(Q)父の相続人は兄と私の2人です。父は「全財産を私に相続させる」という自筆の遺言書を残していたはずですが、兄が父の危篤時の混乱に乗じてその遺言書を隠した、または破棄した可能性があります。それにもかかわらず兄は遺産分割の場に遺言書を出しません。このような行為をした場合、兄は相続人としての権利を失うことはないのでしょうか?
(A)■ 相続欠格となる行為(民法891条)
相続人が次のような行為をすると、相続権を失います。
⑴ 遺言書を「破棄・隠匿・偽造・変造」した場合
→ 今回のケースに最も該当する可能性がある部分です。
遺言の内容に不満を抱いた相続人が、
「遺言書を見せない」「破り捨てる」「書き換える」 ——
などをした場合、法律上、相続人としての資格を失うことになります。
※ただし、相続欠格となるには
“故意に”隠した・破棄したことが証明される必要があります。
■ 相続欠格が認められるために必要なこと
相続欠格は非常に強い制裁なので、
「兄が怪しい」「出してこない」というだけでは認められません。
必要なのは次の点です。
● 遺言書の存在が客観的に認められること
(例)
- 父が遺言書を作ったと周囲が証言している
- 作成時に立ち会った人がいる
- 遺言書のコピーや下書きが残っている
- 公正証書遺言の作成相談をしていた記録がある
● 兄が意図的に破棄・隠匿したことが証明できること
これは難易度が高く、証拠(メール、録音、兄の発言、第三者の証言など)が必要になります。
■ 実務上の対応方法
- 家庭裁判所に「遺言書の調査嘱託」を求めることも可能です。
保管されていた可能性のある場所(銀行の貸金庫など)を裁判所が調査します。 - 遺産分割調停・審判で遺言書が隠された疑いを主張する
兄に対して「遺言書の有無」「保管状況」の説明が求められます。 - 兄の相続欠格を主張することも可能
ただし、証拠が不十分だと認められません。
現実にはハードルが高く、最終的には「遺言書が存在したかどうか」が大きな争点になります。
■ まとめ
相続欠格を認めてもらうには客観的な証拠が必要
遺言書を故意に破棄・隠した相続人は相続権を失う(相続欠格)
しかし、その故意を立証するのは簡単ではない
家庭裁判所での調査や調停・審判での主張は可能