(Q5)このような状況下で、所有者の資産(農地)をどのように活用すべきと考えられますか?

(A5)このような農地は、無理に安値で売却するのではなく、まず賃貸による収益を生活費に活用する方法が現実的です。

生活保護では資産の売却が原則ですが、売却が難しい場合には、資産を貸して収益を得るなど、別の活用方法を検討するとされています。

このケースで考えられる活用方法

1.現在の賃貸借を継続して、賃料を生活費に充てる

耕作者が現に農地を耕作しており、農地を返還すると生活が困窮する一方、賃借権付きでは適正な価格で売却できない場合には、現在の耕作者への賃貸を継続する方法が考えられます。

所有者が受け取る小作料・賃料は、原則として生活保護上の収入として申告し、必要経費を差し引いたうえで保護費の計算に反映されます。

つまり、

農地を売却して一度に現金化するのではなく、賃料収入を継続的に生活費へ充てる

という活用方法です。

2.賃料が適正か確認する

長年同じ耕作者に貸している場合、賃料が周辺相場より著しく低いことがあります。

その場合には、農業委員会が公表する地域の借賃水準などを参考にして、耕作者の経営状況にも配慮しながら、適正な賃料への見直しを検討します。

ただし、所有者が一方的に大幅な値上げをすればよいということではなく、契約内容や地域の相場を確認し、当事者間で協議する必要があります。

3.賃借権付きでの売却可能性も調査する

売却が難しいと考えられる場合でも、直ちに売却不能と決めるのではなく、

  • 現在の耕作者による買い取り
  • 近隣農家への売却
  • 賃借権付きの所有権売却
  • 農地中間管理機構などを通じた活用

が可能かを農業委員会や不動産関係者に確認します。

農地の売買・貸借には、農地法や農地中間管理事業に基づく手続が必要です。

4.売却が著しく困難であることを客観的に確認する

次のような事情が確認できれば、生活保護上、当面の保有が認められる可能性があります。

  • 耕作者が契約終了に同意しない
  • 農地法上、賃貸借を終了させる許可が見込めない
  • 賃借権付きでは買手が見つからない
  • 売却価格が著しく低い
  • 離作料や測量費などを差し引くと、ほとんど利益が残らない

生活保護の実施要領では、「処分することができない、または著しく困難な資産」や「売却代金より売却経費が高い資産」は、直ちに処分させる対象から除かれています。

福祉事務所の適切な対応

このケースでは、福祉事務所が単に「農地を所有しているから売却してください」と指示するのではなく、次の順序で検討するのが適切です。

  1. 賃貸借契約、小作料、契約期間を確認する
  2. 農業委員会に賃貸借終了や売買の可能性を照会する
  3. 耕作者、近隣農家などへの売却可能性を確認する
  4. 賃借権付きの査定額や売却経費を確認する
  5. 売却困難なら賃貸を継続し、賃料収入を活用する

なお、農地の賃貸借の解約には農地法上の制限があり、「その他正当な事由」などの許可要件を満たすかが問題になります。

まとめ

この農地については、

売却できる適正な価格や買手がある
→ 売却による活用を検討します。

売却は難しいが、賃料を得られる
→ 賃貸を継続し、賃料収入を生活費に充てます。

売却も賃貸収入の確保も困難である
→ 処分が著しく困難な資産として、当面の保有を検討します。

したがって、この状況では、耕作者の生活を直ちに奪ってまで形式的に売却させるのではなく、農地の売却可能性を客観的に調査したうえで、現在の賃料収入を最大限生活維持に活用することが現実的な対応です。

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