(Q1)親と未成熟の子との関係について、生活保持義務関係はどのように考えるべきですか?(Q2)「要保護者が自己に対し生活保持義務関係にある者がいない世帯」として世帯分離の要件を判断する際、親と未成熟の子の関係はすべて生活保持義務関係に該当しますか?(Q3)常時の介護を要する重度の心身障害者(甲)、成熟した長男(乙)、未成熟の次男(丙)からなる世帯で、乙に一定の稼働収入があり自分自身および丙の最低生活の維持が可能な場合、甲だけを世帯分離して保護することは可能ですか?
(A1)親と未成熟の子(まだ自立して生活できない子ども)との関係は、法律上 「生活保持義務」 があると考えられています。
わかりやすく言うと
親は、自分が生活できる範囲で援助するだけでは足りず、自分と同じ程度の生活を子どもにも保障しなければならないという強い義務を負っています。
例えば、
- 親は十分な収入があり普通の生活をしている
- 子どもには食事や衣服、住居、教育費が必要
この場合、親は「自分の生活費だけ確保して、余った分だけ子どもに渡す」という考え方はできません。
子どもが未成熟である以上、
- 食費
- 衣服費
- 住居費
- 医療費
- 教育費
などを負担し、子どもが親と同程度の生活水準で暮らせるようにする義務があります。
生活保持義務と生活扶助義務の違い
| 生活保持義務 | 生活扶助義務 |
|---|---|
| 自分と同じレベルの生活を相手にも保障する義務 | 余裕がある範囲で援助する義務 |
| 親子(未成熟子)、夫婦間など | 兄弟姉妹、叔父叔母など |
| 義務が強い | 義務が比較的弱い |
生活保護との関係
生活保護では、未成熟の子どもについては親に生活保持義務があるため、福祉事務所は親に対して扶養照会を行うことがあります。
ただし、
- 親が低所得
- 親自身が生活困窮
- DVや虐待がある
- 長期間交流がない
などの場合は、実際には扶養を求めないこともあります。
行政書士実務での説明例
「未成熟の子どもに対する親の扶養義務は『生活保持義務』と呼ばれ、自分と同程度の生活を保障しなければならない強い義務です。そのため、生活保護制度でもまず親による扶養の可能性が検討されます。ただし、親に十分な資力がない場合や特別な事情がある場合には、生活保護の利用が妨げられるものではありません。」
このように理解しておくと、生活保護申請や扶養照会の場面でも説明しやすいでしょう。
(A2)結論からいうと、親と未成熟の子(未成年の子など)の関係は、原則として生活保持義務関係に該当します。
ただし、「親子だから必ず同一世帯として扱われる」という意味ではありません。
生活保持義務とは?
民法上、親は未成熟の子に対して強い扶養義務(生活保持義務)を負っています。
生活保持義務とは、
「自分と同程度の生活を維持させる義務」
のことです。
例えば、
- 父と15歳の子
- 母と小学生の子
- 離婚後に同居している親と高校生の子
などは、通常、生活保持義務関係にあります。
世帯分離との関係
生活保護では、
「要保護者が自己に対し生活保持義務関係にある者がいない世帯」
かどうかが問題になることがあります。
親と未成熟の子が同居している場合は、通常は生活保持義務関係があるため、
- 親だけを生活保護
- 子だけを生活保護
というような世帯分離は認められにくいです。
例外的なケース
次のような場合には、実質的に別世帯として取り扱われることがあります。
- 子が児童養護施設に入所している
- 子が長期間入院している
- DV避難中で事実上別居している
- 親権者が監護していない
- 家庭裁判所の決定等により別居している
このようなケースでは、形式上親子でも実質的な生活保持関係がないと判断されることがあります。
行政実務上の考え方
生活保護実務では、
「未成熟の子とその親は原則として生活保持義務関係にある」
という前提で運用されています。
したがって、
「親と未成熟の子の関係はすべて生活保持義務関係に該当しますか?」
という質問に対する答えは、
原則として該当します。
ただし、施設入所、長期別居、DV避難などの特別な事情により、実質的に生活保持義務関係が及んでいないと認められる場合は例外があります。
となります。
生活保護の世帯分離に関する実務では、親子関係の有無だけでなく、「現実に誰が子を監護・養育しているか」「生活を一体としているか」が重要な判断要素になります。
(Q3)はい、一定の場合には可能です。
生活保護では原則として「世帯単位の原則」があり、同じ世帯の家族はまとめて保護の要否を判断します。
しかし、ご質問のケースでは、
- 甲:常時介護が必要な重度の心身障害者
- 乙:成人した長男で収入があり、自分と弟(丙)の生活を維持できる
- 丙:未成熟の次男
という状況です。
この場合、乙の収入で乙と丙の生活が成り立っていても、甲については障害や介護のために特別な生活費や介護費用が必要となり、甲自身の生活を維持できないことがあります。
そのような場合には、福祉事務所が
「甲のみを別世帯として取り扱う(世帯分離)」
ことを認め、甲だけに生活保護を適用することがあります。
わかりやすく言うと
例えば、
- 長男(乙)の給料:月20万円
- 乙と丙の生活費:月18万円
であれば、乙と丙は生活できています。
しかし、
- 甲は重度障害で介護用品や通院費などが必要
- 年金等の収入が少ない
という場合、甲の生活費まで乙に負担させるのが適当でないと判断されれば、
「乙・丙」と「甲」を分けて考え、甲だけ生活保護を受ける
ことがあります。
根拠となる考え方
厚生労働省の生活保護実施要領では、
- 重度障害者
- 長期入院者
- 社会的に独立した生計を営む者
などについては、実態に応じて世帯分離を認める取扱いがあります。
行政書士実務上のポイント
福祉事務所には次の事情を説明するとよいでしょう。
- 甲が重度障害者で常時介護を要すること
- 乙の収入は乙と丙の生活費でほぼ消費されていること
- 甲の医療・介護・日常生活費を乙が負担することが困難であること
- 甲について個別に保護を必要とすること
これらが認められれば、甲のみを被保護者として取り扱う世帯分離保護が認められる可能性があります。
したがって、ご質問のケースでは、
「乙の収入で乙と丙の最低生活が維持でき、甲が重度障害により特別な保護を必要とする場合には、甲のみを世帯分離して生活保護を行うことが可能です。」
というのが回答になります。
⇓