(Q3)このような扶養照会を回避するために、弁護士としてできることは何かありますか?
(A3)はい、あります。弁護士としては、単に「扶養照会をしないでください」と口頭でお願いするだけではなく、「このケースは厚生労働省通知上、扶養義務の履行が期待できず、本人への直接照会が適当ではない」ことを具体的な事実と資料で福祉事務所に示すことが重要です。
厚生労働省は、扶養義務者がいても、著しい関係不良、虐待・DV等の経緯などがあり、扶養を求めることで本人の自立を阻害する場合には、直接の扶養照会を行わない取扱いを認めています。また、「扶養義務の履行が期待できない」と判断された者には、基本的に直接照会を行わないという考え方が明確にされています。
弁護士として特に有効なのは、まずAさんから事情を詳しく聴き取り、扶養照会を避ける必要性を意見書や申入書として書面化することです。たとえば、「父Bとは○年間連絡がない」「過去に暴力・虐待・威圧的言動があった」「現在地を知られることに強い恐怖がある」「連絡があれば精神的・生活上の安定が大きく損なわれる」といった事情を、できるだけ具体的に整理します。
さらに、裏付けとなる資料があれば添付します。たとえば、過去の警察への相談記録、DV相談記録、診断書、支援機関の意見書、LINE・メール等の記録、接近禁止命令関係資料などです。ただし、こうした証拠がなければ扶養照会を回避できないという意味ではありません。 本人からの具体的な聴き取り自体が重要な判断材料になります。厚労省通知も、扶養可能性の判断について本人からの聞き取りを基本としています。
そのうえで福祉事務所に、**「父Bへの直接照会は行わず、その判断をケース記録に明記してください」**と申し入れることが考えられます。実施要領の問答でも、直接照会をしないと判断した場合には、その検討結果と判定をケース記録等に明確に記載する必要があるとされています。
また、父親がAさんの現在地を知らないケースでは、福祉事務所名や住所などから居場所を推測されないよう、情報管理にも十分配慮するよう求めることが重要です。直接照会をしない場合でも、必要に応じて関係機関への確認が行われる場合があるため、その際にもAさんの所在地等が不用意に伝わらないよう申し入れることができます。
もし担当ケースワーカーが「親なんだから必ず照会します」と説明する場合には、弁護士から担当者だけでなく、査察指導員や保護課の責任者に対して、厚労省実施要領・令和3年の扶養照会見直しの趣旨を示しながら再検討を求めることも考えられます。厚労省は、扶養は生活保護の「要件」ではなく、実際に扶養が行われた場合に保護に優先するものだと明確にしています。
要するに、弁護士としてできることは、**「①本人から具体的事情を聴取する → ②扶養照会による危険・自立阻害を意見書等にまとめる → ③必要に応じて裏付け資料を添付する → ④父への直接照会をしないよう正式に申し入れる → ⑤その判断をケース記録に残すよう求める → ⑥必要なら上席者と協議する」**という流れです。
つまり、扶養照会は「親がいる以上どうしても避けられないもの」ではなく、弁護士が事情を法的・具体的に整理して福祉事務所へ示すことで、直接照会を回避できる可能性は十分あります。
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