(Q1)被保護世帯の子どもが地方公共団体の行う学習支援等の事業に参加する場合、交通費(移送費)の支給は認められますか?(Q2)学習支援等に参加する際の費用支給の手続きには、どのような規定がありますか?
(A1)結論
原則として、生活保護の「移送費」として交通費を支給することは認められません。
地方公共団体が行う学習支援・居場所づくりなどの事業に参加することは有益ですが、生活扶助の移送費は、通知で定められた特定の移動に限って認定されます。現在の移送費の対象には、学習支援事業へ継続的に通う場合は明記されていません。
なぜ支給されないのですか?
生活保護の移送費は、単に「必要な外出で交通費がかかる」というだけでは支給されません。
例えば、次のような場合が対象です。
- 福祉事務所の指導による施設入所手続・就職手続など
- 障害者支援施設や職業能力開発施設等への必要な通所
- 転居や家財の運搬
- 一定の施設への入退所
- 福祉事務所の健康管理支援事業に基づく受診等
一方、自治体の学習支援事業への参加は、これらの移送費の支給事由には通常該当しません。したがって、生活保護費から参加交通費を別途上乗せする取扱いにはならないということです。
交通費はどうすればよいですか?
次の方法が考えられます。
1.学習支援事業側に確認する
自治体によっては、
- 無料送迎
- 交通費の助成
- 自宅に近い会場の案内
- 訪問型支援
- オンライン型支援
などを用意していることがあります。
国の学習支援事業のガイドラインでも、会場が遠いことが参加上の課題になるため、地域ごとの会場設置や、訪問型・オンライン型を組み合わせることが示されています。
2.通常の生活費から負担する
事業側から交通費の支援がない場合、一般的には、毎月の生活扶助費の中から負担することになります。
3.学校への通学費とは区別する
子どもが小学校・中学校等へ通常通学するための交通費は、身体的条件、地理的条件、交通事情により徒歩等での通学が困難な場合、**教育扶助の「通学のための交通費」**として認定されることがあります。
しかし、
- 学校への通学
- 自治体の任意の学習支援事業への参加
は制度上別のものです。学習支援会場までの交通費が、そのまま教育扶助の通学費になるわけではありません。
具体例
被保護世帯の中学生が、毎週土曜日に市役所の委託する無料学習教室へバスで通い、往復500円かかる場合。
→ 学習支援事業への参加自体は自立支援上望ましいものですが、往復500円を生活保護の移送費として支給することは原則できません。
まず、学習支援事業の担当部署へ、送迎や交通費助成、近隣会場、オンライン参加の有無を確認することになります。
まとめ
被保護世帯の子どもが地方公共団体の学習支援等へ参加する場合の交通費は、
原則として、生活保護の移送費では支給されません。
ただし、自治体独自の交通費助成や送迎が設けられている可能性があります。したがって、福祉事務所だけでなく、学習支援事業の担当部署にも交通手段や助成制度を確認することが重要です。
(A2)結論
被保護世帯の子どもが、地方公共団体などの学習支援事業に参加するため交通費を必要とする場合は、福祉事務所が必要性を確認したうえで、生活扶助の「移送費」として支給できる場合があります。
手続きは一般に、
事前に福祉事務所へ申請 → 必要性・経路・金額の確認 → 支給決定 → 利用後に領収書等を提出
という流れになります。
なお、前の回答で「原則として移送費では支給されない」と説明しましたが、正確には、自治体が実施する学習支援や、国・自治体から補助を受けて行われる有効な学習支援について、移送費を支給する運用例があります。
1.まず事前に申請する
原則として、子どもが学習支援会場へ行く前に、担当ケースワーカーへ申し出ます。
申請時には、一般に次の内容を伝えます。
- 学習支援事業の名称
- 実施者
- 会場の所在地
- 開催日・参加回数
- 自宅から会場までの経路
- 電車・バスなどの運賃
- 無料送迎の有無
- その事業への参加が必要である理由
自治体によっては、「移送費申請書」「移送費支給申請書」などの様式を提出します。
厚生労働省の実践事例では、学習教室へ参加するたびに、公共交通機関の移送費申請書を提出して交通費を支給していた例が紹介されています。
2.福祉事務所が支給の必要性を確認する
福祉事務所は、主に次の点を確認します。
対象となる学習支援か
例えば、次のような事業です。
- 地方公共団体が直接実施する学習支援
- 地方公共団体が委託して実施する学習支援
- 国や地方公共団体の補助を受けた民間団体の学習支援
- 子どもの進学、学力向上、生活習慣の改善や自立に有効な事業
単なる私的な塾や習い事まで、当然に対象になるわけではありません。神奈川県の運用資料では、自治体が行うものや、公的補助を受け、子どもの自立に有効と認められる学習支援について、移送費を支給できるとしています。
交通費が本当に必要か
- 徒歩や自転車で通える距離ではないか
- 無料送迎が利用できないか
- より近い会場がないか
- 公共交通機関を使わなければ参加が困難か
などを確認します。
金額が必要最小限か
移送費は、原則として最も経済的で合理的な経路・交通手段による必要最小限度の額です。
例えば、
- 電車賃
- 路線バス代
- 必要に応じた定期券代や回数券相当額
などです。
タクシー代は、障害や病気、交通事情などにより公共交通機関を利用できない特別な事情がなければ、通常は認められません。生活扶助の移送費は、必要最小限度の交通費を対象とし、可能な限り乗車券の交付など現物給付で行うこととされています。
3.支給方法
支給方法は自治体によって異なります。
例えば、
- 交通費を事前に現金で支給する
- 切符や定期券などを現物で交付する
- 一旦本人が支払い、領収書を確認して精算する
- 参加回数に応じて毎月まとめて支給する
- 参加のたびに申請書を提出する
などがあります。
生活保護の移送費は、原則として乗車券の交付など、なるべく現物給付で行うこととされています。
4.参加後の確認
福祉事務所から、次の資料を求められることがあります。
- 電車・バスの領収書
- 定期券や回数券の写し
- ICカードの利用履歴
- 学習支援事業の参加証明
- 出席簿や参加日一覧
- 事業実施者が発行した証明書
毎回申請するか、月ごとにまとめて報告するかは、自治体の事務取扱いによって異なります。
具体例
中学生が、市の委託する学習支援教室へ毎週金曜日に通い、往復のバス代が400円かかる場合です。
月4回参加すれば、
400円 × 4回 = 1,600円
について、福祉事務所が参加の必要性、出席状況、交通経路を確認し、移送費として認定することが考えられます。
ただし、無料送迎がある場合や、実際には参加しなかった日の交通費は支給対象になりません。
注意点
事後申請では認められない可能性があります。
そのため、参加を開始する前に、
「市の学習支援事業へ通うためバス代が必要です。移送費の申請方法を教えてください」
とケースワーカーへ相談するのが適切です。
また、全国一律の専用申請書があるわけではなく、申請書の名称、提出頻度、領収書の要否などは福祉事務所ごとに異なる場合があります。
まとめ
学習支援等に参加する際の交通費については、一般に次の手続きになります。
- 参加前にケースワーカーへ相談する
- 移送費申請書などを提出する
- 福祉事務所が事業の公的性格・必要性を確認する
- 最も経済的な交通経路と金額を決定する
- 支給後または利用後に、領収書や参加実績を提出する
つまり、自動的に支給されるのではなく、福祉事務所が「子どもの自立に必要か」「交通費が必要最小限か」を確認して、移送費として決定する仕組みです。
⇓