(Q)アパート等の賃貸家屋に入居していた被保護者が転出する際、賃貸借契約に基づき賃貸人から原状回復費用の請求を受けた場合、その費用を住宅維持費で支弁することはできますか?
(A)はい。原則としては、退去時の原状回復費用を改めて住宅維持費として支給することはできません。 ただし、一定の例外があります。厚生労働省の生活保護問答集「問7-117」で、この取扱いが示されています。
基本的な考え方は、賃貸住宅の原状回復費用は、通常、入居時に支払った敷金から充当するものとされているためです。そのため、敷金を支払っている場合に、さらに同じ需要について住宅維持費を重ねて支給することはできない、という整理です。
ただし、入居時に敷金を支払っていない場合、または敷金が著しく低額で、退去時に原状回復費用を請求された場合には、次の条件をすべて満たせば、必要最小限度の額を住宅維持費として認定して差し支えないとされています。
- 賃貸借契約に原状回復に関する特約があること
- 原状回復の範囲が、社会通念上みて真にやむを得ない範囲であること
- 被保護者の故意または重過失によって壊した部分の修繕ではないこと
特に重要なのは、通常損耗や経年劣化は対象にならないという点です。例えば、長年住んだことによる壁紙の日焼け、床の自然な摩耗、設備の経年劣化などは、通常、賃貸人側が負担すべきものなので、住宅維持費を使うことはできません。
一方、本人の故意・重過失によるものではなく、契約上どうしても負担しなければならない必要最小限の原状回復費用で、しかも敷金がない・極端に少ない場合には、例外的に認定できる余地があります。
さらに、認定できる金額にも上限があります。原則として、住宅維持費の基準額の範囲内であり、なおかつ入居時の敷金等に関する限度額から、すでに支給した敷金・礼金・手数料等を差し引いた範囲を超えることはできません。
例えば、退去時に大家から20万円の原状回復費用を請求されたとしても、
「20万円請求されたから20万円全額を生活保護で支給する」
ということにはなりません。まず、請求内容を確認して、通常損耗・経年劣化分を除外し、契約上本人が負担すべき部分のうち必要最小限度額だけを検討することになります。
したがって、簡単にまとめると、**「退去時の原状回復費用は原則として敷金で対応するため住宅維持費では支給しない。ただし、敷金がない・著しく少ない場合で、原状回復特約があり、通常損耗や経年劣化ではなく、本人の故意・重過失による損傷でもないなどの要件を満たせば、限度額の範囲内で必要最小限の額を住宅維持費として認定できる」**という取扱いです。
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