(Q)昔から家を借りて住んでいる被保護者が、賃貸借契約の期間満了等により明渡請求(三五三請求)を受けたが、「賃貸借契約は終了していない」などとして明渡請求に応じないため、訴訟を提起された場合、住宅扶助の取扱いはどのようにすればよいか。
(A)この場合は、明渡請求の訴訟を起こされたというだけで、直ちに住宅扶助を打ち切るのではありません。 賃貸借契約が終了したかどうかについて争いがあり、被保護者が現にその住宅に住み続け、家賃相当額を支払う必要があるなら、住宅扶助の必要性は認められ得ます。生活保護問答集の問7-98も、この考え方を示しています。
特に重要なのは、家主が家賃の受領を拒否しているなどの理由で、被保護者が家主へ直接支払っていなくても、法令に基づく正式な手続で家賃を供託している場合です。この場合は、現に住宅費の需要があるものとして、その供託額について住宅扶助を認定して差し支えないとされています。
例えば、
「大家は、契約期間が満了したので賃貸借契約は終了したとして退去を求めている。しかし、入居者は、借地借家法などを理由に契約はまだ有効だと主張している」
というケースです。
この段階では、裁判所による最終的な判断が出ていません。そのため、
明渡請求をされた → 契約終了 → 住宅扶助停止
と機械的に判断するのではなく、賃貸借契約が有効かどうか係争中であることを踏まえて住宅扶助を取り扱うことになります。
さらに、裁判の結果、最終的に被保護者が敗訴して、「実は契約終了後は法律上の権限なく住んでいた」と判断された場合でも、必ずそれまでの住宅扶助が不適切になるわけではありません。
厚生労働省の問答集では、借家・借間のような継続的な契約関係について、①居住継続の違法性が高いとはいえず、かつ、②被保護者が「自分には賃借権がある」と主張したことに相当な理由があったと認められる場合には、それまで住宅扶助を行ったものとして取り扱って差し支えないとしています。
簡単に整理すると
① 明渡請求を受けただけの段階
→ 直ちに住宅扶助を停止する必要はありません。
② 賃貸借契約が終了したかどうか裁判で争っている
→ 現に住宅費の需要があるかを確認します。
③ 家主が家賃を受け取らず、家賃を適法に供託している
→ 供託額について住宅扶助を認定して差し支えありません。
④ 後に裁判で敗訴した
→ 契約終了後の居住が結果的に権原のない居住となっても、賃借権を主張したことに相当な理由があり、違法性が高くない場合には、それまで支給した住宅扶助を住宅扶助として扱って差し支えありません。
したがって、ご質問への回答を一言でまとめると、
「賃貸借契約の終了を争って明渡訴訟になっているだけでは、直ちに住宅扶助を停止しない。家賃を適法に供託している場合は、その供託額を住宅扶助として認定してよく、後に敗訴した場合でも、賃借権を主張する相当な理由があれば、それまでの住宅扶助を有効な支給として取り扱って差し支えない。」
ということになります。
なお、これは、すでに使用許可や賃貸借契約が明確に終了し、単なる不法占有となっているケースとは扱いが異なります。東京都の審査事例でも、使用許可取消し後に請求される「使用料相当損害金」については住宅扶助の対象としないという取扱いが示されています。
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