(Q1)生活保護利用者が債務整理を希望する場合、支給される生活扶助費(例:7万5000円程度)から毎月一定額(例:5000円)を債務返済に充てることは、生活保護法上問題がありますか?(Q2)生活保護利用者の債務総額が20~30万円程度と少額の場合、破産手続開始免責許可申立てによる方法は選択できないのでしょうか?

(A1)原則として、生活扶助費から借金を返済することは望ましい取扱いではありません。 生活扶助費は、食費・光熱水費・衣類・日用品など、健康で文化的な最低限度の生活を維持するために支給されるお金だからです。厚生労働省も、生活保護費は最低生活費と収入との差額として支給される制度だと説明しています。

そのため、たとえば生活扶助費が月7万5,000円で、その中から毎月5,000円を消費者金融やカードローンの返済に回すと、本来生活に使うべき保護費が借金返済に充てられることになります。厚労省の実施要領でも、ローン付き住宅について「生活に充てるべき保護費からローン返済を行う結果となる」ことを問題としており、保護費を債務返済に充てることには慎重な考え方が示されています。

ただし、毎月5,000円返済したら直ちに生活保護法違反になる、保護が停止される、という単純な話ではありません。 本人のお金の使い方について一律に刑罰的に禁止する規定があるわけではなく、重要なのは、その返済によって最低生活が損なわれていないか、福祉事務所から適切な生活・家計上の指導を受ける必要がないか、という点です。

特に、債務整理をするのであれば、生活保護費から長期間少額ずつ返済を続けるよりも、弁護士や司法書士に相談して、任意整理・自己破産・個人再生などによって債務そのものを整理する方法を検討するのが基本です。厚労省の家計相談支援資料でも、多重債務・過剰債務や債務整理中の人は、専門的な家計相談支援につなぐ対象として挙げられています。

例えば、Aさんが生活扶助費7万5,000円から毎月5,000円を借金返済に充て、その結果、食費が足りず、電気代を滞納したり、再び借金をしたりするようでは本末転倒です。この場合は、返済を継続するのではなく、債務整理によって返済負担を止める・減らす方向を検討するのが適切です。

一方で、例外的に生活保護受給中でも償還を前提とする公的貸付があります。たとえば、一定の生活用品購入のための貸付については、経常的最低生活費のやり繰りで償還可能と認められる場合、福祉事務所が関係機関と調整して返済させる取扱いがあります。これは、通常のカードローンや消費者金融の借金とは別の話です。

要するに、**「生活扶助費から毎月5,000円を一般の借金返済に回すことは、最低生活保障という生活保護の趣旨から原則として適切とはいえない。債務があるなら、保護費から返済を続けるより、弁護士・司法書士等に相談して債務整理を進めるのが基本」**と考えると分かりやすいです。

(A2)はい、債務総額が20~30万円程度と少額でも、自己破産(破産手続開始・免責許可申立て)を選択することは制度上可能です。 「借金が100万円以上なければ自己破産できない」といった最低金額の基準はありません。重要なのは金額そのものではなく、現在の収入・資産・生活状況から見て、その債務を継続的に返済できない=支払不能の状態にあるかです。裁判所も、自己破産を「債務の返済ができなくなった個人が申し立てる手続」と説明しています。

したがって、生活保護利用者で収入が保護費しかなく、20~30万円の借金であっても、毎月返済すると最低生活が圧迫され、今後も返済原資を確保できる見込みがないのであれば、少額だからという理由だけで破産を排除する必要はありません。

例えば、債務25万円を毎月5,000円ずつ返済すると、単純計算でも50か月かかります。しかも利息があればさらに長くなります。生活扶助費から長期間返済を続けるより、本人に返済能力がないのであれば、自己破産で債務を整理して生活再建を図る方が合理的なケースもあります。

ただし、20~30万円程度だと、弁護士費用や裁判所費用とのバランスも検討されます。自己破産には収入印紙、郵便料、予納金などが必要で、裁判所によって具体額が異なります。 そのため、債権者数、利息、滞納状況、差押えのおそれ、今後の収入見込みなどによっては、任意整理など別の方法が適している場合もあります。

生活保護利用者の場合は、特に法テラスの民事法律扶助を検討する価値があります。一定の要件を満たせば弁護士・司法書士費用を法テラスが立て替えます。生活保護受給中であれば、事件進行中の立替金返済を猶予できる場合があり、事件終了後には償還免除を申請できる仕組みもあります。2026年4月からは、生活保護受給中の人向けにオンラインでの償還免除申請も開始されています。

ただし、生活保護を受けていれば弁護士費用が必ず無料になるわけではありません。 法テラスの償還免除には別途審査があります。

要するに、「20~30万円しか借金がないから自己破産できない」のではありません。生活保護利用者で返済能力がなく、返済を続けると最低生活を圧迫するのであれば、少額債務でも自己破産は十分選択肢になります。 最終的には、債務額だけでなく「返済能力・債権者数・利息・財産・今後の収入見込み」を踏まえて、弁護士・司法書士が自己破産と他の債務整理方法を比較して判断するのが適切です。

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