(Q3)パニック障害などの理由で公共交通機関の利用が困難な場合、生活保護受給者が家族名義の自動車を借りて通院することについて、どのような配慮や判断がなされるべきでしょうか?

(A3)この場合は、「家族名義の車だから一律に禁止」とするのではなく、本人の障害の状態と通院の必要性を個別に確認して判断することが重要です。

厚生労働省の生活保護実施要領では、障害者が通院のために自動車を必要とする場合、障害のため公共交通機関の利用が著しく困難で、自動車による通院が真にやむを得ない状況であれば、自動車の保有・利用を認める余地があります。バスや電車そのものが存在していても、障害の症状によって実際の利用が著しく困難であれば、この要件に該当する可能性があります。

たとえばパニック障害のため、バスに乗ると強い発作が起こり、主治医からも公共交通機関での通院は困難と判断されている場合です。このケースでは、「病院までバスが走っている」という形式的な事情だけではなく、その人が実際にバスを利用できる状態なのかを見る必要があります。

ただし、家族名義の車を本人が借りて自由に運転することが、当然に認められるわけではありません。厚労省の実施要領が典型的に想定しているのは、①障害者本人が運転する場合、または②専らその障害者の通院等のために、生計同一者や常時介護者が運転する場合です。

そのため、福祉事務所としては、家族名義という一点だけではなく、誰が運転するのか、どの程度の頻度で使うのか、通院以外にも自由に使っているのか、実質的に本人専用車になっていないかなどを確認することになります。

また、他の移動手段についても検討されます。厚労省は、他法・他施策による送迎サービス、扶養義務者による送迎、医療機関の送迎サービスなどが利用できないか、さらにタクシー利用と比較しても自動車通院が社会通念上妥当か、という点も判断材料にしています。

したがって、たとえば「父親が通院日に自分の車でAさんを病院へ送迎する」という形であれば、Aさん自身が車を保有・自由使用している場合とは区別して考える必要があります。一方、「父親名義ではあるものの、車をAさん宅に常時置き、Aさんだけが自由に使用している」という状況なら、実質的な保有・管理関係まで確認される可能性があります。

さらに重要なのは、パニック障害など精神障害についても、その症状の実態をきちんと確認することです。主治医の診断書や意見書に、「公共交通機関の利用により発作が生じる」「現時点ではバス・電車による通院は困難」など具体的に記載されていれば、自動車通院の必要性を判断する重要な資料になります。

厚労省の取扱いには、通常の要件に完全には当てはまらない場合でも、自動車保有を認めることが真に必要と考えられる特段の事情がある場合には、個別に検討する仕組みも置かれています。

つまり、この質問への答えを簡単にまとめると、

「家族名義の自動車だから一律に使用禁止とするのではなく、パニック障害の程度、主治医の意見、公共交通機関を実際に利用できるか、通院頻度、代替の送迎手段、誰が車を運転・管理しているかなどを総合的に調査し、自動車通院が真にやむを得ないかを個別に判断するべき」

ということになります。

特にこのケースでは、**「公共交通機関があるか」ではなく「障害のため公共交通機関を利用できるか」**が大きなポイントです。単に「バスがあるので車は禁止」と判断するのではなく、Aさんの病状と実際の通院可能性を踏まえた配慮が必要です。

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