(Q)「遺言書を法務局で保管できる新しい制度ができたと聞きました。この制度はどのようなものですか? また、利用することでどんな利点がありますか?」

(A)「法務局で遺言書を保管できる新しい制度」は、正式には 自筆証書遺言書保管制度 を指します。以下、その内容と利用のメリット(および注意点)を整理します。


✅ 制度の内容 ― どんな制度か

  • 自筆で書いた遺言書(いわゆる「自筆証書遺言」)を、本人の申請により 法務局 の専用保管所(遺言書保管所)に預け、保管してもらえる制度です。
  • この制度は、2020年(令和2年)7月10日に施行されました。
  • 遺言書の原本が法務局で厳重に保管されるだけでなく、遺言書を画像データ化してコンピュータで管理することも可能。死亡後は、相続人等が内容を確認したり証明書を請求したりできます。
  • 遺言書の保管を希望する場合、遺言者本人が本人確認書類を持って、あらかじめ予約したうえで、遺言保管所に出頭し申請する必要があります(代理人ではできません)。

✅ 利点(この制度を利用するメリット)

この制度の導入によって、自筆証書遺言を「より安全かつ実用的に」利用しやすくなっています。具体的なメリットは次のとおりです。

  • 紛失・隠匿・改ざんの防止
    自宅で遺言書を保管していた場合にあった「紛失」「誤って廃棄」「第三者による書き換え・隠匿」といったリスクが大幅に軽減されます。法務局の厳重な管理下で保管されるため安心です。
  • 形式不備による無効のリスク低減
    遺言保管を申請する段階で、法務局の職員が遺言書の「形式(様式)」についてチェックをしてくれます。これにより、要件を満たしていないために遺言が無効になるリスクを減らせます。
  • 相続時の「検認」が不要
    通常、自筆証書遺言は死後に家庭裁判所で「検認」という手続きを経なければなりませんが、法務局で保管されている遺言書はこの検認が不要です。つまり、相続手続きがスムーズになります。
  • 遺言の存在が通知され、発見されやすくなる
    遺言者の死亡が確認された後、保管された遺言書の存在があらかじめ指定した相続人等(申請時に記載する)に通知される制度があります。これにより、「遺言を書いていたのに、見つからない/遺族が知らなかった」という事態を防ぎやすくなります。
  • 全国どこでも照会が可能
    遺言書はネットワーク管理されており、たとえ保管した法務局と異なる地域に相続人が住んでいても、近くの法務局で「遺言書が保管されているか」「内容の証明書(遺言書情報証明書)」を請求できる場合があります。これにより、相続手続きの利便性が上がります。

⚠️ 注意点・制度の限界

ただし、いくつか注意すべき点・制限があります。

  • 遺言内容そのものについて、法務局では法的妥当性や内容の「妥当性」をチェックしてくれるわけではありません(あくまで形式チェックのみ)。遺言内容をどうするかは、必要に応じて専門家(弁護士・司法書士・行政書士など)に相談することが望ましいです。
  • 保管申請などの手続きは、遺言者本人が法務局へ出頭する必要があり、代理人による手続きは認められていません。したがって、高齢・病気・入院中などで来局が困難な人は利用しづらい点があります。
  • 手数料(たとえば保管申請で 1通あたり3,900円)がかかります。自宅保管なら無料なので、「できるだけ費用を抑えたい」という人にとってはコストと感じるかもしれません。

🎯 なぜこの制度は注目されているか/制度の意義

特に、相続人間で争いやトラブルになりやすい事案、財産構成が複雑な人、あるいは家族に遺言の存在を知られたくない人などにとって、「安心して遺言を残せる」「死後の手続きがスムーズになる」という観点で、有力な選択肢となります。

これまで「自筆証書遺言」は、手軽さや無償性などのメリットがある一方で、「紛失・改ざん・無効のリスク/検認の手間」といった大きなデメリットがあり、実用性に課題がありました。今回の制度は、そうした問題をかなりの程度で解消する仕組みです。