(Q3)一時保護の施設等の他法他施策を活用できない場合、どのような特別な事情が考えられますか?(Q4)犯罪等により被害を受けた場合、どのような条件で新たに転居する必要があると認められますか?

(A3)はい。ここでいう**「一時保護の施設等の他法他施策を活用できない特別な事情」とは、DVや犯罪被害などで安全確保が必要であるにもかかわらず、女性相談支援センターの一時保護所、民間シェルターなどの制度を現実には利用できない個別事情がある場合**を指します。

厚生労働省の取扱いでは、DV等の被害者については、生命・身体の安全確保のため、基本的には速やかに同居状態を解消する必要があり、利用可能であれば一時保護等の施設を優先して活用することが望ましいとされています。その一方で、それを利用できない特別な事情がある場合には、生活保護による転居などを個別に検討することになります。

具体的には、例えば次のような事情が考えられます。

  • 一時保護施設に空きがなく、すぐに入所できない場合
  • 本人の障害、疾病、医療・介護上の事情などから、通常の一時保護施設では対応することが困難な場合
  • 同伴する子どもや家族の事情により、利用できる施設が見つからない場合
  • 加害者に所在地を知られているなど、その施設では十分な安全確保が困難な場合
  • 施設の利用条件と本人の状況が合わず、適切な委託先も確保できない場合
  • 緊急性が極めて高く、施設への調整を待っていては生命・身体の安全を確保できない場合
  • 関係機関で検討した結果、一時保護施設ではなく直接別居・転居させることが、安全確保のためより適切と判断される場合

ただし、これは「一時保護施設を利用したくない」という本人の希望だけで、当然に特別な事情になるという意味ではありません。なぜ利用できないのか、安全確保の観点から他に適切な方法がないのかを、個別に確認する必要があります。

また、厚労省の資料では、こうした場合に、配偶者暴力相談支援センターや警察等からの要請がある、または本人がそれらの関係機関に被害相談をしている事実があり、安全確保のため生計を別にして転居せざるを得ない場合には、DV等被害者本人について生活保護を適用することも可能とされています。

一方で、生活保護側だけで判断するのではなく、女性相談支援センター、配偶者暴力相談支援センター、警察等と連携して、本人が速やかに必要で適切な社会資源につながることが重要とされています。

ですから、簡単にまとめると、

「一時保護施設等が利用可能なら原則としてそちらを優先する。ただし、満員、本人の障害・疾病、同伴児童、安全上の問題、緊急性などにより現実に利用できない特別な事情があり、別の住宅への転居が生命・身体の安全確保に必要であれば、生活保護による転居支援を個別に検討できる」

という考え方です。

(A2)犯罪等により被害を受けた場合、生活保護上の転居の必要性が認められるポイントは、**「その被害のため、現在の住居に住み続けると生命・身体の安全を確保できず、安全確保のため新たな住居へ移る必要があるか」**です。

厚生労働省の課長通知第7・問30では、転居時の敷金等を認定できる場合として、**「犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受け、生命及び身体の安全の確保を図るために新たに借家等に転居する必要がある場合」**を明示しています。

具体的には、主に次の点を確認します。

  • 犯罪や暴力等による被害が実際にあること
  • 現在の住居に居続けることで、再被害など生命・身体への危険があること
  • その危険を避けるために転居することが必要であること
  • 単なる「住環境への不満」や「もっと安全そうな地域へ引っ越したい」という希望だけではなく、具体的な安全確保の必要性が認められること

たとえば、DV、ストーカー、暴行・傷害などを受け、加害者に現在の住所を知られており、再び危害を加えられるおそれがあるケースでは、新しい住居へ転居する必要性が認められる可能性があります。

一方で、「誰かが家に出入りしている気がする」「嫌がらせを受けていると思う」といった申告だけで、具体的な被害や危険性を確認できない場合には、必ずしも転居の必要性が認められるとは限りません。実際の行政審査でも、警察への確認などから犯罪被害の可能性が高いとは認められず、問30の要件に該当しないと判断された例があります。

ただし、通知自体には、「警察への被害届が受理されていること」「加害者が逮捕されていること」「裁判で有罪になっていること」などを一律の必須条件とする規定はありません。 福祉事務所は、本人からの申告に加え、必要に応じて警察、DV相談機関、女性相談支援センター、医療機関などから得られる情報を踏まえ、危険性と転居の必要性を個別に判断することになります。

また、この要件に該当して転居する場合には、一定の条件のもとで敷金等の住宅扶助が対象になります。さらに、犯罪等の被害によって急いで避難したため、布団や家具を持ち出せなかったような場合には、布団類や家具什器費について特別基準による支給が認められる場合もあります。厚労省通知にも、犯罪等の被害から生命・身体を守るため転居するケースが対象として明記されています。

したがって、簡単にまとめると、「犯罪等の被害があり、現在の住居にとどまることで生命・身体に具体的な危険があり、その危険を避けるため新たな住居への転居が必要だと福祉事務所が認める場合」に、生活保護上の転居の必要性が認められるということです。

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