(Q1)Aさんは2年前の交通事故で右足に大けがを負い、現在も歩行が困難なため身体障害者手帳(障害等級3級)の交付を受けています。Aさんは勤務先への通勤に自動車を利用していますが、障害年金と給与を合わせても世帯の最低生活費に満たないため、生活保護の申請を考えています。この場合、生活保護開始後も通勤用自動車の保有は認められるのでしょうか?(Q2)Bさんは1年前に鬱病とパニック障害を発症し、仕事を辞めて現在は月2回の通院に自動車を利用しています。しかし、障害者手帳や福祉手当の給付は受けていません。収入もなく貯金も尽きたため生活保護の申請を考えていますが、生活保護開始後も通院用自動車の保有は認められるのでしょうか?
(A1)はい。一定の条件を満たせば、生活保護を受けながらでも通勤用自動車の保有・使用が認められる可能性があります。
今回のAさんは、身体障害者手帳3級を持ち、右足の障害によって歩行が困難で、実際に勤務先への通勤に自動車を使っています。このようなケースでは、単に「生活保護だから車は持てない」と判断されるわけではありません。
生活保護では自動車は原則として処分・活用を求められる資産ですが、障害のある方が通勤するために自動車を必要としている場合などには、例外的に保有が認められます。特に、公共交通機関では通勤が著しく困難で、自動車を利用することが就労を続けるために必要であることが重要です。
Aさんの場合は、主に次のような点が福祉事務所で確認されます。
- 足の障害の程度から、自動車通勤が必要と認められるか
- 電車・バスなどを利用して通勤することが現実的に困難か
- 現在実際に就労しており、自動車がその就労の継続に必要か
- 自動車の価値が著しく高額ではないか
- ガソリン代、駐車場代、保険料、車検代などの維持費を負担しても、生活保護上問題がないか
したがって、今回の質問を簡単に言い換えると、
「障害のため車がないと仕事に通うことが難しい人は、生活保護になっても車を持ち続けられますか?」
という質問です。
答えは「条件を満たせば、持ち続けることができます」です。
Aさんは「身体障害者手帳3級だから自動的に認められる」というわけではありませんが、歩行困難という障害があり、現に就労していて、その通勤に自動車が必要という事情があります。そのため、通勤用自動車の例外的な保有が認められる可能性は十分にあります。
なお、障害年金と給与があること自体も生活保護申請の妨げにはなりません。これらを収入として認定したうえで、それでも世帯の最低生活費に不足する場合、その差額が生活保護費として支給されるのが基本的な考え方です。
結論:Aさんの場合、「生活保護を受ける=車を必ず処分する」ではありません。障害のため公共交通機関による通勤が困難で、就労継続のため車が必要であることなどが認められれば、通勤用自動車を保有したまま生活保護を受けることが可能です。
(A2)はい。Bさんの場合も、一定の条件を満たせば、通院用自動車の保有が認められる可能性があります。 ただし、「うつ病・パニック障害で通院している」という理由だけで自動的に認められるわけではありません。
厚生労働省の生活保護実施要領では、障害者が通院等のために自動車を必要とする場合や、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住んでいる人が通院等に自動車を必要とする場合には、例外的に保有を認める取扱いがあります。
Bさんの場合に重要なのは、**障害者手帳を持っているかどうかだけではなく、「病状や地域の交通事情から見て、本当に自動車でなければ通院が困難なのか」**という点です。
たとえば、パニック障害の症状が強く、電車やバスに乗ると発作が起きるため公共交通機関を利用することが著しく困難であることを医師の診断書や意見書などで確認できる場合には、自動車通院の必要性が認められる余地があります。一方、「車の方が便利だから」「電車では時間がかかるから」という程度では、通常は認められにくいと考えられます。
また、福祉事務所は、①月2回など定期的に通院していること、②公共交通機関の利用が著しく困難であること、③家族の送迎、病院の送迎サービス、福祉サービス等による代替が難しいこと、④タクシー利用と比較しても自動車通院が社会通念上妥当であること、⑤車が高価ではなく通院に必要最小限のものであること、⑥保険・車検・修理などの維持費を確実に賄える見込みがあること、などを総合的に確認します。
したがって、この質問を簡単に言い換えると、
「精神疾患でバスや電車を使うのが難しく、病院に行くために車が必要な人は、生活保護になっても車を持てますか?」
という質問です。
答えは「必要性が客観的に認められれば可能。ただし手帳がない場合も含め、個別判断になる」です。
特にBさんの場合、「障害者手帳がない=絶対に車を持てない」と単純に判断するのは適切ではありません。一方で、通院用自動車の例外は厳格に要件が設けられているため、パニック障害等によって公共交通機関の利用がどの程度困難なのかを、主治医の意見などで具体的に説明できるかが大きなポイントになります。
なお、厚生労働省も、生活保護で自動車は原則として保有を認めないものの、障害者等が通勤・通院等に利用する場合には一定の要件のもと例外的に保有を認めていることを改めて示しています。
Bさんのケースでは、申請時に「車を処分してください」と言われても、まず主治医から「公共交通機関での通院が病状上困難」「自動車による通院が必要」といった具体的な意見を得て、福祉事務所に通院用自動車としての保有容認を相談することが重要です。
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