(Q1)障害者が退院後、居宅において疾病のため日常起居動作に著しい支障がある場合、どのような生活支援や介護の取り扱いが行われますか?(Q2)退院した障害者が介護人を得られない場合、どのような支援策や制度が適用されますか?
(A1)退院後、自宅で生活する際に、疾病や障害のため食事・入浴・着替え・排せつ・移動などの日常生活動作に著しい支障がある場合は、本人の状態に応じて、訪問介護などの公的サービスを利用する取扱いになります。
1.まず利用を検討する支援
年齢や障害の状況に応じて、次の制度を優先して利用します。
- 障害福祉サービスの居宅介護、重度訪問介護
- 介護保険の訪問介護、訪問看護、福祉用具貸与
- 訪問診療や訪問リハビリ
- 入浴、排せつ、食事、掃除、買物などの支援
- 義手の装着訓練や退院後のリハビリ
- 必要に応じた短期入所や施設利用
生活保護受給者については、介護保険サービスの自己負担分などは、要件を満たせば介護扶助の対象になります。医療上必要な訪問看護やリハビリは、医療扶助の対象となる場合があります。
2.介護する人を個人的に付ける場合
重度の障害があり、現実に他人の介護を必要とする場合には、生活扶助の障害者加算に関連して、**介護人を付けるための費用(一般に「他人介護料」と呼ばれます)**が認定される場合があります。
令和8年4月1日施行の生活保護基準では、通常の取扱いとして、介護人を付けるために実際に費用が必要な場合、月額7万5,820円の範囲内で必要額を認定する規定があります。
さらに、通常の基準では対応できず、一定以上の重度障害があり、日常起居動作に著しい障害があるため、真に他人による介護が必要と認められる場合には、特別基準として月額11万3,740円の範囲内で必要額を認定できる取扱いがあります。
ただし、これは単に「一人暮らしが不安」「家事が難しい」というだけで自動的に支給されるものではありません。
- 医師の診断や意見
- 身体障害者手帳などの障害程度
- 食事、排せつ、入浴、移動などの介護の必要性
- 実際に誰がどのような介護をするか
- 障害福祉サービスや介護保険で対応できないか
- 実際に介護費用を支払っているか
などを福祉事務所が確認して決定します。
3.家族が介護する場合
重度の障害により、日常生活のすべてについて介護が必要な人を、同一世帯の家族が介護する場合には、一定の要件の下で家族介護料が認められる場合があります。
家族介護料と他人介護料は、原則として同時には算定されません。令和8年度の生活保護基準では、家族介護料は月額1万3,890円とされています。
4.今回のケースで行う手続
愛媛県の病院から退院後に大阪へ転居する予定であれば、退院前に病院の医療ソーシャルワーカー、福山市のケースワーカー、大阪の転居先自治体の障害福祉担当者で、次の内容を調整してもらうことが重要です。
- 退院後に一人でできる動作と、介助が必要な動作を確認する
- 障害支援区分の認定や障害福祉サービスの申請を行う
- 居宅介護、重度訪問介護、訪問看護などの利用計画を作る
- 大阪の住宅が車いすや義手使用に適しているか確認する
- 公的サービスだけで不足する場合は、他人介護料の対象になるか福祉事務所に相談する
つまり、退院後に日常生活へ大きな支障があれば、まずヘルパーや訪問看護などを組み合わせ、それでも対応できない特別な介護需要がある場合に、生活保護の介護人費用を検討するという順序になります。
(A2)退院後に必要な介護人・ヘルパーが確保できない場合は、本人を支援のない状態で退院させるのではなく、病院・福祉事務所・障害福祉担当部署などが連携し、別の支援方法を調整することになります。
主な支援策
1.他のヘルパー事業所を探す
一つの事業所で対応できなくても、市区町村や相談支援専門員が、複数の事業所に受入れを照会します。
利用が考えられるサービスは、主に次のとおりです。
- 居宅介護
入浴、排せつ、食事、着替え、家事、通院などの支援 - 重度訪問介護
重度の肢体不自由などがあり、常時介護を必要とする人への長時間・総合的な支援 - 訪問看護・訪問リハビリ
- 同行援護・行動援護
- 自立生活援助
一人暮らしを始めた人への定期訪問や相談対応
必要なサービス量は、本人の日常生活動作、夜間介護の必要性、家族の支援状況などから、自治体が障害支援区分や支給量を決定します。
2.短期入所を一時的に利用する
退院日までに在宅介護体制が整わない場合には、障害者支援施設等の短期入所、いわゆるショートステイを一時的に利用する方法があります。
緊急利用の受入先が満床などで利用できない場合でも、事業所には、別の事業所を紹介するなど適切に対応することが求められています。
ただし、短期入所は原則として一時的なサービスです。利用中に、居宅介護事業所や住居を探し、正式な退院後の生活体制を整えます。
3.グループホームや施設入所を検討する
一人暮らしでは安全を確保できず、必要な介護量も確保できない場合は、本人の希望を確認したうえで、次の住まいを検討します。
- 障害者グループホーム
- 日中サービス支援型グループホーム
- 障害者支援施設
- 介護保険施設
- 医療的ケアに対応できる施設
- サービス付き住宅など
生活保護受給者が退院と同時に介護施設へ入所する場合には、在宅生活とは異なる生活扶助・介護扶助の取扱いになります。厚生労働省の実施要領にも、退院と同時に介護施設へ入所する場合の取扱いが定められています。
本人が地域生活を希望している場合は、安易に施設入所だけを選ぶのではなく、まず在宅サービスを組み合わせて生活できないかを検討します。
4.介護人を確保するための費用を検討する
生活保護受給者で、重度の障害等により常時介護が必要な場合には、障害福祉サービスや介護保険を優先して利用します。
それでも対応できない特別な介護需要があり、実際に介護人を雇う必要がある場合には、福祉事務所が、
- 他人介護料の対象になるか
- 障害者加算の対象になるか
- 介護扶助で対応できるか
を検討することがあります。
ただし、介護人費用が現金で自動的に支給されるわけではありません。医師の意見、必要な介護内容、公的サービスで不足する時間、実際に介護を行う人などの確認が必要です。
5.住居や福祉用具を整える
介護人が少ない場合でも、住環境を整えることで一人でできる動作が増える場合があります。
例えば、
- 手すりの設置
- 段差の解消
- 電動ベッド
- 車いす
- 入浴補助用具
- 排せつ補助用具
- 緊急通報装置
- 配食サービス
- 福祉用具や補装具
などを組み合わせます。
車いすを使用する障害者など、通常より広い居室が必要な場合には、住宅扶助の家賃限度額について特別な取扱いが認められる場合もあります。
今回のように大阪へ転居する場合
愛媛県の病院から退院して大阪で生活する予定なら、退院前に次の関係者で話し合う必要があります。
- 病院の医療ソーシャルワーカー
- 主治医・リハビリ担当者
- 福山市のケースワーカー
- 大阪の転居予定地の福祉事務所
- 大阪の障害福祉担当部署
- 相談支援専門員
- 居宅介護・訪問看護事業所
特に、大阪の住所が決まってからヘルパーを探し始めるのでは遅い場合があります。物件を契約する前から、転居予定地域で必要な介護サービスが確保できるか確認することが重要です。
ケースワーカーや病院には、次のように伝えると分かりやすいです。
退院後は大阪で生活したいと考えていますが、食事、入浴、着替え、外出などに介助が必要です。介護人が確保できないまま退院することがないよう、障害福祉サービス、訪問看護、短期入所、グループホームを含めた退院支援会議を開いてください。
つまり、介護人が見つからない場合は、別の事業所を探す、複数のサービスを組み合わせる、短期入所を利用する、住まいを変更するなどの方法で、安全な退院先を整えることになります。
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