(Q1)Aさんが生活保護を申請した場合、福祉事務所は必ず父親であるBさんに扶養に関する照会を行うのでしょうか?(背景:Aさんは父親Bさんとの関係が極めて悪く、精神的な恐怖を感じており、生活保護申請が父親に知られることを強く恐れています)(Q2)Aさんのように、親子関係が断絶している場合でも、生活保護申請時に親への扶養照会は避けられないのでしょうか?
(A1)いいえ、父親Bさんだからといって、福祉事務所が必ず扶養照会をするわけではありません。 AさんがBさんとの関係に強い恐怖を感じており、連絡によってAさんの自立や安全が損なわれるおそれがある場合は、Bさんへの直接の扶養照会を行わない取扱いが認められています。
厚生労働省の実施要領では、DVや虐待などの経緯があり、扶養義務者に扶養を求めることで**「明らかに要保護者の自立を阻害することになる」と認められる場合**には、親子のような扶養関係であっても、直接照会を控えることとされています。著しい関係不良など、扶養義務の履行が期待できない場合も個別に判断されます。
したがって、Aさんは申請時に単に「父とは仲が悪い」とだけ伝えるのではなく、できるだけ具体的に、**「父から過去に暴力・虐待・威圧的な言動があった」「長期間連絡を絶っている」「父に現在地や生活保護申請を知られることに強い恐怖がある」「連絡されると生活の安定や安全が損なわれる」**などの事情を福祉事務所に説明することが重要です。福祉事務所は、その事情を個別に検討して扶養照会を行うか判断します。
特に、Aさんの居場所を父親に知られることで危険が生じるケースでは注意が必要です。厚労省は、こうした事情を確認するために関係先調査を行う場合でも、本人の居住地だけでなく、手がかりとなる福祉事務所名なども扶養義務者本人に知られないよう慎重に調査することを求めています。
また、父親への扶養照会をしないことと、生活保護を受けられるかどうかは別問題です。生活保護法4条2項の扶養は「保護の要件」ではなく「保護に優先するもの」です。そのため、父親から援助を受けられないことを証明できなければ申請できない、という制度ではありません。
要するに、今回のAさんの場合は、「父親だから必ず連絡される」のではありません。父親への連絡によってAさんが強い恐怖を感じ、安全や自立が害される具体的な事情があるなら、申請時にその事情を明確に伝え、Bさんへの扶養照会を行わないよう申し出ることが重要です。福祉事務所はその申出を個別・慎重に検討する必要があります。
(A2)いいえ、親子関係が断絶している場合でも、必ず親への扶養照会をしなければならないわけではありません。
厚生労働省は、扶養義務者がいても、「扶養義務の履行が期待できない」と判断される場合には、基本的に直接の扶養照会を行わない取扱いを示しています。2021年3月からは、特に著しい関係不良がある場合も、この判断に含まれることが明確化されています。
たとえば、Aさんが親と長期間まったく連絡を取っていない、過去に虐待・暴力・強い支配関係があった、連絡されることで精神的な負担や安全上の問題が生じる、といった事情がある場合です。こうしたケースでは、親に扶養を求めることがAさんの自立を阻害すると認められれば、親への直接照会をしない取扱いができます。厚労省の実施要領でも、虐待等の経緯がある場合などは「直接照会することが真に適当でない場合」として扱うよう示されています。
ですから、申請時には「親とは疎遠です」だけでなく、できるだけ具体的に、何年間連絡していないのか、なぜ関係が断絶したのか、過去に暴力や虐待があったか、親に申請を知られることでどのような問題が生じるかをケースワーカーに伝えることが重要です。
また、扶養照会は生活保護を受けるための必須条件ではありません。 生活保護法4条2項の扶養は「保護に優先するもの」であって、「親から援助を断られなければ保護を受けられない」という意味ではありません。実際に親から援助があれば、その援助を収入として考慮するという位置付けです。
要するに、「親がいる=必ず扶養照会」ではありません。親子関係が長期間断絶している、著しい関係不良や虐待等の事情があるなど、扶養を期待できない事情を具体的に説明すれば、親への直接照会を行わない取扱いが可能です。
⇓