(Q3)移送費の支給について、どのような場合に認められますか?
(A3)結論
生活保護の移送費は、単に「外出する交通費が足りない」という理由では支給されません。
次の3つを満たす場合に、必要最小限度の交通費等が認められます。
- 国の実施要領に定める移送理由に該当する
- その移動が保護上、実際に必要である
- 他の制度や送迎などで費用を賄う方法がない
支給範囲は、原則として経済的・合理的な方法による交通費、必要な宿泊料、飲食物費です。乗車券を渡すなど、現物給付が基本とされています。
主に認められる場合
1.引き取り先や施設へ移る場合
例えば、次のような場合です。
- 住居も生活手段もない人を、親族など確実な引き取り先へ移送する
- 保護の必要上、遠隔地の救護施設などへ移送する
- 障害者支援施設や職業能力開発施設等へ入所・退所する
- やむを得ない転居に伴い、本人や家財を移送する
転居の場合は、福祉事務所が事前に承認した必要最小限度の荷造費・運搬費も対象になり得ます。
2.福祉事務所の指導で手続などに出向く場合
被保護者が福祉事務所の指示・指導を受けて、次の場所へ行く場合です。
- 他の法律による給付を申請する
- 施設への入所手続や施設見学・体験入所を行う
- 就職手続を行う
- 検診を受ける
- 求職活動や施設利用のため、熱心かつ誠実に活動する
- 世帯員として認定される家族を引き取りに行く
本人が自由に選んで出向く場合ではなく、保護や自立のために必要な手続であることが重要です。
3.施設への通所や一時帰省
次のような場合も対象になり得ます。
- 障害者支援施設や公共職業能力開発施設等への通所
- 施設入所者が、施設長の指導で一時帰省する
- やむを得ない事情により、家族が施設長の要請を受けて施設へ行く
ただし施設への通所費は、身体状況・地理・交通事情から、有料交通機関を使わなければ通所が不可能または極めて困難な場合に限られます。
4.家族の入院・危篤・死亡に関する移動
例えば、次の場合です。
- 世帯員が入院し、福祉事務所が認める最小限度の連絡のため病院へ行く
- 配偶者や一定範囲の親族が危篤となり、そのもとへ行く
- 配偶者や一定範囲の親族の葬儀へ参加する
- 他に引取人がいない近親者の遺体・遺骨を引き取る
- 遺骨を納めに行く
危篤・葬儀等は、事情を確認したうえで、福祉事務所がやむを得ないと認める場合に限られます。
5.出産・妊婦健診
被保護者が次のため病院や助産所へ移動する場合です。
- 出産のための入院・入所
- 出産後の退院・退所
- 公費負担の対象回数内の妊婦健診への通院・通所
この場合、必要性が認められれば、本人だけでなく必要な付添人の費用も対象になり得ます。
6.依存症からの回復や社会復帰支援
アルコールや薬物等の依存症がある人、またはその世帯員が、
- 回復支援団体の活動を継続的に利用する
- 原則として都道府県内の2泊3日以内の宿泊研修に参加する
- 保健所や精神保健福祉センターの社会復帰支援を利用する
場合で、それが世帯の自立に必要かつ有効と認められるときは、移送費の対象になり得ます。
7.その他の特別な場合
このほか、次の場合も定められています。
- 刑務所や少年院等の施設長から要請を受け、被保護世帯員が施設へ行く
- 子どもの養育費を請求する調停・審判のため家庭裁判所へ出頭する
- 被保護者健康管理支援事業に基づく受診勧奨を受け、健診や保健指導へ行く
これらも、その用事に必要な範囲の移動費に限られます。
通院・転院の移送費
病院への通院・転院は、生活扶助の移送費ではなく、通常は医療扶助の移送費として判断されます。
例えば、
- 身体状況により徒歩や公共交通機関で通院できない
- 近くの医療機関では必要な治療を受けられない
- 医師の指示によって緊急に転院する
- 離島などで、最寄りの適切な医療機関へ移送する
- 治療効果を確認するため、医学上必要な一時外泊をする
などです。
主治医の意見を確認し、福祉事務所が受診先、日数、経路、交通機関を審査して決定します。原則として、事前申請と領収書等の提出が必要です。
支給されない、または別の制度で扱う例
次の費用は、通常、移送費としては扱いません。
- 日常的な買物や私用の外出
- 個人的な旅行や帰省
- 就労先への通常の通勤費
- 保育所・幼稚園への通園費
- 職業訓練のための通常の通所費で、技能修得費の対象となるもの
- 必要性がないタクシー代
- 無料送迎や他制度を利用できるのに、本人の希望で別の方法を選んだ費用
これらは、必要経費控除、技能修得費、他法他施策など、別の仕組みで扱われる場合があります。
具体例
ケースワーカーの指導により、将来入所するグループホームを見学するため、電車とバスで往復した場合。
→ 施設入所手続の一環として必要と認められ、他に送迎手段がなければ、必要最小限度の交通費が移送費として認められる可能性があります。
一方、本人が個人的な興味で複数の施設を見て回る場合。
→ 福祉事務所の指導による入所手続ではないため、原則として移送費の対象にはなりません。
まとめ
移送費が認められるのは、
生活保護上必要な特定の移動であり、他に費用を賄う方法がなく、福祉事務所が必要性を認めた場合
です。
支給額は、必要最小限度の交通費等となります。特に緊急の場合を除き、移動する前にケースワーカーへ目的、行き先、日程、経路、交通手段、付添いの必要性を伝えて、事前承認を受けることが重要です。
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