(Q1)Aさんは、通院のために自動車の利用を許可されていましたが、通院途中で自動車事故(人身事故)を起こし、被害者が加療3カ月を要する重傷を負いました。この場合、Aさんは自動車事故を起こしたことを理由に、保護の停止や廃止等の処分を受けることがありますか?また、今後、保有する自動車の処分指導がされることになるのでしょうか?(Q2)Aさんがパチンコ店に向かう途中で自動車事故を起こした場合、保護の停止や廃止等の処分を受けることがありますか?また、今後、保有する自動車の処分指導がされることになるのでしょうか?
(A1)この質問は、**「生活保護で通院用の車を認められていた人が事故を起こしたら、それだけで生活保護を止められたり、車を手放すよう言われたりするのか?」**という意味です。
結論からいうと、事故を起こしたという事実だけで、直ちに生活保護を停止・廃止することにはなりません。 生活保護の停止・廃止は、保護を必要としなくなった場合や、正当な指導指示に従わない場合など、法律上の要件と手続に基づいて判断されます。単に人身事故を起こしたこと自体が、そのまま保護停止・廃止の理由になるわけではありません。
一方、自動車については別に検討されます。Aさんの車は、障害などにより公共交通機関の利用が著しく困難で、定期的な通院に車が真に必要であるなどの要件を満たしているから、例外的に保有が認められているものです。したがって事故後も、その通院上の必要性が変わっていなければ、「事故を起こしたから」という理由だけで当然に処分対象になるわけではありません。
ただし、事故によって車が大破して使用不能になった、任意保険に加入できなくなった、修理費や保険料などの維持費を確実に賄えなくなった、運転免許の停止・取消しを受けた、あるいは今後Aさん自身が安全に運転することが難しくなった、といった事情が生じれば、福祉事務所は改めて保有要件を確認します。通院用自動車の保有には、通院に必要最小限の車であることや、ガソリン代を除く維持費を確実に賄える見通しがあることなどが求められているためです。
たとえば、事故後もAさんが運転可能で、車も修理でき、保険にも加入でき、週1回の通院に引き続き車が必要で、維持費も他からの援助などで確実に賄えるのであれば、引き続き保有が認められる可能性があります。
逆に、事故で車が全損し、多額の修理費が必要になったり、免許取消しで本人が運転できなくなったりして、従来の保有要件を満たさなくなれば、処分指導や別の通院手段への変更が検討される可能性があります。
なお、事故によって被害者への損害賠償責任が発生することと、生活保護の資格は別問題です。自賠責保険や任意保険による賠償がまず問題になりますが、「重傷事故を起こした=生活保護を廃止」という仕組みではありません。
要するに、事故そのものを理由に直ちに保護停止・廃止や自動車処分となるわけではなく、事故後も通院の必要性、運転可能性、車の状態、保険加入、維持費負担などの自動車保有要件を満たしているかを改めて判断する、という理解が分かりやすいです。
(A2)このケースでは、「パチンコに行くために車を使ったこと」と「交通事故を起こしたこと」を分けて考える必要があります。
まず、Aさんの自動車は、障害などの事情から通院のために必要として例外的に保有が認められている車だとします。厚生労働省は2024年12月に、こうした車について、認められた目的以外でも、障害者本人や家族等が行う日常生活に不可欠な買い物などについては利用を認める取扱いを明確にしました。
しかし、パチンコ店へ行くことは通常、「日常生活に不可欠な買い物等」には当たりません。 したがって、通院のために保有を認められた車をパチンコ目的で使用した場合、福祉事務所から不適切な目的外使用として、今後そのような使用をしないよう指導される可能性があります。
事故を起こしたら生活保護は廃止される?
事故を起こしただけで、直ちに生活保護が停止・廃止されるわけではありません。
生活保護法62条では、福祉事務所の必要な指導・指示に従わない場合には保護の変更・停止・廃止が可能とされていますが、その場合でも所定の手続が必要です。また、処分をする場合には本人に弁明の機会を与える必要があります。
実施要領でも、まず口頭で指導し、それでは目的を達成できない場合などには書面による指導指示を行い、その書面による指示にも従わない場合に、必要に応じて変更・停止・廃止を検討するという流れになっています。
さらに、指導指示違反の場合でも、内容が比較的軽微なら「変更」、それが適当でなければ「停止」、停止後も改めて書面で指導してなお従わない場合に「廃止」という段階的な取扱いが示されています。
したがって、
「パチンコに行く途中で事故を起こした → 即、生活保護廃止」
という単純な取扱いにはなりません。
車は処分させられる?
こちらも、事故を起こしたから自動的に処分、というわけではありません。
ただし福祉事務所は、保有を認めた車について、その後も保有要件を満たしているか適宜確認することになっています。
そのため、事故後に「通院のため本当に車が必要なのか」「パチンコなど目的外利用を繰り返していないか」「事故によって車が使用不能になっていないか」「免許停止・取消しになっていないか」「保険料・修理費などの維持費を今後も負担できるのか」といった事情が確認されます。
たとえば、今回だけの目的外使用で、Aさんが指導を受けて今後は適切な用途で使用し、通院に車が必要という本来の保有要件も引き続き満たしているのであれば、必ず処分指導になるとは限りません。
反対に、パチンコ等への目的外使用を繰り返して指導にも従わない場合や、事故によって免許取消しとなり運転できなくなった場合、維持費を賄えなくなった場合など、自動車を保有させる前提そのものが失われた場合には、処分指導が行われる可能性があります。 自動車の保有が認められない場合には、必要に応じて文書による処分指導を行うことも厚生労働省の監査事項として示されています。
つまり、わかりやすくまとめると、**「パチンコ目的での車の利用は、通院用として認められた車の使い方として問題になる。ただし、パチンコに行く途中で事故を起こしたという一事だけで、生活保護が即座に廃止されたり、車が自動的に処分対象になったりするわけではない。目的外利用の状況、指導への対応、事故後も通院用として車が必要か、運転・維持が可能かなどを個別に判断する」**ということです。
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