(Q)父が亡くなり、相続人は兄と私だけです。遺産は不動産5,000万円と預貯金1,000万円があります。しかし父の遺言には「全財産を兄に相続させる」と書かれていました。
そのため、私は遺留分侵害額請求を考えています。

このとき、

  • お金での支払いを請求できるのか
  • 不動産の持分だけを移してもらうよう請求できるのか
  • 平成30年頃に法律が変わったとのことだが、影響はあるのか
  • 兄に支払い能力がなかった場合はどうなるのか

これらについて知りたい、という内容です。

(A)ご質問に対する 一般的な法的説明をまとめました。
(正式な判断は個別事情により異なりますので、最終的には弁護士等へのご相談が推奨されます)


◆ご質問への回答

① お金(遺留分侵害額)で支払いを請求できるか

はい、できます。
現在の法律では、遺留分侵害額請求は 金銭による支払いが原則です。
不動産や預貯金をそのまま分ける制度ではなく、権利は“侵害された金額分の請求権”として認められます。

▶ 計算例
遺産総額 6,000万円
相続人:兄とあなた(直系卑属のみ → 法定相続分は各1/2)
遺留分:法定相続分の 1/2
→ あなたの遺留分割合:1/2 × 1/2 = 1/4

遺留分額:6,000万円 × 1/4 = 1,500万円
(兄が全て相続しているため、全額が侵害額となり請求可能)


② 不動産の持分のみを移してもらう請求はできるか

原則としてできません。

理由:平成30年改正後、遺留分は 金銭債権化されているため
→ 不動産の持分移転を強制できる制度ではない

ただし、話し合い(任意の遺産分割交渉)で
不動産持分の移転や代物弁済の合意をすることは可能です。


③ 平成30年の法律改正の影響は?

とても重要な変更があります。

改正前(~平成30年)改正後(平成30年7月施行)
「遺留分減殺請求」→物権的効果(不動産の持分を取り戻せた)「遺留分侵害額請求」→債権的効果(金銭請求のみ)

➡ 影響:
不動産の持分を当然に取得できる制度ではなくなった

そのため、現在は
「お金で払ってください」が基本になります。


④ 兄に支払い能力がない場合は?

次の対応が考えられます。

兄の資力が不十分な場合の対応
・分割払いの交渉
・不動産に担保設定を求める
・不動産売却を求め、代金から受け取る
・最悪の場合は訴訟 → 強制執行(預金や不動産)

もし兄が不動産を所有している場合は
差し押さえの対象となり得ます。


◆まとめ

平成30年改正で「遺留分は金銭請求の権利」に大きく変化

あなたの遺留分は 1,500万円

金銭での請求が基本

不動産の持分取得は原則できない(交渉は可能)

兄が支払えない場合は分割・担保・売却・強制執行といった手段あり