(Q1)不動産を購入することで生活困窮に陥ることが予想される場合、どのように対応すべきですか?例:居住用の土地や家屋を購入し、手持ち資金を使い果たした結果、生活保護申請があった場合の取扱いは?(Q2)購入した不動産が処分価値の高くないものであっても、生活困窮の原因となった場合はどのような指導が必要ですか?例:社会通念上、生活維持が困難になることが予想される場合、どのような指導方針をとるべきですか?
(A1)不動産購入で手持ち資金を使い果たした場合の取扱い
居住用の土地や家屋を購入したために手持ち資金がなくなり、その後、生活保護を申請した場合でも、「不動産を買った」という理由だけで直ちに申請を却下することはできません。
福祉事務所は、申請時点で本当に生活に困窮しているかを確認するとともに、購入した不動産を今後も保有できるか、売却などによる資産活用が必要かを個別に判断します。
1.まず、生活保護の申請自体は受け付けられます
生活保護は、申請時点における収入・資産と最低生活費を比較して、保護が必要かどうかを判断します。
したがって、
「お金を不動産購入に使ったのだから、生活保護は申請できない」
と一律に扱われるものではありません。
ただし、生活保護法第4条により、利用できる資産は最低生活のために活用することが原則です。購入した土地・家屋も資産として調査されます。
2.購入した家に住んでいる場合
居住用の持ち家は、必ず売却しなければならないわけではありません。
次のような場合には、持ち家の保有を認めたまま生活保護が開始される可能性があります。
- 本人や世帯が実際に住んでいる
- 世帯人数に比べて著しく豪華・広大ではない
- 売却価値が極端に高くない
- 売却して賃貸住宅に移るより、住み続ける方が生活維持や自立に有効である
- 住宅ローンや維持費が生活を著しく圧迫しない
厚生労働省の実施要領でも、最低生活の維持に現実に活用され、処分するより保有する方が生活維持や自立に有効な資産は、保有を認め得るとされています。
3.不動産の価値が高すぎる場合
一方で、購入した住宅の処分価値が利用価値に比べて著しく大きい場合は、売却などによる資産活用を求められることがあります。
例えば、次のような場合です。
- 高額な土地や住宅である
- 世帯人数に比べて著しく広い
- 売却すれば長期間生活できる金額になる
- 住み替えても生活上大きな支障がない
- 居住に必要のない土地や建物が付属している
不動産は原則として売却による活用が求められますが、居住用の土地・家屋は、処分価値、利用価値、売却可能性、世帯事情などを総合的に見て判断されます。
4.売却が必要でも、直ちに保護されないとは限りません
売却すべき不動産があっても、現金化に時間がかかり、現在の生活費がない場合があります。
この場合は、必要に応じて保護を開始し、売却後に得た代金から、それまで支給された保護費の返還を求める取扱いが検討されます。
つまり、
売れる不動産があるから、売れるまで一切保護しない
とは限りません。現在の困窮状態や売却の可能性・所要期間を踏まえて判断されます。
ただし、福祉事務所から合理的な売却・活用の指導を受けたにもかかわらず、正当な理由なく従わない場合は、資産活用を怠っているとして、申請却下や保護の停廃止につながる可能性があります。
5.購入の経緯も調査されます
福祉事務所は、次のような事項を確認します。
- 不動産の購入時期と購入価格
- 購入資金の出所
- 購入時点の収入・預貯金
- 購入後の生活費をどのように考えていたか
- 生活困窮が予想できたか
- なぜ賃貸ではなく購入したのか
- 売主が親族や知人ではないか
- 購入価格が適正だったか
- 財産を隠したり、第三者へ移したりする目的がなかったか
- 住宅ローンの有無と返済額
特に、生活保護を受けることを見越して、生活費として使える現金を不自然に不動産へ移した場合には、厳しく調査されます。
ただし、申請前の不適切な金銭使用を理由に、現在の困窮状態を無視して制裁的に保護を拒否することは適切ではありません。まず現在の要保護性を判断し、そのうえで不動産の活用や今後の生活設計について指導することになります。
6.住宅ローンが残っている場合
住宅ローンがある持ち家については、特に注意が必要です。
生活保護費は、原則として住宅ローンの元本返済に充てることを想定していません。保護費によって住宅資産を形成する結果になるためです。
そのため、
- ローン返済を続けながら保護を受けられるか
- 売却が必要か
- 親族などがローンを負担できるか
- 任意売却などを検討すべきか
について、個別に判断されます。
住宅ローンが残っているから必ず申請できないわけではありませんが、ローン返済を前提とした保護の継続は難しくなる場合があります。
具体例
申請者が1,000万円の預貯金を使って、本人が住むための中古住宅を購入し、その後、収入がなくなって生活保護を申請したとします。
保有が認められる可能性があるケース
住宅が小規模で処分価値も高くなく、家賃を払って賃貸住宅に住むより、そのまま住み続ける方が合理的な場合です。
この場合は、住宅を保有したまま保護が開始される可能性があります。
売却を求められる可能性があるケース
購入した住宅が高額で、売却すれば多額の生活資金を確保でき、安価な住宅へ移ることも可能な場合です。
この場合は、売却などによる資産活用を求められる可能性があります。ただし、売却まで生活できない場合には、保護を開始したうえで、売却後に費用を精算する取扱いが検討されます。
まとめ
不動産購入によって手持ち資金を使い果たした後に生活保護申請があった場合は、次のように対応されます。
- 申請は受け付け、現在の困窮状態を審査する
- 購入した不動産の価格・利用状況・売却可能性を調査する
- 居住用として適正なら、保有を認めたまま保護することがある
- 価値が著しく高い場合は、売却や貸付けなどの資産活用を求める
- 売却まで生活できない場合は、保護を先に行い、売却後に精算する場合がある
- 購入経緯が不自然な場合でも、現在の困窮を無視して機械的に却下するのではなく、個別に判断する
したがって、重要なのは、「購入したこと」そのものではなく、その不動産を最低生活のためにどのように活用できるか、保有を認めることが生活維持や自立に役立つかという点です。
(A2)不動産の売却価値がそれほど高くなくても、その不動産を購入したことが直接の原因で生活困窮に陥った場合は、原則として、福祉事務所はその不動産を売却・処分し、生活の立て直しに活用するよう指導することになります。
これは、不動産の価格だけでなく、購入によって最低生活を維持できなくなったという経緯を重視する考え方です。
なぜ売却指導が必要なのか
生活保護は、本人が利用できる資産を最低生活の維持に活用したうえで、なお不足する部分を保障する制度です。生活保護法第4条の「補足性の原理」により、活用できる資産は原則として生活維持のために活用する必要があります。厚生労働省の実施要領でも、最低生活に必要でない資産は、一定の例外を除き、原則として処分するものとされています。
例えば、手持金が500万円あり、そのお金を生活費に使えば当面生活できたにもかかわらず、将来の維持費や生活費を考えずに400万円の不動産を購入し、その直後に生活費がなくなった場合です。
不動産の売却価格が低くても、購入行為そのものが困窮の原因であれば、
不動産を購入しなければ、手持金で生活を維持できた
と考えられるため、その不動産の活用・処分を求める必要があります。
購入前の指導方針
本人が不動産の購入を検討しており、購入すればその後の生活費、固定資産税、修繕費などを負担できず、生活維持が困難になることが社会通念上予想される場合は、次のように指導します。
不動産の購入を見合わせ、まず現在および今後の生活費を確保するよう助言・指導することが基本です。
居住用の土地や家屋は一定の場合に保有が認められますが、それは、その家に住み続けることが生活維持や自立に役立つ場合です。居住用だから、どのような購入でも認められるわけではありません。
すでに購入して生活困窮に陥った場合
福祉事務所は、直ちに一律の判断をするのではなく、次の事情を調査します。
- 購入した時期と購入価格
- 購入時の預貯金や収入
- 購入後の生活費を確保していたか
- 住宅ローンや固定資産税、修繕費の有無
- 本人が生活困窮を予測できたか
- 購入にやむを得ない事情があったか
- 現在の利用価値と売却可能性
- 売却費用を差し引いて利益が残るか
そのうえで、購入が困窮の直接的な原因と認められる場合は、売却、賃貸その他の方法によって資産を活用するよう指導します。資産活用は売却が原則ですが、売却が難しい場合には、賃貸して収益を得るなど、別の活用方法も検討します。
処分価値がほとんどない場合
売却代金よりも売却費用の方が高い、買い手が見つからないなど、現実に処分が困難な場合は、無理に売却しても生活維持には役立ちません。
厚生労働省の実施要領では、次のような資産は処分の例外となり得ます。
- 処分できない、または処分が著しく困難なもの
- 売却代金より売却費用の方が高いもの
- 社会通念上、処分させることが適当でないもの
したがって、売却指導を行っても実際に処分できない場合は、査定書や不動産業者の意見などによって処分可能性を確認し、保有を容認することがあります。
ただし、固定資産税や管理費、修繕費などが継続的に生活を圧迫する場合は、単に「価値が低いから保有を認める」のではなく、放棄、売却、賃貸、共有持分の整理など、負担を減らす方法を検討する必要があります。
指導の進め方
最初から保護を停止・廃止するのではなく、通常は次の順序で対応します。
- 購入経緯や生活状況を調査する
- 売却・賃貸などの活用方法を具体的に説明する
- まず口頭で助言・指導する
- 正当な理由なく従わない場合は、生活保護法第27条による文書指示を検討する
- 文書指示にも従わない場合は、弁明の機会を設けたうえで、保護の変更・停止・廃止を検討する
指導指示は、本人の能力、健康状態、世帯事情などに配慮し、実行可能で具体的な内容にしなければなりません。
まとめ
購入すれば生活が維持できなくなることが予想される場合は、不動産購入を断念し、まず生活費を確保するよう指導するのが基本です。
すでに購入し、その購入が生活困窮の直接の原因となった場合は、処分価値が高くなくても、原則としてその不動産を売却・活用するよう指導します。
ただし、実際に売れない、売却費用の方が高いなどの場合は、形式的に売却を強制するのではなく、処分可能性や維持費、本人の事情を調査し、保有容認や別の活用方法を個別に判断します。
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