(Q1)妊娠4か月以上の妊婦が人工妊娠中絶をした場合、健康保険法に基づく分娩費の支給が認められていますが、この場合に出産扶助を適用してもよいのでしょうか?(Q2)人工妊娠中絶において、医療扶助と同様の例外的な取扱いが必要とされる場合、どのような基準や条件が考えられますか?

(A1)はい、妊娠4か月以上で人工妊娠中絶をした場合でも、必要な要件を満たせば出産扶助の対象になります。 ただし、健康保険から分娩に関する給付を受けられる場合は、その給付を先に活用し、同じ費用を生活保護から重ねて支給することはできません。

健康保険では、妊娠4か月以上(85日以上)の分娩については、生産・死産・流産・人工流産を問わず、分娩に関する給付の対象とされています。

一方、生活保護の実施要領でも、妊娠4か月以後に人工妊娠中絶をした場合は「出産」に準じた取扱いがされており、産婦加算についても、人工妊娠中絶後は一定期間認定することとされています。

したがって、考え方としては、

人工妊娠中絶だから出産扶助は絶対に使えない
ということではありません。

ただし、健康保険等から出産育児一時金などの給付を受けられる場合には、生活保護法4条2項の他法他施策優先の考え方から、まずその給付を活用します。そのうえで、生活保護上認められる出産費用に不足が生じる場合に、その不足部分について出産扶助の適用を検討することになります。

例えば、妊娠5か月で人工妊娠中絶を行い、生活保護上認められる費用が発生した場合に、健康保険から受けられる給付で全額賄えるのであれば、同じ費用について出産扶助を重ねて支給することはありません。一方、健康保険給付を活用してもなお生活保護基準上認められる必要額に不足がある場合には、その不足部分を出産扶助で認定する余地があります。

また、出産扶助には、分娩介助料、分娩前後の処置料、衛生材料費、必要な入院料などの基準があり、実際に支払った費用すべてが無制限に支給されるわけではありません。出産扶助基準および局長通知第7の7に基づいて必要額が算定されます。

したがって、わかりやすくまとめると、**「妊娠4か月以上の人工妊娠中絶も、生活保護上は出産扶助の対象になり得る。ただし、健康保険から出産育児一時金等を受けられる場合はそれを先に利用し、それでも生活保護基準上必要な費用に不足があれば、その不足分について出産扶助を検討する」**という取扱いになります。

(A2)人工妊娠中絶について医療扶助による例外的な取扱いが必要になる場合は、単に「中絶を希望している」というだけではなく、母体保護法上適法な人工妊娠中絶であり、かつ本人が困窮のため費用を負担できないことが基本条件になります。

厚生労働省通知では、困窮のため人工妊娠中絶の手術費用の全部または一部を負担できない人には、医療扶助を適用できると明記されています。その際の要否・程度の決定は、通常の医療扶助と同じように厳正に判断します。

具体的には、主に次の点を確認します。

  • 母体保護法14条に基づく人工妊娠中絶であること
    たとえば、妊娠の継続や分娩によって身体的・経済的理由から母体の健康を著しく害するおそれがある場合などです。生活保護受給中の人や、妊娠・出産によって著しく困窮して生活保護が必要になるような人は、経済的理由に該当する場合があるとされています。
  • 本人に中絶費用を負担する能力がないこと
    所得や資産、他制度による給付などを確認したうえで、医療扶助の必要性を判断します。母体保護法上中絶できる人すべてが、自動的に医療扶助の対象になるわけではありません。
  • 原則として、生活保護法の指定医療機関かつ母体保護法の指定医師であること
    人工妊娠中絶を担当する医師について、この双方の要件を満たすことが原則です。
  • 福祉事務所が母体保護法上の要件を確認すること
    保護申請書、傷病届、医療要否意見書などを確認し、必要に応じて指定医師と連絡を取り、法的に認められる中絶かを確認します。

また、妊娠4か月以後の人工妊娠中絶については別の注意点があります。この場合、生活扶助上は「産婦」として扱われ、産婦加算が認定される規定があります。保護受給中なら、原則として中絶した月の翌月から2か月間、産婦加算を行います。

一方、手術そのものについては、「妊娠4か月以上だから必ず出産扶助」という整理ではなく、人工妊娠中絶として行われる医療行為については、基本的に医療扶助との関係を確認することが重要です。出産扶助は、生活保護法16条上、「分娩の介助」「分娩前後の処置」などを対象とする制度だからです。

したがって、分かりやすくまとめると、**「母体保護法上適法な人工妊娠中絶で、本人に費用負担能力がなく、指定医師・指定医療機関など所定の条件を満たす場合には、医療扶助を適用できる。妊娠4か月以後の場合は、これとは別に産婦加算などの生活扶助上の取扱いも確認する」**という考え方です。

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