできることはあります。ポイントは、「扶養照会をしないでほしい」と口頭で頼むだけではなく、厚生労働省通知に沿って、照会が不適切な具体的事情を書面で整理して福祉事務所に提出することです。
厚労省は現在、「扶養義務の履行が期待できない」と判断される親族には、基本的に直接の扶養照会を行わない取扱いを示しています。扶養は生活保護の「要件」ではなく、実際に援助があれば保護に優先して考慮するという位置付けです。
弁護士としては、申請時に例えば**「扶養照会を行わないことを求める申入書・意見書」**を提出し、親族との関係を具体的に説明する方法が有効です。書面には、長期間の音信不通、著しい関係不良、過去の暴力・虐待・DV、威圧や支配、連絡されることで居場所が知られる危険、申請者が強い恐怖を感じていること、照会によって生活の安定や自立が害されるおそれなどを記載します。
厚労省の実施要領でも、DVや虐待等の経緯があり、扶養を求めることで明らかに本人の自立を阻害する場合は、直接照会することが真に適当でない場合として扱うこととされています。また、「著しい関係不良」も扶養義務の履行が期待できないかを判断する際の重要な事情です。
そのため、例えば弁護士が、
「父親とは10年以上交流がなく、過去に暴力的言動があった。本人は父親に現在の住所や生活保護申請の事実が知られることに強い恐怖を感じている。扶養を求めることは本人の生活の安定及び自立を著しく阻害するため、直接扶養照会を行わないよう求める」
といった形で、事実と通知上の根拠を整理して提出することが考えられます。
さらに、可能であれば、裏付け資料を添えると福祉事務所も判断しやすくなります。たとえば、DV・虐待に関する相談記録、警察・児童相談所・女性相談支援機関の記録、接近禁止命令、診断書、支援者の意見書、過去の経緯をまとめた本人の陳述書などです。ただし、このような資料がなければ絶対に照会を止められないという意味ではありません。本人からの具体的な聞き取り自体が判断材料になります。
また、弁護士が申請同行する場合は、窓口で**「扶養照会を行う前に代理人へ連絡してください」**と申し入れ、照会の必要性について福祉事務所と協議することも実務上有用です。厚労省通知でも、扶養義務の履行が期待できない者については、面接相談で本人から事情を聞き取り、個別に慎重に判断することが求められています。
もし福祉事務所が「親だから必ず照会します」と説明した場合には、弁護士から、親族であることだけを理由に一律に直接照会する運用ではないことを指摘し、どの事情を検討した結果、照会が必要と判断したのか説明を求めることも考えられます。実施要領上も、直接照会が真に適当でない場合には、直接本人へ照会せず、必要に応じて関係機関等による調査を行う仕組みがあります。
要するに、弁護士としての対応は、①本人から親族関係を詳しく聴取する、②扶養照会が不適切な理由を書面化する、③必要に応じて裏付け資料を添付する、④申請時に福祉事務所へ「直接照会をしないよう」正式に申し入れる、⑤照会予定がある場合は事前協議を求めるという流れが分かりやすいです。
特に、DV・虐待・著しい関係不良・長期間の断絶・安全上の危険があるケースでは、厚労省通知上も扶養照会を回避できる可能性が十分あります。なお、扶養照会を拒否したことだけを理由に生活保護の申請自体を拒むことはできません。
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