(Q3)耕作者が農地を購入する能力がなく、またその土地を返還すると生活が困窮する場合、農地の売却は現実的に可能なのでしょうか?(Q4)賃借権が設定されている農地について、購入希望者が耕作できない場合、その農地を相応の価格で売却することは可能ですか?

(A3)このような事情がある場合、農地の売却は法律上まったく不可能とは限りませんが、現実にはかなり難しくなる可能性があります

特に、耕作者が農地を買い取れず、農地を返還すると生活や農業経営が成り立たなくなる場合は、耕作者が賃貸借契約の終了に同意しないことが考えられます。農地の賃借権は強く保護されており、所有者が一方的に簡単に契約を終了させることはできません。農地の賃貸借の解除や更新拒絶には、原則として農地法第18条による許可が必要です。

1.耕作者に土地を返してもらうのが難しい

耕作者が返還に同意しない場合、土地所有者は、単に「農地を売却したい」という理由だけで明渡しを求めることはできません。

農地法上、賃貸借の解約が認められるのは、例えば次のような事情がある場合です。

  • 耕作者に重大な契約違反がある
  • 農地を転用することが相当である
  • 所有者が自ら耕作する必要性がある
  • その他、解約を認める正当な事情がある

耕作者が適正に耕作し、その農地を失うと生計が成り立たなくなる場合は、解約を認めるかどうかの判断で、耕作者側の生活事情も重要な要素になります。したがって、生活保護を申請した所有者が売却を希望しているという事情だけで、必ず解約許可が得られるとはいえません。

2.賃借権を残したまま売却する方法もある

耕作者に返還してもらわなくても、賃貸借契約が付いた状態で農地を売却すること自体は検討できます。

ただし、買主は農地を自由に使用できず、引き続き耕作者に使用させることになるため、

  • 買主が限定される
  • 売却価格が低くなる
  • 買手が見つからない
  • 農地法上の許可手続が必要になる

などの問題が生じます。農地の売買には、原則として農業委員会の許可など、法律に基づく手続が必要です。

3.離作料を支払う余力がない場合もある

耕作者に合意して返還してもらうために、離作料や作物補償などが必要になることがあります。

しかし、土地所有者が生活に困窮している場合、先に離作料を支払う資力がないこともあります。また、売却代金に比べて離作料、測量費、仲介手数料などが高額になる場合には、実際に生活費へ充てられる金額がほとんど残らない可能性があります。

4.生活保護上の取扱い

福祉事務所は、単に農地を所有しているという理由だけで、形式的に「売却してください」と判断するのではなく、実際に処分できるかを調査する必要があります。

確認されるのは、主に次の事項です。

  • 賃貸借契約の内容
  • 耕作者が返還に応じる可能性
  • 農地法第18条の解約許可が得られる可能性
  • 賃借権付きで売却できるか
  • 査定額や買手の有無
  • 離作料などの必要経費
  • 現在得ている賃料収入

生活保護の実施要領では、資産は売却による活用が原則ですが、売却が難しい場合は貸与によって収益を得る方法も検討するとされています。また、処分できない、または処分が著しく困難な資産については、直ちに処分を求めない取扱いがあります。

福祉事務所が考える現実的な対応

このケースでは、次のような順序で検討するのが適切です。

  1. 耕作者による買取りができないことを確認する
  2. 賃借権付きでの売却可能性を不動産業者や農業委員会に確認する
  3. 耕作者との合意解約や離作料の可能性を検討する
  4. 売却が現実的に困難であれば、賃料収入を生活費に活用する
  5. 客観的に売却困難であることを確認したうえで、農地の保有を認めるか判断する

まとめ

耕作者に購入能力がなく、農地を返還すると生活が困窮する場合、耕作者が契約終了に同意しない可能性が高く、農地の売却は現実には難しくなります。

ただし、直ちに「絶対に売却できない」と判断するのではなく、賃借権付き売却、合意解約、農地法上の解約許可、売却価格や離作料などを具体的に調査します。

その結果、買手がなく、解約許可も見込めず、売却経費も過大である場合には、生活保護上、**「処分することができない、または著しく困難な資産」**として、当面は保有を認め、賃料収入を生活費に充てる取扱いが考えられます。

(A4)購入希望者が自ら耕作することができない場合、農地のまま相応の価格で売却することは、一般的には難しくなります

農地の売買には原則として農地法上の許可が必要であり、買主が取得後に農地を適切に利用する見込みがない場合は、許可されない可能性があるためです。農地の売買・貸借には、農業委員会の許可など法律上の手続が必要です。

1.買主が耕作しなくても、直ちに売買不可能とは限りません

現在は、買主本人が必ず農作業をすることまで一律に求められるわけではありません。

ただし、買主またはその世帯員・従業員などが、取得する農地を効率的かつ適切に農業利用することが必要です。

したがって、購入希望者が、

  • 農業を行う予定がない
  • 誰にも耕作させる予定がない
  • 資産として保有するだけである
  • 将来の値上がりや転用だけを目的としている

という場合は、農地法上の許可を受けることが難しくなります。

2.賃借権付きのまま売却すると、買主が限定されます

賃借権が設定され、現在の耕作者が引き続き耕作する場合には、所有権だけを第三者へ売却する方法も考えられます。

しかし、買主は購入後も、原則として既存の賃貸借関係を受け入れることになります。そのため、

  • 買主が自由に使用できない
  • 得られる利益が小作料などに限られる
  • 耕作者から返還を受けられる時期が分からない
  • 将来の転用や開発が不確実である

といった制約があります。

結果として、購入希望者が少なくなり、更地や賃借権のない農地と同程度の価格で売ることは難しくなる可能性があります。

3.所有者が変わっても、耕作者を簡単に退去させられません

農地の賃借権には、農地法上の強い保護があります。

買主が所有権を取得しても、それだけで耕作者との契約を終了できるわけではありません。賃貸借の解除、解約の申入れ、更新拒絶などには、原則として農地法第18条の許可が必要です。

そのため、「購入後に耕作者を退去させて自分で使う」という前提の買主は、購入をためらう可能性があります。

4.転用を前提に売却する場合

工場、住宅、駐車場など、農地以外の用途に使う目的で売却する場合には、農地転用の許可や届出が必要です。

転用が許可される見込みがあり、立地条件が良ければ、高い価格で売却できる可能性があります。

一方で、

  • 農用地区域内の農地である
  • 優良農地として保全されている
  • 転用許可の基準を満たさない
  • 現在の賃借権を解消できない

といった場合は、転用目的の売却も困難です。

生活保護上の判断

生活保護の資産調査では、単に固定資産評価額や周辺の土地価格を見るだけではなく、実際に売却できる価格を確認する必要があります。

特にこのケースでは、次の事情が重要です。

  • 賃借権付きで買い手が見つかるか
  • 買主が農地法上の許可を受けられるか
  • 現在の小作料はいくらか
  • 耕作者との契約を解消できるか
  • 離作料などが必要か
  • 農地転用が可能か
  • 売却費用を差し引いて、手元にいくら残るか

調査の結果、賃借権付きでは買い手がなく、耕作者による買取りもできず、転用も困難であれば、相応の価格での売却は現実的に困難と判断される可能性があります。

まとめ

購入希望者が農地を耕作できず、取得後も適切に農業利用する見込みがない場合は、農地法上の許可を受けにくいため、農地のまま売却することは難しくなります。

また、賃借権付きで売却できる場合でも、買主の利用が制限されるため、買い手が限られ、売却価格も低くなりやすいと考えられます。

したがって、形式的には売却の可能性があっても、通常の市場価格や相応の価格で売却できるとは限らず、実際の許可見込み、買手の有無、賃借権の内容などを調査して判断する必要があります。

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